長崎の郵便配達のレビュー・感想・評価
全7件を表示
長崎で被爆した少年のことをイギリス人が書いた一冊の本、その著者の娘が長崎の町を歩いて追体験するように当時を振り返る。そんな戦争ドキュメンタリー作品です。
戦争によって傷を負った人の記録となると
どうしても凄惨な映像を目にしてしまいます。
この作品もそうなのかと身構えて鑑賞したのですが
そこまで強烈な感じは受けませんでした。
被害者の生の姿や声 ではなく
対面で聞き取った人が話をまとめ
さらにその人の足跡を、娘が追いかけるスタイル。
そのためか
画面に映る映像としては、凄惨さは抑えられて
いるように感じました。
◇
本の著者は、ピーター・タウンゼンド
イギリス人の元空軍大佐。
空を飛ぶことに憧れた少年時代を経て
夢は叶うが、それは戦闘機のパイロットとしてだった。 うーん。
軍人のキャリアを終え
世界中を見て回るようになったピーター・タウンゼント。
原爆の被爆地「長崎」で一人の少年と出会います。
長崎で郵便配達中に被爆した「タニグチさん」
なんとか一命ををとりとめた14才の少年は
2年半もの療養を経て仕事に復帰する。
その話を本人から聞き取った作者がまとめ
「長崎の郵便配達」
として本にしました。
そして
この映画は、長崎を訪れたピーター・タウンゼントの娘
「イザベル・タウンゼント」が娘たちと一緒に
父の歩いた長崎の町を自分も歩くことで追体験するのを
ドキュメンタリーとして撮影したものです。
「被害者の生の声」 は
「聞き取った記録」 になり
「記録を追体験する」 形のため
だいぶ柔らかな内容のものになっているような
そんな気がしました。
生々しい映像はちょっと…
そんな方でも観られる内容の作品かと思います。
機会があればご覧ください。
私は観て良かったと思っています。
※キツイ画像やエピソードが全く出てこない訳でも無く
背中全体にヤケドを負った写真とか
長期のうつぶせ寝でできた床ずれのため
肋骨の間から心臓が見えた話(映像ナシ) とか (う~ん)
◇最後に
この本についてですが
「日本の原爆被害に関する記録を、
当時国(日・米)ではない国の人(英)が書き残してくれた」
という点で貴重なものという気がします。
客観性をもった戦争の記録って
存在すること自体が希かと思いますので。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで
ひとことReview!
反戦メッセージがひしひしと伝わるだけの左寄りの作品。「ローマの休日」のモデルになった...というのは、劇中にほとんど触れなかったから、何だか騙された感じ。
「記憶の季節」に見る映画
ほとんど予備知識もなく、とび込みで入った映画館で素晴らしい一本に出会った。
深く、静かな感動に満たされている。
日本とフランスに暮らす2人の女性が亡き2人の男性へ寄せる思慕が、豊かな言葉と映像となった。
エンディングにも感銘を受けた。イザベラさんの長崎のシーンで終わってもよかったであろうが、帰国後の彼女の「その後」が描かれる。彼女自身が「郵便配達人」となって言葉と想いを繋ぐ、伝えていく、この長崎の出会いが彼女の生き方に実を結んだ。
エンドロールにも現れる、軽やかにペダルをこぐ郵便配達人。赤い自転車と少年。どうか二度と爆風に倒されることなく前に前に進んで行ける世の中でありますように。いや、そういう世の中を作れますように。
「戦争は常に無垢な人びとを傷つける。」
「戦争は常に無垢な人びとを傷つける。」
元英国空軍大佐で後に作家となったピーター・タウンゼントさんの言葉。
彼は、戦時中エースパイロットとして加担した。
その自責の念は自分なりに償う術を模索し続けていたのだろうと思う。
その思いが当時長崎で郵便配達員だった谷口さんとの出会いとなり、一冊の本となる。
あの恐ろしき夏の日、一瞬にして奪われたたくさんの命の中、凄まじい火傷を負いながら奇跡的に生き延びた少年 谷口さん。
2015年、核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に合わせて渡米し、NYの国連本部で被爆者として生の声をあげたあの方だ。
人間が人間として生きていくためには、「地球上に一発たりとも核兵器を残してはなりません。」
谷口さんの渾身の訴えも虚しく
今も世界は壊れた危うさで満ちた悲しいニュースが溢れかえる。
晩年の谷口さんには傷跡のこる体に苦しみの追いうちを与えていただろう。
そう考えただけで張り裂けそうな気持ちになる。
ピーターさんの娘イザベルさんは父亡き後その本を読み使命感を抱き、かつて父が取材に訪れた被爆地へ。
父の活動を知ることは父を知ることであり、その意志を継ぐことが今後の生き方の目標になったと語る彼女。
父の遺品の取材時のカセットテープの声をそのまま使うドキュメンタリー的映画はリアルに胸を突く。
その中でも、大好きだったという自然の音が録音されたものに彼女は涙するが、そのやさしく美しい響きは戦争との対極にあることと非情の怖さを炙り出す。
そして、立場はまるで違えど戦争がもたらす心の傷はどちらにも深くその後代々に渡り永久に癒えることがない事実を教える。
人間同士の戦争ほど愚かなことはないと過去の経験から知りながら、無垢な人こそがこの時も脅かされている世界。
それをとめる手立てがもはやないかもしれない崖のふちになにができるか。
全世界の人々が知るべきは…
谷口さんとピーターさんの言葉の重みそのものだ。
今年の8月9日も
儚く散った魂をのせ青い地球が泣いている気がした。
直美ちゃうねん、美香でんねん。
河瀬と川瀬で、漢字も違いますしねw
被爆者のドキュメンタリーとしては、先の「8時15分」と同じく女性監督作品。特にジェンダーを取り上げて話をするつもりは無いんですが、やはり「情緒的」であり「非政治的」と言う共通点は、女性視点ならではなのではないかと思ったりする訳で。
ともすれば。この原爆被害は、政治利用される事がしばしば、と言うか、政治利用しかされないじゃん、ってのがあって。「この世界の片隅に」しかり。政治利用せず、淡々と、そこに生きた人々に焦点を当てる構成が好きです。
ワタクシ、長崎で生まれ育ち、今は広島で生活しています。原爆記念公園も浦上天主堂も、子供の頃の遊び場圏内です。原爆記念像なんて、小学生の頃の写生大会で何枚水彩画を描いた事やら。もうね、滅茶苦茶懐かしい風景の連続ですから。如己堂を通り過ぎ、神学校を右手に眺めながら浦上天主堂に下りて行く坂道。その左手に信愛幼稚園がありました。イヤー、Bloodが通った幼稚園です。被爆マリア像。覚えてます。ただの汚れたマリア像だと思ってました。ヨゼフ像も半壊状態で転がってました。爆風で吹き倒された鐘楼が、天主堂の左手のがけ下から掘り出されたのは、私が小学生の頃でした。海外からの観光客(多くはBackpacker)が天主堂を訪れるのを眺めながら、「こんなツマラナイ場所に何でわざわざ外国から?」なんて思ってました。
大人になり、ミリヲタしている今、思う事は。
世の中、やれ「開戦に至った歴史を」だの、「これはアメリカによる明確な戦争犯罪」だの、「原爆ガー戦争ガー
」だのと騒ぐ人で溢れてますが。今、日本を取り巻く現実を眺めた時の最重要課題は「今、そこにある危機の排除と回避」であることに間違いなく。
2020年、中国が公言した日本を標的にした中距離ミサイルの数は160。核弾頭付きICBMは30。今後10年で10倍にする、とまで言い放ちました。だから台湾・尖閣には口出しするな、と。今、台湾を取り囲んだ中国軍船により、与那国島は事実上、海上封鎖状態。日本のEEZ内にはミサイルが撃ち込まれました。報道機関によると「落下」らしいですけど。ミサイルの「落下」って何よ?いい加減、正しく報道せよ。更には、この有事において、「国会で国葬の是非を審議せよ」、って騒いでる人もいると言う。
そんな暇、ねーよ。
話の通じない相手が核で脅しに来ている中、どうやって命を守るのかについての話をしなければなりません。邪魔すんな。って言いたい。
【”被曝の実態を語れるのは、被曝者だけ”と長崎の元少年郵便配達員で、世界に核廃絶を訴えていた被曝者の男性は言った。英国男性の心意気が沁みる。が、現代世界の状況に、焦燥感を覚えたドキュメンタリー作品。】
ー 今日は、広島に原爆が落とされて77年目の日である。
そして、9日には、長崎に原爆が落とされた。それにより、無辜なる日本の民の多くは一瞬にして、命を奪われた。
辛うじて生き残った長崎の少年郵便配達員だった谷口スミテルさんの様に、長年放射能の影響に脅かされて来た方々も多数いらっしゃるのは、周知の事実である。
が、現代社会の情勢を見ていると、人類の滅亡は寸前まで来ている気がする・・。
◆感想
・今作が、他の原爆ドキュメンタリーと明らかに違う点は、英国の元空軍大佐で、ジャーナリストだったピーター・タウンゼンド氏が遺した小説を基に、彼の娘のイザベルが、父の足跡を追うという構成である。
英国人元空軍大佐が、日本人被爆者と交流を深めていた事実を軸に展開される物語が、イザベルが鎮魂の想いを抱きながら、父の足跡を追う抒情的な雰囲気を醸し出している。
ー それにしても、ピーター・タウンゼンド氏が、マーガレット王女と恋仲になっていた事は知らなかった。そして、彼がその恋が、成就せずに世界へ旅立った事も・・。
随所で語られる、ピーター・タウンゼンド氏が如何に人道的な男性であったか・・、と言う部分も作品に風合を与えている。-
・16歳の時、郵便配達中に被爆し、背中に大やけどを負いながら、生涯を賭けて世界に核廃絶を訴える故、谷口スミテル氏の姿は、尊崇でさえある。
そして、ピーター・タウンゼンド氏はそんな彼の姿に、感銘を受けて取材し、小説にしたのだ。
ー 若き、谷口スミテル氏が背中に大やけどを負い、治療してもらっているシーン。
よくぞあのような映像が残って居たモノだ、と驚くとともに、ロシアと中国を統べる男二人と、その側近には、正座させて観させたいシーンでもある。-
・来日したイザベルは、父が遺したボイスメモを頼りに、谷口さんの家族や関係者に話を聞いて回る。そして、長崎平和公園や、浦上天主堂など、原爆の爪痕が残る場所も、丹念に訪れる。
ー 被曝したキリスト教徒の人々が、”死ぬなら“浦上天主堂の中で・・”と思いながら途中で息絶える話や、谷口さんが、世間の偏見の眼の中、漸く結婚し家族を作り、海水浴に行った時に、彼の背中のケロイドを見て子供たちが泣き出した・・。そして、谷口さんが子供たちに話した言葉など、胸に沁みる。-
<毎年、夏になると「黒い雨」「野火」「ひめゆりの塔」と言った反戦映画が、ミニシアターで上映されるが、戦争の悲惨さを後世に伝えるためにも、大切な事であると思う。
きな臭い世の中の中、戦争を実体験した方々の存在は、確実に減っているのであるから・・。
今作は、現況下を見ても未来を担う子供たちに、平和な世界をどう残すか・・、という重い課題を静かなトーンで、観る側に問い掛けてくるドキュメンタリー作品である。>
全7件を表示