「人から人へ、過去から現在へ、思いを繋ぐ。」長崎の郵便配達 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
人から人へ、過去から現在へ、思いを繋ぐ。
英国王室に関心を持つ人なら、マーガレット王女とピーター・タウンゼンド大佐との悲恋はお馴染みだろう。Netflix「ザ・クラウン」でも描かれたこの逸話だが、まさかその後のタウンゼンド氏の人生をこのようなドキュメンタリーという形で、しかも「長崎で出会った日本人男性との交流」というテーマで窺い知ることができるとは思わなかった。父の遺した音声データを頼りにタウンゼンド氏の娘が長崎の街を巡る構成にとても胸打たれるが、さらに胸にしみるのはそこに鳥の鳴き声などの自然音が録音されていること。数々の過酷な証言を耳にした長崎の地で、タウンゼンド氏は何を思いながらこれらの音に耳を傾けていたのだろうか。そして彼は「谷口さん」の生き様に何を感じたのだろう。原爆投下時、谷口さんが従事していた「郵便配達」に重ねるかのごとく、人から人へ、過去から現在へ、”メッセージを伝え届けること”の尊さが、穏やかに浮かび上がる作品だ。
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