「閉鎖的なムラ社会の権力構造と社会正義」ヴィレッジ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
閉鎖的なムラ社会の権力構造と社会正義
本作は、気軽に鑑賞できる作品ではない。閉鎖的なムラ社会の中で苦悩する青年の再生物語を主軸とした、ヒューマンサスペンスである。ゴミの最終処分場などの今日的な問題を織り込んだ見応え十分の作品に仕上がっている。
本作の主人公は、故郷・霞門村で暮らす片山優(横浜流星)。彼は、幼い頃から村の伝統芸能である薪能に興味を持ち、能教室に通っていたが、ゴミの最終処分場建設を巡って事件が起き、村人との関係が悪化してしまう。母親の借金返済のため、優は、ゴミの最終処分場で働いていたが、日常的にイジメを受け、孤独で生きる希望を失った日々を過ごしていた。そんな状況の中で、幼馴染の美咲(黒木華)が東京から戻ってきたことにより、優の人生は大きく変化していく・・・・。
優は、優と同じ会社に就職した美咲によって覚醒していく。美咲の推薦で、優は、広報担当となり、持ち前の雄弁ぶりが開花して、TV放映を任されるまでになる。美咲とも次第に惹かれ合っていく。ムラ社会の権力構造の頂点に君臨する村長にも寵愛される。ムラ社会の権力構造の底辺から頂点に一気に上り詰めていく。
優を演じる横浜流星の表情の変化が劇的であり、劇的変化に対応した演技を巧みに熟す横浜流星に演者としての成長を感じた。もはや、彼は、アイドルではなく、演者になったと実感した。
黒木華は、どんな役柄でも熟す演技巧者振りを発揮している。故郷にバスで帰って来た時の表情に、只ならぬ気配を滲ませている。表情の演技が素晴らしい。
ムラ社会の象徴であったゴミの最終処分事業は、美咲の弟の告発で破綻していく。村長の片腕にまでなっていた優は破綻の阻止に躍起になるが、ムラ社会の権力構造の実態に気付き、自らの手でケリをつける。
エンドロール後のラストシーン。美咲の弟は故郷を去る。ムラ社会と決別する。社会正義を貫いた彼にムラ社会での居場所はなかった。
ムラ社会と社会正義。本作は、日本社会が抱える根本的課題を鋭く問題提起している。
霞門村の未来、津山とかフクシマとか風評被害に肩身の狭い思いをしながら、産廃処理は続くんだろうな、若者は皆出ていき外から行き所のない人間たちが流入して来るんでしょうね。