劇場公開日 2022年6月17日 PROMOTION

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ナワリヌイ : 特集

2022年6月13日更新

【映画.com編集長がいま一番観てほしい1本】
「トップガン」の興奮を上回る衝撃。ロシアで、
モスクワで何が起きているのか?

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「トップガン マーヴェリック」に興奮したかと思いきや、ある意味、その興奮を上回る衝撃を映画館で目撃することになりました。それが「ナワリヌイ」(6月17日公開)です。今年のサンダンス映画祭に出品されて、観客賞など2つの賞を受賞しています。……私も観客賞に1票入れたかった。

1991年のソ連崩壊以来、最大の事変が2022年の今、ロシアとウクライナの間で起こっています。それはヨーロッパ中に、そして世界中に少なからぬ影響を及ぼしています。ロシアがウクライナ領に侵攻したこの戦争は、国家や民族の大義など何もない「プーチンの戦争」と呼ばれています。

つまりこの映画は、最高のタイミングで公開される「今必見の1本」ということで間違いありません。(文/映画.com編集長 駒井尚文)


【予告編】批評サイト「Rotten Tomatoes」驚異の満足度100%

●ナワリヌイ氏とは? ロシア・プーチン政権を批判し、支持を集める政治活動家

そして今必見の映画が、ロシア国内で上映されることは絶対にないでしょう。なぜなら、本作は現ロシアを「プーチン皇帝と悪の帝国」のように描いているからです。

プーチンをダースベイダーに例えるならば、ナワリヌイの立場はジェダイ戦士。そして、その風貌はジェームズ・ボンドのようです。金髪に碧眼で、精悍な顔立ち。ダニエル・クレイグを彷彿とさせます。ルックスがいいので、大衆にも人気があります。

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「プーチンがもっとも恐れる男」ことアレクセイ・ナワリヌイは、1976年生まれ。弁護士であり政治家であり、彼が繰り広げる反汚職キャンペーンはロシアで絶大な人気を誇ります。しかし、その評価は必ずしもポジティブなものだけではない。過去には極右と手を組んだり、ネオナチとも連携したこともある政治姿勢は反発も生んでいます。


●ひとつ目の衝撃――“毒殺”

いずれにせよ、プーチン政権からは完全に敵対視されており、2020年には毒殺されそうになりました。この映画における白眉は、ナワリヌイ暗殺未遂の顛末と、その真相を解明していくシークエンスです。

「死刑以外に、国家が殺人を企むことが本当にあるのか?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし、プーチン政権には前歴があります。2018年に英国のソールズベリーで、元ロシア情報局の男性とその娘が「ノビチョク」という薬物を投与され、意識不明の状態で発見される暗殺未遂事件がありました。この事件でテリーザ・メイ首相(当時)が、ロシア当局を猛烈に批判し、外交問題にもなっています(ロシア当局は関与を否定)。

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このノビチョクが、ナワリヌイにも投与されました。2020年の8月、彼が遊説で訪れたシベリアの都市からモスクワへ帰る航空機内で彼は苦痛にもだえ、機は最寄りの空港に緊急着陸。

やがて体内からノビチョクが検出されました。いつも彼はとても用心深く行動しているので、飲み物などから毒を摂取するはずがありません。では、一体どうやって?

……毒殺計画の想像を絶する驚きの手口は、是非映画をご覧になって確かめてみてください。「国家ぐるみの暗殺計画」がいかに周到に準備され、綿密に実行されているのかを思い知ることになるでしょう。これがひとつ目の衝撃。


●ふたつ目の衝撃――“調査報道”

また、この映画でナワリヌイの次に注目すべき重要人物は、クリスト・グロゼフというジャーナリストです。彼は「ベリングキャット」という組織の主任調査員。この組織は、公開されているデジタルデータを使って、犯罪や陰謀の捜査を行う調査報道ユニットです。

最近、この組織に関する書籍も出版され、結構話題になっています。なかなかの凄腕で、2014年にウクライナで起きた民間機撃墜事件にロシア軍が関与した証拠を突きとめたほか、先にふれた2018年のソールズベリーのノビチョク事件の実行犯を特定したのも彼らです。

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クリストは、チーム・ナワリヌイの一員となって、暗殺計画の全貌を鮮やかな手口でつまびらかにしていきます。彼らは、メールの送受信履歴を手に入れ、病院の予約データにアクセスし、乗物やATMの利用歴をハックします。「スマホの履歴で何でも分かる」とクリストはうそぶきます。ベリングキャットの調査方法が、ふたつ目の衝撃です。

プーチン陣営が企む「周到で狡猾な暗殺計画」、その手口を巧みに暴き出す「スマートなハッキング」。このハイブローな攻防がこの映画の核心。とても知的でスリリングです。

是非、日本ではめったにお目にかかれない「最新の諜報活動」を目撃してみてください。心底から驚くこと請け合いです。そしてこの映画がフィクションではなく、ドキュメンタリーであるということが、3つ目の衝撃となることでしょう。

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