劇場公開日 2022年6月17日

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「現在進行形の、信じられない記録映像が満載の一作。」ナワリヌイ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5現在進行形の、信じられない記録映像が満載の一作。

2022年8月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

若きロシア反体制派のリーダー、アレクセイ・ナワリヌイがインターネットや集会などあらゆる手段を活用しつつ、プーチン大統領らの政治不正を暴き、体制の変革を図ろうとする姿を、文字通り密着して記録した映像の数々。

ナワリヌイとそのスタッフ達はスマートフォンまで使って事細かく映像を記録しているのですが、その目的は、自らの政治活動を世界に知らしめるため、と同時に自らの身の安全を図るため、ということが徐々に分かってきます。周囲の懸念は、2020年8月にナワリヌイが移動中の飛行機で毒殺されかけることで、現実のものとなります。本作の白眉は、その実行犯を割り出していく過程なのですが、カメラの前で繰り広げられる顛末は、ドラマでもあり得ないような荒唐無稽な話に見えるけど、全て実際の出来事。ブラックジョークとして笑いたくなりますが、同時に明らかになった手口に背筋が寒くなります。

有能な弁護士から反体制側の政治家に転身することに、もちろん家族は大きな不安があったと思いますが、映像に映される彼ら家族は、ナワリヌイの身を案じつつも、自ら先頭に立ってプーチン政権の横暴を訴えることも躊躇しません。

政治家が家族ぐるみの支援で活躍する姿を追った映画と言えば、香川県出身の衆議院議員・小川淳也を追った『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020)も思い浮かべますが、政治家本人に熱意とビジョンがあり、家族もそれを積極的に支えている、という点では共通しているものの、命の危険性という面では天と地ほどの差が。

周囲から心配されつつも帰国し、逮捕投獄されたナワリヌイが、ひとまず無事に釈放されることを祈るばかりです。

yui