「【独裁国家ロシアを統べる男の行いに身命を賭して公然と立ち向かった弁護士が、ロシアの闇を執念で解き明かした画期的なドキュメンタリー映画。ロシアに人道主義が戻るのはいつになるのであろうか・・。】」ナワリヌイ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【独裁国家ロシアを統べる男の行いに身命を賭して公然と立ち向かった弁護士が、ロシアの闇を執念で解き明かした画期的なドキュメンタリー映画。ロシアに人道主義が戻るのはいつになるのであろうか・・。】
ー 劇中でも描かれているアレクセイ・ナワリヌイ氏が、ロシアでしか製造していない猛毒”ノビチョフ”を飛行機内で盛られ、瀕死の状態の中、決然と彼を救い出した、ドイツの前首相メルケル氏の行いは、良く覚えている。
そして、事実を追求されたプーチンが、ふてぶてしく関与を否定する姿も・・。-
◆感想
・プーチンは、アレクセイ・ナワリヌイ氏を名前で呼ばない。
”あの男”と言う言い方をする。
まるで、”私はナワリヌイの存在など、何とも思っていない・・”。とでも言っているようだ。
ー だが、その態度がプーチンが、如何に彼を疎ましく思っているかが、伝わってくるのである。-
・ナワリヌイ氏が、機中で”ノビチョフ”により、ロシアの病院に担ぎこまれるも、家族とも会えないシーン。ロシアが解毒剤で証拠隠滅を図っている事を察知した妻やスタッフが彼を病院から連れ出し、ドイツの病院に収容する過程は”どのようにして撮影したのか・・”と思った程、緊迫感に溢れている。
・ナワリヌイ氏が、奇跡的に一命を取り留めてからの、暗殺者達を炙り出して行くシーンは、ドキュメンタリーの範疇を越えたスリリングさである。
ー そして、彼を支えるスタッフ、家族の姿も・・。命の危険があるにもかかわらず・・。-
・複数名の男に、”組織の仲間を装って”電話を掛けていくシーンは、白眉であろう。
多くの男は直ぐに電話を切るが、一人の科学者が決定的な言葉を喋ってしまうシーンである。
ー ハイタッチするスタッフとナワリヌイ。ロシアがナワリヌイ暗殺に関与していた事が分かったのだから、喜びようは当然である。だが、スタッフからは”あの男、殺されるよ・・。”と言う言葉も出る。実際に再後半、この科学者が行方不明であることがテロップで流れる・・。-
<ドイツで療養し、再びロシアに向かうアレクセイ・ナワリヌイ氏。
だが、空港の入管で、彼は逮捕され、今だに獄に繋がれている。
独裁国家ロシアに、人道主義が戻って来るのは、何時の日になるのであろうか・・。
唯一の救いは、作品の随所でプーチンの行いに対し、激しく抗議するロシアの人々の姿である。
今作を極秘裏に制作し、全世界に独裁国家ロシアの真の姿を発信した、監督・スタッフには敬服の念を抱いた作品でもある。>