劇場公開日 2022年6月17日

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「スパイサスペンス紛いのスリルに心がざわつく」ナワリヌイ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スパイサスペンス紛いのスリルに心がざわつく

2022年6月22日
PCから投稿

怖い

2020年8月に8月に起きた暗殺未遂事件からの、ドイツの病院での復活、そして、ロシアへの再入国と逮捕。メディアを介して紹介されたそれらの衝撃的な事件と共に記憶されるロシアの反体制活動家、ナワリヌイ。ロシアvsウクライナ戦争の勃発と共にその存在が過去のものになりかけていたこのタイミングで、いったい、彼の身に何が起こったのかを検証する本ドキュメンタリーが公開された意味は大きい。この現実を多角的に捉えるために必要だからだ。

興味深いのは、ナワリヌイがジャーナリストと市民の有志たちで構成される調査組織"ヘリングキャット"の協力を得て、暗殺に加担したと思しき容疑者たちに"直接"電話をかけて、意外と簡単に真実を炙り出していく過程だ。まるで演出されたかのような、スパイサスペンス紛いのスリルが、ロシアにまつわる一連の出来事の未だ不透明な本質を暗示しているようで、心がザワザワするのだ。

ロシアにはナワリヌイのような反体制活動家がいて、戦争反対を唱える市民もいる。でも、依然として戦争は終わりそうにない。それでも希望はある。率直にそう感じさせる出色のドキュメンタリー映画だ。

清藤秀人