「ありきたりな贖罪の旅かと思いきや、カセットテープのように一つの物語が終わると始まるもう一つの物語にガッツリ泣かされました。」プアン 友だちと呼ばせて よねさんの映画レビュー(感想・評価)
ありきたりな贖罪の旅かと思いきや、カセットテープのように一つの物語が終わると始まるもう一つの物語にガッツリ泣かされました。
予告に滲んでいた匂わせから勝手に想像していたものとは全然違う物語。白血病を患ったウードが残された命を振り絞ってラジオDJだった父の愛車で自分がかつて愛した女性達に会いに行くという贖罪の旅が露わにするものが観客が期待しているものと少しずつズレていき、ウードに呼び出されて運転手を引き受けたボスはその一部始終を見つめながら自分自身が避けてきたことに直面する。劇中で散りばめられたウードとボスの過去の断片が一枚の写真のようになった時今まで語られなかった別の物語が始まり、静かに幕を閉じる。
正直NYパートの映像はかなりダサいですが、道中のカーステで聴いているカセットテープのA面をウード“Aood”、B面をボス“Boss”の物語に重ねるレトロなセンスはカッコいいです。要所要所で流れるジャズナンバーの中低音の豊かな響きが印象的なので、音響設備のしっかりした映画館で観るのがベストです。
ウードの元恋人ヌーナを演じているのは『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』や『ハッピー・オールド・イヤー』で主演したオークべープ・チュティモン。こんな短い名前だっけと思ったら、別名チュティモン・ジョンジャルーンスックジン・・・うーん、どっちがどっちなんだかよく判りません。実はさりげなく伏線が張られているのですが彼女が何の脈絡もなく解き放つジョン・ウーリスペクトにビックリすること請け合いです。
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