「墓穴」#マンホール ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
墓穴
今年2本目の期待作(1本目はキラーカブトガニ)、日本映画らしからぬ設定にジャニーズが体当たり演技するという点に惹かれて鑑賞。結構席が空いているのに隣に座ってくる人の心境を問いただしたくなる日でした。
なかなかに鋭くイカれた作品でした。あぁ好きだなと思える瞬間がふんだんに盛り込まれていました。
まず傷の描写が生々しいです。マンホールへ落ちた際にハシゴの破片などで足に裂傷を負うのですが、そこをしっかり見せてくるので痛々しいです。その傷を市販のホチキスで留めるのも叫び声も相まって目を覆ってしまいました。ケガと隣り合わせの状態で物語が進んでいくので、常に痛いが付き纏っていました。
次に脱出できそうで脱出できない状態なのが緊張を走らせています。最初の段階で届きそうで届かないハシゴがもどかしいですし、ガスや液体が足元を蝕んでいきますし、泡まで噴き出て飲み込もうとするなど、ピンチが怒涛の勢いで襲ってくるので、見る側も休む時間がありません。
SNSの特性もしっかりと活かしていたのも好感を持てます。匿名性だから所詮他人事みたいな意識が強いので、好き勝手いい放題な人たちが多いですが、しっかりと解析してくれたりする人もいますが、個人情報を晒しまくるのは中々にヤバイですし、実際に行動に移した少年は過激なタイプでした。クロスバーを持っている時点で相当なヤツですが、同僚の自宅まで訪ねてボッコボコにしたり、主人公にトドメを刺すなど今作のモンスターは彼に間違いないと思います。それ故に彼の深掘りももう少しして欲しかったなとは思いました。
後半の種明かしも更にこの作品のエグさを強調していました。主人公は、主人公ではなく違う他人で、元の人を殺して顔を奪い、その人に成りすまして生活していたという事が明かされます。韓国映画に採用されそうなアイデアですが、邦画だとより親近感が湧くのでその狂気がビシビシと伝わってきます。元の人を殺して(これまた殺しの傷が少し暗めですが生々しいです)、マンホールに落とすのはだいぶ手間だなと思いましたが、それは些細な問題なので気にしなくても大丈夫です。主人公がやたら口調が荒いなと思っていましたが、別人ならそれも納得です。その元の人の彼女が報復に来て、顔を奪い返そうとするなどこちらもまた行動が過激ですが、油断したら首絞めにかかる主人公の方が一枚上手でした。ラストの体のバキバキ具合はそこそこ気持ちいいラストになっていましたが。
全体的なバランスも良く、中島裕翔さんほぼ1人で物語を進行したのもお見事でした。ワンシチュエーションですが濃密な内容になっていました。こういうタイプの邦画が月1本くらい観れたら嬉しいんですけどね。
鑑賞日 2/10
鑑賞時間 18:20〜20:10
座席 F-6