「迫力満点のクライミングシーン」神々の山嶺(いただき) 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
迫力満点のクライミングシーン
夢枕獏原作の小説を谷口ジローが漫画化し、それをフランスでアニメ化した映画でした。Netflixで配信されていたもののようですが、今回劇場でも公開と相成ったようです。原作は日本語、登場人物も多くは日本人ではあるものの、フランスで制作され、いわば逆輸入されていることから、アニメとしてはフランス語が当てられていたようですが、日本公開版はネパール人も含めて日本語が当てられており、字幕を読むという煩わしさを伴わず、映像に集中して気兼ねなく観ることが出来ました。
チラシには「究極の冒険ミステリーが始まる」、「マロリーはエベレスト初登頂に成功したのか?」とありますが、ミステリー要素としてはマロリーのエベレスト初登頂の成否という史実に基づく話とともに、消えた登山家・羽生丈二を探し出すという創作の話が絡み合って進んでいきます。因みにマロリーとは、1924年にエベレスト初登頂を目指しながらも頂上にあと一息で遭難したと言われる登山家で、有名な「何故エベレストに登るのか?」との問いに「そこにエベレストがあるから」と答えたとされる人です。(「そこに山があるから」というのは誤訳だそうだ。)
ただ見せ場はこうした謎を解明する部分というよりは、主人公の山岳カメラマンである深町誠や羽生らが、常人では到底登ることは出来ない岩壁や氷壁を攻める姿にありました。羽生がアクシデントで左手足が使えなくなった際に、右手と口で何とかリカバリーするハラハラドキドキのシーンは、羽生のモデルとなった実在の登山家である森田勝の実話を基にしているそうで、驚きしかありませんでした。
ただ少し疑問に思ったところもあって、終盤に羽生がエベレスト南西壁の無酸素、単独登頂を目指す際に、その姿をカメラに収めようとする深町までもが無酸素で羽生の後を追ったこと。カメラマンとは言え元々登山家だった深町の気持ちが分からなくもないように描かれてはいるものの、あくまで羽生の登頂の記録を撮ることを第一目的とする以上、何故酸素ボンベを持たずに登ったのか、お話とは言え無謀が過ぎるように思えました。
以上、疑問点もありましたが、迫力満点のクライミングシーンはじめ、なかなか見応えのある映画でした。