「行間を感じる」帰れない山　赤ヒゲさんの映画レビュー（感想・評価）

「帰れない山」ってどういう意味なんだろう？そんな疑問を頭の片隅にずっとおいたまま観賞しました。モンテ・ローザ山麓の山河や村人の暮らしが、断片的に、陰影のある美しい映像で切り取られ、まるでハードボイルド小説のような抑制の効いた語り口で観る者の想像をかきたててくれます。短いエピソードを丹念に積み上げていくことで、主人公らの少年時代から青年期、壮年期までの生い立ちがじんわり伝わってきて、心を揺さぶられました。「言葉が貧しいと、思考も貧しくなる」のような洗練された台詞が随所にあり、極上の小説を読んでいるような満ち足りた映画体験でした。ピエトロとブルーノ、二人を演じた子役も大人役も素晴らしく、とりわけヒゲもじゃになった壮年期の二人を観ていて、ふと「RRR」(22)のビームとラーマを思い出してしまいました(笑)。少年期から観ているからこそ、二人の生涯にわたる厚い友情が染みてきたのだと思います(時々、そんな映画に出逢います)。どのシーンも美しく、多くを語らないがゆえの雄弁さに、とても好感をもちました。