「帰れないのは誰で、どの山に帰れないのか。タイトルの意味を考えるだけでも相当考え込んでしまいました。奥の深い哲学的な要素のにじむお話です。」帰れない山 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
帰れないのは誰で、どの山に帰れないのか。タイトルの意味を考えるだけでも相当考え込んでしまいました。奥の深い哲学的な要素のにじむお話です。
ポスターの絵から何か特別な雰囲気を感じました。
山が舞台の作品は好きな方なので鑑賞することに。
原作が有名な本らしいのですが未読です。
(…というか、存在を全く知りませんでした ・-・)
少年二人が山で出会い、共に生活し、そして別れ。
二人の絆と友情の物語かと思わせる導入部。
※それは的外れでは無かったのですが、
実はもっとずっと内容の濃い話と分かるのは
鑑賞した後のお話でした。うーむ…。
主人公の一人はピエトロ。都会で育った少年。
もう一人の名はプルーノ。羊飼いの少年。
少年期の二人の出会いから青年期へと、
取りまく環境が変化する中でも、二人の関係は続く。
そのように見えていたのだが
ピエトロは自由に他の山や世界を尋ねて歩き
ブルーノは自分の生まれ育った山を離れない。
ブルーノに女性のパートナーができた。
経理や事務を任せ、牛を増やして順調そうだ。
ピエトロはネパールの小学校で子供を教える。
同じ考えの仲間と一緒に働いているようだ。
ある時、イタリアの山戻ったピエトロが
ブルーノを尋ねてこう話す。
” 君は世界の真ん中のとても高い山にいる”
” その高い山の周りには、8つの高い山がある”
” 君は真ん中の山にしか行けないが
僕は周りの山全てに行くことができる”
” 君と僕の、どちらがすごいと思う?”
この辺りから、二人の山に対する哲学的な思考が
滲み出るような展開に変わった気がします。
◇
イタリアの山(モンテローザ)が舞台で始まり
ピエトロはあくまでもその山にこだわり続け
ブルーノはネパールの山に定着します。
この二人の生き方は、似ているようで実は大きく異なる。
年月の経過とともに、その差異が大きくなっていく様と
二人の山に対する考え方の違いの行く末を
最後まで見届ける作品。 そんな感じでした。
作中で出てくる "須弥山"
これは仏教世界の中心に存在する山、という事らしいのですが
山の民 とか
山岳信仰 とか
仏教そのもの とか
もっと色々な概念を理解した上でないと
この作品の本質が見えてこないのかな というのが
鑑賞後の正直な感想です。
観てすぐに内容を理解できる作品では無かったです。
原作を読んでいた方が良いのかも。。
◇あれこれ
モンテ・ローザ (薔薇の山?)
イタリアとスイスの国境の山。 ふむふむ。
アルプス山脈で二番目に高い山(連峰)らしいです。
最も高い地点で4,634mとか。富士山より高い…。
二人が暮らしたところはもっと下だとしても
冬を越すのは簡単では無さそうです。 ぶるぶる。
ヤク
ピエトロが辿り着いたどこかの国(ネパール?)で出てくる
"ヤク" という動物。
ヒマラヤの高山地帯で飼われている動物で、以前観た
「ブータン 山の教室」という作品にも登場していたのを
思い出しました。懐かしい。
※主演のペム・ザムちゃん、元気にしてるのかな。
◇最後に
ブルーノが口にしていた死者の弔い方=「鳥葬」。
ピエトロは「自分なら嫌だ」と言っていました。
厳冬期に行方知れずになったブルーノを探す場面で
数話のカラスが一カ所に群がるシーンがあるのですが
これって、そういう事なのでしょうか。。
そうだとしたら、ブルーノは望んだ通りになったと
そういうことなのでしょうか。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
そうなんです。死んだ後だから痛くないんです(死んだことがないから約束出来ませんが…多分…)。
鳥に食べられることで「天」に行ける…という信仰が背景にあるそうで個人的にはちょっと憧れるかな…火葬だとCO2を排出する?し…土葬されてゾンビになったら嫌だし…😅
もりのいぶきさん、こんにちは。沢山の共感とフォロー有り難うございます。ブルーノの最後については、もりのいぶきさんのご推察通りだと私も思います。イタリアアルプスを離れてヒマラヤへ行き其処に住み着いたピエトロが語った鳥葬を、イタリアアルプスを生涯の住みかとしたブルーノが選んだことが映画の余韻を一層深くしてくれているようですね。