「ニーソンも年をとりました。」MEMORY メモリー よしさんの映画レビュー(感想・評価)
ニーソンも年をとりました。
アルツハイマーが発症した殺し屋が、少女の仇を撃つべく、雇い主と抗争を繰り広げる物語。
リーアム・ニーソンが主演するアクション作品です。リーアム・ニーソン作品のレビューを書く時「大当たりはないが、外れもない」と書くのですが、残念ならがら、この作品は完全な外れでした。
この作品。主人公と雇い主の単純な抗争にせずに、色々な登場人物を用意しています。FBI捜査官、その上司。そして地元警察。彼等を物語に絡ませることで、物語を重層的に描こうとする目論見だったのだと思います。
ただ、彼等の描き方が中途半端で、それが上手くいっていない印象です。
例えば、FBIの上司。街の有力者に対する忖度で告発に及び腰に描かれていますが、この描き方では腑に落ちません。ラスボスの権力をしっかりと描く(例えば、アルカポネのように)か、賄賂を受け取るような完全な悪に描くか・・・そうしないと説得力が生まれません。
地元警察もそう。パトロール警官を殺され、主人公憎しになるのは分かります。でも、ラスボスの用心棒を引き受ける設定を作ると、訳が分からなくなります。
同僚の復讐・・・の一点をしっかりと描写すれば、まったく違った印象になるのでしょうが、少なくとも私には不十分に感じました。
そもそも主人公の設定が甘い。何十年も殺しを請け負っていたプロ。アルツハイマーを発症して自分の生末が見えたとはいえ、少女を殺すことを躊躇うのでしょうか?
例えば、娘が早世したトラウマから「子供を殺さない」を条件に長年仕事をしていた・・・
例えば、孫娘が病に倒れ、その子とダブらせて殺せなかったとか・・・
それなら、納得感があるのですが、少女の復讐譚の物語を撮るために無理をしている感が強く、感情移入が難しく感じました。
ラスボスを暗殺する結末にも興ざめ。某有名作品(ディカプリオとマット・デイモン共演)のラストもこんな感じでした。でも、ラスボスの女性に、憎たらしい程の強者感がないため、このラストでは意外性もカタルシスも納得感も得られませんでした。
私的評価は、厳しめです。