「「空の中」に棲むモノ」NOPE ノープ かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「空の中」に棲むモノ
『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督、SFXを駆使したモンスターホラー。
グロシーンありなのでご注意を!
【ストーリー】
動物タレントをテレビなどのメディアに出演させる牧場を営んでいるOJとエメの兄妹。
父が空から落ちてきたコインに当たるという謎の事故で死んでからは経営が上手くゆかず、隣にできた西部開拓時代のテーマパークに少しずつ動物を売りながら、どうにか牧場を延命させてきた。
牧場周辺では家畜が犠牲になる事件が増えており、夜にパトロールをしていると、いつのまにか厩舎を逃げ出した愛馬と、発光しながら雲間からのぞく巨大な飛行物体が。
——俺たちの頭の上に、何かが棲んでいる……!
空に異変があると勘づいた二人は、監視カメラを設置する。
その何かは、雲に隠れ、人や動物を喰う。
どうにかその生物をカメラに収め、助けを求め、あわよくば一攫千金につなげたい二人だが、そいつ「ジージャン」が近づくと全ての電子機器から電源が落ちる。
打てる手が尽きる中、「ジージャン」はついに本格的にその地の彼らを喰らい尽くす動きを見せる。
その最初の犠牲は、テーマパークのショーのキャストと、すべての観客だった。
「ジージャン」が食欲に狂乱し、牧場どころか家も出られない状況がおとずれる。
八方塞がりの中、兄妹とカメラの設置をした販売店店員のエンジェル、そして最初は撮影の要請を断ったが、信憑性高しと仲間に加わったホルストが、数少ない情報からその生態を分析し、手回しアナログフィルムカメラを使った決死の撮影計画を練るが——!
空に棲むUFOが異星人の超科学宇宙船ではなく、巨大な生物というアイデアは『図書館戦争』の有川浩のデビュー第二作目の『空の中』を思わせます。
あちらは不可視の超巨大知的生物でしたが、こちらも負けずに不気味な巨大生命体です。
その姿はアダムスキー型UFOに似て異様で、習性は貪欲にして狡猾、非常に厄介な生物です。
巨大生物でホラーを撮ると、某連作シャーク映画のように出オチになりがちですが、そこをストーリーテリングと演出で支えるのはさすがの力量。
一気に全容を見せず、徐々にその生態を明らかにしつつ、恐怖をあおります。
本格的に主人公たちをターゲットにすると、開放的なはずの広大な土地と空が、恐るべきジージャンの、逃げ場のない狩場であることをくり返し観客に突きつけてきます。
対するOJたちは、地形や設備を利用して謎の生物の攻撃を何度もかわし、ついに生き残るために反撃を決意。
クライマックス、何度も心を折られながら、4人がお互いを囮にして「ジージャン」を翻弄し、全力で戦う姿が熱く心に迫ります。
すべてが終わって、廃墟となった我が家と人の消えたウェスタン・テーマパーク、時間の止まった美しき風景が、安堵と失ったものの大きさを突きつけてきます。
役者陣も実力派を取りそろえ、なかでもウォーキングデッドのグレン・リー役のスティーヴン・ユァンがテーマパークのオーナーとして出てきたときにはテンションプチ上がりました。
あと子役時代の子、ユァンに激似。
あっと驚くアイデアと、幾重にも伏線が張り巡らされたストーリーの、非常に完成度の高いホラー・エンターテインメント映画です。
コメントありがとうございます。コメントにあった「ウルトラQ」持ってくるところも、レビューにある「空の中」持ってくるところも、どちらもジャストミートです。嬉しいレビュー!!
共感・コメントありがとうございます。
「ゲットアウト」と「アス」で心をググッと掴まれました。
SFホラーを撮らせてもジョーダン・ピール監督は異彩を放つ才人ですね。
かせさんのレビューで半年前の感動が蘇ってきました。
広大な自然と青い空のラスト・・・様々な残酷に出来事や恐ろしい出来事があったのに不思議と後味は悪くなく満たされた気持ちでした。