「日本人には理解し難いと思う。」NOPE ノープ バソラプンテさんの映画レビュー(感想・評価)
日本人には理解し難いと思う。
最初の聖書の引用からして難解であり、そこがわからないと後の展開が理解し難い。
後で調べたら、「高慢で残忍な人々に対する神の復讐の話」であるらしい。
更に、キリスト教圏では、「人間(白人?)は神の似姿であり、動物は神が人のために作られたものであるから、好き勝手に利用してもいい」と言う古い考えがあるそうだ。
それを踏まえて振り返ってみると、傲慢な白人への罰。
一度は許された黄色人種が大人になり傲慢な罪を犯して罰を受ける。
チンパンジーを利用しようとして制御しきれずに食われる。
馬が食われるのを見せ物にしようとして自分が食われる。
欲をかいた黒人の妹は、最後の最後で出し抜かれて企みが失敗。
要は「罪には罰がある。それと、動物だって人間と対等な生き物なんだ」と言うのが今回のテーマであると、私には感じられた。
さてテーマはさておき、映画の出来としてはなかなか良くできていた。
映像、音楽、ストーリーなど、見て損はないレベルだとは思う。
蛇足
主人公の妹が「黒人レズ女性」と言うポリコレ要素満載設定であり、かつその設定がストーリーに全然絡んでこないと言うあたりに、昨今の映画業界の問題を感じた。
追記
蛇足が蛇足だという当たり前の指摘がありましたので、さらに蛇足。
私は、LGBTのキャラクターが登場することに不満があるのではありません。
映画として必要のない要素を、映画外の都合で無理やり入れることに対して疑義を呈しているだけです。
例えば、「著名な映画賞が、アトランティスの末裔という設定を出さないと受賞させないと言い出した」として、「主人公の妹がアトランティスの末裔という設定があったのに、ストーリーに全然関係なかった」としたら、どう思いますか?
それを指摘したことに対して、「登場人物の一人はアメリカ人であると思われますが、彼がアメリカ人であることがストーリーに絡むことは無かったと思います。なぜアトランティスの末裔のキャラクターにはそれが要求されるのでしょうか。」と言いますか?
特にこの映画では、妹のセクシャリティを明らかにする必要が全くありませんでした。それなのに、わざわざレズだと明らかにする必要がある方が、個人的にはよっぽど差別的だと思うんですがね。
さらにいえば、「レズビアンやゲイのキャラクターがストーリーに絡む場合、殺され、自死し、殺人鬼になる」とすぐ発想するような人こそ、差別的思想の持ち主なんじゃないでしょうかね。
主人公のセクシャリティは明かされてないので分かりませんが、例えばエンジェルというキャラクター、彼は「彼女と別れた」と話していたので異性愛者と思われますが彼のセクシャリティがストーリーに絡むことは無かったと思います。なぜレズビアンのキャラクターにはそれが要求されるのでしょうか。殺されず、自死もせず、殺人鬼にもならないレズビアンやゲイのキャラクターが登場することのどこに不満があるんでしょうか