「【「ナホム書 第3章 6節」人間が制御出来る有機生命体と、制御が到底無理な”モノ”を描き出した作品。序盤の凄惨な光景と、中盤の不穏な雰囲気から後半の尋常でない緊張感の繋がりが効果的な作品でもある。】」NOPE ノープ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【「ナホム書 第3章 6節」人間が制御出来る有機生命体と、制御が到底無理な”モノ”を描き出した作品。序盤の凄惨な光景と、中盤の不穏な雰囲気から後半の尋常でない緊張感の繋がりが効果的な作品でもある。】
ー 冒頭、「ナホム書 第3章 6節」というテロップとともに、
”私はあなたに汚物をかけ、あなたをはずかしめ、あなたを見せ物とする”
と、ナホム書に書かれた文章が流れる。
そして、映画を観ていくうちに、観客は上記の言葉そのものの凄まじい光景を見せつけられるのである。
ちなみに、ジョーダン・ピールは前作「アス」でも旧訳聖書 エレミヤ書を効果的に使用している・・。-
◆感想
・冒頭のテロップの後、いきなりTV人気ドラマのセットで起きた惨劇の後のシーンが映し出される。この時点では、何が起こったのかよく分からないが、中盤その惨劇のシーンが写しだされる。
ー そのシーンでは、TV人気ドラマで人気だった猿が、制御不能に陥り、”一人の少年を除いて”惨劇を引き起こした後に、射殺される。
明らかに、この凶暴化した猿は、この後に出現する巨大な制御不能な飛行有機生命体を暗喩している。-
・その後、舞台は広大な渓谷の中に有る牧場に移る。OJ(ダニエル・カルーヤ)と妹エメラルド(キキ・パーマー)は、半年前に”飛行機からの落下物”に当たり死んだ父の後を継いでいるが、経営は楽ではない。因みに、傍にはテーマパークがあり、且つての惨劇で生き残った男が運営している。
ー この辺りの設定も上手いが、未だ、想定範囲内であり、緊迫感も薄い。-
・OJたちは、半年間動かない雲の中にUFOを一瞬見、その姿を撮影する事で、一儲けしようと考え、町のデジタルショップに監視カメラを買いに行き、屋根に設置する。
ー この辺りから、物語は緊迫感を増してくる。観る側は、雲の中の”アレ”をUFOと思わされながらスクリーンを観ているのだが、徐々に”アレ”そのものが、警戒心の強い有機生命体であることが分かって来る。
故に、その下で暮らしているOJや妹エメラルドは大丈夫なのか・・、という思いが強くなり、サスペンスフルな雰囲気が画面に充満し始めるのである。
・テーマパークを運営する男が、”アレ”を見せ物にしながらショーを繰り広げるシーンから、本格的にこの作品の真価が発揮される。
ー 観客席には、且つて猿に顔面をグチャグチャにされた女性がベールを被って座っているのも印象的だ。
そして、彼らの上に来た”アレ”は初めて、全容を大スクリーンに表し、観客たちを巨大な穴の中に吸い込んでいく・・。あの穴に吸い込まれるのは嫌だなあ・・。-
・その後、「ナホム書 第3章 6節」と全く同じように、OJ達が住む家には、血の雨が降り注ぐ。”消化“できなかったものと共に・・。
ー そして、徐々に”アレ”の性質が明らかになって行く。攻撃的で、目を合わせたモノには敵意を剥き出しにする事。現れると、電気が使えなくなること・・。-
<父を喪ってから、死んだように生きていたOJが、エメラルドや、デジタルショップの店員や、知り合いの老カメラマン、ホルストたちと、”アレ”に対峙して行くシーンは、見応えがある。
そして、”アレ”が苦手とする”消化しきれないモノや、様々な”旗”を効果的に使用し、”アレ”の正体が露わになるシーン。
今作は、序盤はスローペースながら、恐怖心を少しづつ観る側に植え付け、後半は一気に引き込まれるサスペンス・ホラーである。
あの極限状態で、父を殺した”アレ”に向かっていったOJの成長物語でもある。>
■追記<2022年9月5日>
拙レビューにて、致命的な瑕疵を御指摘頂き、修正しました。
キッドさん、有難うございました。
また聖書が出てきましたね。
次作も絡めてくるのでしょうか。
存在の有無は別として、
神に善性って無いんですか…😭
統一教会の問題について、韓国が日本を搾取する構図は、歴史問題からして仕方ないだろ、日本人の自業自得だと、よく分かっていないアメリカ人に言われて悲しかったです〜。
コメントと共感を有り難うございます。
不条理と言ってしまえば、この世の出来事の大半が不条理かも知れませんが。
そうですね。書かれているように、物語が進むにつれて、画面からの不協和音のようなものが段々、大きくなってきましたね。最後は制御しきれずに、打ち壊したのでしょうか。
NOBUさんへ
アキラのオマージュは、金田のバイクのスライドブレーキシーンです。妹さんが使徒から逃げるシーンで見せてくれました。アニメでバイクや自転車が出てくると、お約束になってるくらいのヤツですが、アレには萌えました!