劇場公開日 2022年10月7日

「かなり誇張したあり得ない展開を見せることで、敵役を懲らしめる痛快感を強調しするところがキモ」七人の秘書 THE MOVIE 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5かなり誇張したあり得ない展開を見せることで、敵役を懲らしめる痛快感を強調しするところがキモ

2022年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 2022年秋、七人の秘書たちが史上最凶の巨悪をぶっ潰す!
ボスを支え、組織に仕え、目立たぬことこそを極意とする存在、それが「秘書」。

 表では、そんな名もなき秘書として働く彼女たちが、裏では「類い稀な潜入スキル」、「極秘情報ネットワークへのアクセス能力」、そして時には「秘めた高い身体能力」を駆使して、人知れず弱きものを救う“影の軍団”として暗躍していたのです。

 誰もが考えつかなかった「現代版・必殺仕事人」とも言える唯一無二の世界観と、美女たちが悪いヤツらを片っ端から成敗していくという痛快な設定が話題を呼び、2020年に放送された数多くのテレビドラマの中でも、回を追うごとに視聴率が上がり圧倒的な支持を集めた、「ドクターX」シリーズの脚本家・中園ミホが仕掛ける人気ドラマ「七人の秘書」が映画化されました。

 「会社の嫌な上司に痛烈な仕返しをしてみたい 」。理不尽だらけの日本社会で、きっと誰もが一度は考えたことがあるはず。先行きの見えない不安定なこの時代に、ちょっとした日々のストレスを発散させてくれるドラマとして、現代人の心のニーズを捉えていると思います。

 ドラマの最終回で、政界の中枢で悪事の限りを尽くした粟田口大臣を成敗した七人たち。その後秘書の座を追われた7人は、バラバラになっていました。ところが千代が萬の紹介で秘書となっていた町工場の社長が巨大な詐欺グループに金をだまし取られたことにより、7人が再集結。萬もラーメン屋を開け、詐欺グループからお金を奪い取り、みんなで町工場の社長を助けたのです。(ここまで2022年10月放送のスペシャルドラマ)

 熾烈な戦いの末に政界のドン粟田口十三(岸部一徳)を辞任に追いやった秘書たちは、今日もラーメン萬で平和な日々をかみしめていました。
 すると突然、照井七菜(広瀬アリス)が結婚すると言って指輪を見せたのです。
 相手は、信州一帯を支配する、九十九ファミリーの次男で「雷鳥牧場」の経営者・九十九二郎(濱田岳)。マッチングアプリで出会ったのだといいます。

 雪深い山奥にある九十九家の屋敷で結婚式が行われ、望月千代(木村文乃)だけが参加しました。千代が、屋敷に歩いて向かう途中、山の中迷子になります。そこへ偶然通りかかった緒方航一(玉木宏)が、千代を車で屋敷まで送ってくれたのでした。
 結婚式直前、二郎がいなくなってしまいます。七菜はドレスのまま、千代と牧場に向かうと牧場が火で燃えていました。
 中に二郎がいると思った七菜はショックを受けるが、実は、結婚式に来ていた北アルプス市長が焼け死んでいました。
 そこへ九十九ファミリーのドンで「アルプス雷鳥グループ」のCEO・九十九道山(笑福亭鶴瓶)が来て友人の死を悼んだのです。

 二郎は結局行方不明のまま、千代が東京に戻りみんなで萬でラーメンを食べていると、そこへ七菜が航一をつれて戻ってきます。そして、「アルプス雷鳥グループ」が傍若無人な土地開発のため土地を乗っ取った事に怒り、土地を返して欲しいと秘書軍団に助けを求めたのです。 過去最大の悪人を懲らしめるため、雪深き地に七人は向かうのでした。

 今回のストーリーでは、これまでのシリーズではなかった7人の恋と結婚が描かれました。先ずは七菜と二郎の結婚の行方。その結末は七菜らしいお間抜けなことになってしましました。また千代と航一の関係。お互いが惹かれ合い、キスするまで発展するものの、最後に航一に裏切られてしまいます。また長谷不二子(菜々緒)は、いつの間にかシングルマザーとなって、赤ちゃんを抱いて活動参加しましたが、最後まで父親の存在は明かされませんでした。
 さらに萬は、九十九ファミリーの養女で「アルプス雷鳥グループ」の顧問弁護士・九十九美都子(吉瀬美智子)と古い過去の知り合いという触れ込みでしたが、なにやら訳ありの関係です。しかし今回恋愛までは発展しませんでした。
 どうも7人たちはも恋や結婚ができないように、中園ミホさんにコントロールされているようです。

 最強の悪と闘うという割りには、今回の悪玉は市長一人殺した程度の小粒。粟田口に敵対していてドラマ版よりはスケールダウンしています。道山の目論むリゾート開発が悪者呼ばわりされていますが、もしそれが成功していたら、道山のいうとおり地域の雇用と観光需要を増大させる救世主となっていたことでしょう。ただ結果を焦る道三の強引さが7人による「懲らしめ」を引きよせてしまったのです。
 ただドラマ版と相変わらず7人が雷鳥グループの各社に秘書として潜入する下りは、いつもながら強引に、短期間に成功してしまいます。これが気になる人は嘘くささでシラケるのかもしれません。このところが中園ミホ脚本の特徴だと思います。かなり誇張したあり得ない展開を見せることで、敵役を懲らしめる痛快感を強調しするところがキモなんですね。それが『ドクターX』では、あまり気になりませんが、本作では気になってしまうのです。そもそも7人の秘書軍団の存在そのものが、あり得ない設定ですからそう感じやすくなるのかもしれません。
 ただそんな理屈に構わずエンターティメント作品としては、なかなか痛快です。特に道三が雇ったヤクザと7人がバトルするシーンがたっぷりとられていて、見応えありました。
 また道三役の笑福亭鶴瓶の悪玉ぶりが見事で、憎たらしさ満開でし

流山の小地蔵