「皆、ニコラス・ケイジ(と『パディントン2』)が大好き」マッシブ・タレント 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
皆、ニコラス・ケイジ(と『パディントン2』)が大好き
たまに“本人役”なんてのがある。でもそのほとんどがユニークでサプライズ的なゲスト出演。メイン級で印象的だったのは『マルコヴィッチの穴』のジョン・マルコヴィッチくらい。
だから本作にはびっくり!…いや、おかしい?
ニコラス・ケイジが“ニコラス・ケイジ”を演じる。勿論“主演”で。
厳密に言うと“ニック・ケイジ”で、私たちの知ってるケイジ本人まんまではない。
流行りのマルチバースのケイジ…?
でも劇中で触れられる出演映画は同じ。(←ここ、ニヤリとさせられるネタ祭り!)
かつては大ヒット作に立て続けに出演してトップスターに登り詰めるも、今は落ちぶれ…ちゃいない、鳴かず飛ばずって所もつい最近までのケイジを彷彿。にしても、自虐的過ぎ!
本人まんまじゃないんだけど、やっぱり本人のような…。何とも矛盾してるおかしな役。
ただ一つ言えるのは、ニコラス・ケイジにLOVEたっぷり!
という事で、落ちぶれ…ちゃいないけど、最近鳴かず飛ばずのニック・ケイジ。
気に入った企画に猛アプローチするも、別の役者へ流れ…。
妻とは離婚し、娘からは愛想尽かされ…。年頃の娘にお気に入りの映画としてドイツのサイレントホラー『カリガリ博士』を見せる父親って…。
娘の誕生パーティーに呼ばれるも、ピアノを弾きながら即興で娘へ捧げる歌を歌う。でも後から娘に言われる。自分が目立ちたいだけ!
仕事もプライベートもどん底。何だか実際と被るから笑えるんだけど笑えない。
引退を宣言した時、思わぬ話。
スペインの大富豪、ハビの誕生パーティーに参加するだけで100万ドル。
何でそんな事を。俺は役者だ。元だけど。
でも背に腹はかえられない。渋々承諾。
にしても何故、落ちぶれ…ちゃいない、最近鳴かず飛ばずのニックにこんなオファーが…?
と言うのもハビ、ニックの大ファン。いや、熱狂的なファン。
人生の全てをニックの映画から学んだほど。父親との和解もニックの映画から(『不機嫌な赤いバラ』)。
極め付けは、ある隠し部屋。そこにはニックの映画グッズがいっぱい! 我々でもおっとなるものやマニアックなものまで。
『フェイス/オフ』に出演した時のニックの蝋人形には唖然…。グロテスクだけど。
ただ者じゃねぇ…。ペドロ・パスカルが快演。
最初はハビのペースにたじたじだったけど、次第にウマが合う。
映画の趣味も合う。ハビのBEST映画は、1位『フェイス/オフ』、2位『カリガリ博士』、3位『パディントン2』。『パディントン2』…!? でもニックも一緒に見てみたら、メッチャいい映画じゃん、『パディントン2』! 面白いもんね、『パディントン』。
ハビは密かにニックの為に脚本を書いていた。傑作…!
どん底の中で出会った思わぬ友と出会いとチャンス。
ところが…。
CIAがニックに接触。
ある選挙立候補者の娘が誘拐され、その犯人として目星を付けたのはハビ。ハビは犯罪組織のボスだという…。
ハビを信じるニック。
が、CIAエージェントに監視カメラなどを付けられ、スパイ行動。
映画ではそういう役やった事あったかもしれないけど、まさか現実世界でスパイに…!?(あくまで映画の中の話です)
映画だったらカッコいいスパイが出来るが、実際は…。しかし、“魔法の言葉”で奮闘する。“アクション!”。
ハビを裏切るようなスパイ活動の一方、ハビとの関係は良好。書いた脚本にさらにアイデアが膨らむ。まるで映画の主人公に成りきって町をアクションしたり、ドラッグでハイになってドライブ。
一時怪しまれるも、家族との関係不和と勘違い。ハビはニックの元妻と娘も呼ぶ。
ハビには従兄弟が。実はこの従兄弟こそ…。
一応クライマックスは、ハビにCIAの依頼でスパイしていた事がバレたり、家族も巻き込まれ娘が捕まったり、従兄弟率いる犯罪組織の魔の手が迫ったり、ハビとの友情は…?
ニックとハビが銃を構えて向かい合うシーンは言うまでもなく『フェイス/オフ』オマージュ。他にもケイジ映画の小ネタ満載。
銃撃やカーチェイス、変装潜入など、序盤の自虐コメディからアクション/サスペンス要素も。
とは言え、ハラハラドキドキスリリングやド迫力とは行かず。ドタバタ感が強い。
まあ、このユルさが本作の持ち味なんだけどね。それに乗れるか否か、ケイジが好きか否かで本作の好みは分かれる。
好きならば最高のファン・ムービー。そうでなければケイジ昨今のB級の類いの一つ…?
本人が本人を演じる。これは映画か、現実か。
ラストはそう来たか~!
おそらくそれまでの話はニックやハビたちが体験した現実。
で、それを基にしてニック・ケイジ主演の映画が作られた。
大好評で迎えられ、華々しいカムバック。いや端から落ちぶれちゃあいないけど!
ハビとの友情は続いている。
家族ともヨリを戻す。
映画みたいなご都合主義だけど、いいじゃないか。実際のニコラス・ケイジも近年復活。実際がそうなんだから。
ニコラス・ケイジだからハマった。ニコラス・ケイジじゃなかったらそこまで魅力なかったかも。
ケイジと『フェイス/オフ』で共演したジョン・トラヴォルタもここ暫く不調。トラヴォルタだったらあまり興味沸かなかったかも。
やっぱりニコラス・ケイジなんだよね。皆、ニコラス・ケイジが大好き。
さて、ニコラス・ケイジの映画でも見ようかね。
後、『パディントン2』も。