「正しくなくとも意義がある。」彼女たちの革命前夜 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
正しくなくとも意義がある。
1970年にロンドンで開催された世界的ミスコン(ミス・ワールド)を妨害しようとした女性活動家たちの実話がベースになっているが、主人公は活動家だけではない。ミスコンに参加した女性たちや、司会者として参加したアメリカのコメディアン、ボブ・ホープら、さまざまな視点を持った群像劇になっている。
「彼女たちの革命前夜」という邦題は言い得て妙だと思っていて、ミスコン阻止を願う活動家たちの考え方が熟成されているとは思えないし、一方でミスコン参加者たちもそれぞれの国の事情を抱えていたり、世間の偏見にさらされていたりで、どこか迷いを抱えている。また女性の権利を求めるにもさまざまなレイヤーがあって、貧困国と富裕国の見え方の違いもきちんと描写されている。
つまりは誰もが絶対的な正義など持っておらず、それでも行動しなければ何も変わらないと活動家グループはある意味猪突猛進するのだが、その闇雲な気持ちが何かを動かすことができるのだと、この映画は描いているのではないか。
間違いだらけの主人公たちだけど、先に進もうとする意思はたしかに未来につながっている。しかしまだまだ彼女たちの革命は成し遂げられておらず、今も「革命前夜」のままなのだ。しかし人一人にできる限界と可能性をあらわにすることで、確かな希望を感じさせてくれる。タッチが軽いという意見もあるようだが、先人たちへのリスペクトを失わない好篇だと思う。
あといい役者ばかりの中、いささか類型的な役柄だけど、相変わらずジェシー・バックリーって目が離せない。
コメントする