「世界的な注目の裏側で何が起こっていたのか」彼女たちの革命前夜 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
世界的な注目の裏側で何が起こっていたのか
1970年のイギリスでこのような出来事が起こっていたとは。本作では「ミス・ワールド」をめぐって幾つもの問題や視点が顕在化する。ナイトレイ演じる主人公が属する女性運動側、ミスコン主催者、各国の最終候補者たち、それからショーの司会者であるボブ・ホープ。群像劇と呼ぶほどではないにせよ、このように複眼的であることによって、是が非でもイベントを成功させたい主催者側と、世界的な注目が集まる場所に一石を投じたい運動側、はたまた母国における女性の権利底上げのためにこの稀少なチャンスを活かしたい出場者の熱い思いが絡まりあい、物語を立体的に編み上げていく。その上、当時は南アフリカで依然としてアパルトヘイトが存在した時代でもあったのだ。そんなあらゆる人々が一堂に集う生中継で何が起こるのか。事態の成り行きをカウントダウン的に見届けるのもなかなか楽しい。語り口は軽やかだが、その分、歴史に刻まれた重みが伝わってきた。
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