劇場公開日 2022年7月8日

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「【不世出の天才クライマー、マーク・アンドレ・ルクレールの信じ難き数々のフリーソロによる登頂シーンを写した画期的なドキュメンタリー作品。】」アルピニスト NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【不世出の天才クライマー、マーク・アンドレ・ルクレールの信じ難き数々のフリーソロによる登頂シーンを写した画期的なドキュメンタリー作品。】

2023年1月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

幸せ

■携帯も持たず、登頂結果をSNSで発信することもなく、たった1人で驚くべき登頂を次々と成功させていた無名のカナダ人青年、マーク・アンドレ・ルクレールに魅せられたピーター・モーティマー、ニック・ローゼン監督が、彼の挑戦に密着。

◆感想<Caution!  内容に触れています。>

・「フリーソロ」で観たアレックス・オノルドも作中で言っているが、マーク・アンドレ・ルクレールの登頂スタイルは、”ちょっと、山に登って来る・・。”と言った感じで、”スタンレー・ヘッドウォール”や、”ロブソン山のエンペラー・フェイス”をフリーソロやダブルアックスを駆使したミックスクライミングで、易々と登っている。

・そこには、山への恐怖は感じられず、彼自身が楽しそうに、ガールフレンドのブレットとフリーソロを楽しむ姿が映し出されている。

・彼のフリーソロシーンの姿も”どうやって撮影したのか!”と言う位、至近距離で撮影されている。

■白眉のシーン

・冬のパタゴニアのトーレ・エガー登頂シーン。
 一度は頂上直下で吹雪に会い、下山するが、再挑戦する姿。
 マーク・アンドレ・ルクレールは子供時代にADHDと診断されたとあるが、確かに自由人だし、取材陣の前から突然姿を消したりするが、スピリットは純で、強靭なる人である事が良く分かる。
 そして、何より彼の言葉には悲壮感はなく、極限状態の中で生を謳歌している事が伝わって来るのである。

<私は、登山とは頂上に登る事が全てではなく、無事に愛する人や、家族の所に戻ってこそ完結すると思っている。(10年前まで、登山をしていたので・・。)
 故に、マーク・アンドレ・ルクレールのアラスカでの雪崩遭難死は悲しい。
 だが、彼の追悼式に集まった、多くのアルピニストたちの姿や、母親のスピーチを聞くと、彼の死は悲しい事だが、多くのルートを開拓し名を残したのだから、有意義な人生ではなかったか・・、と思った作品である。>

NOBU