「ドキュメンタリー風ホラー映画という試み」女神の継承 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリー風ホラー映画という試み
普段あまりホラー映画は観ないのですが、重なる時は重なるようで、先日の「NOPE」に続いての本作の鑑賞となりました。ただ「NOPE」ががっつりハリウッド映画だったのに対して、本作はタイ映画。しかもホームビデオで撮られたようなタッチの映像で、さらにドキュメンタリータッチのホラーという、実に斬新な作品でしたので、全く違う印象の映画となりました。
内容的には、伝統的にタイに伝わる女神の化身というか、霊媒師というか、日本で言うなら恐山のイタコとか、沖縄のユタのような存在の継承を軸にしたお話でした。この霊媒師は、一般的に代々女性が継承するという設定で、現在の継承者は主人公のニム。本来は姉が引き継ぐべきだったものの、姉が嫌がったために妹であるニムが受け継ぐことになったようです。
そして物語は、ニムの後継に姉の娘である姪っ子のミンが選ばれたらしいということで展開していきます。ところが実際はミンに憑依したのは女神ではなく、最恐最悪の悪霊だったということになり。。。
中盤までは、前述のようにドキュメンタリータッチで淡々と描かれており、創作ということを忘れてしまいそうになりました。しかし終盤を迎えて最恐最悪の悪霊が本領を発揮し出すと、残虐シーンが頻出するホラー映画然としていきました。個人的には中盤までのドキュメンタリー風の創りで通して貰った方が面白かったように思えますが、まあホラー映画なので仕方ないのかも知れません。
また、結解のようなものを使って部屋の中に封印していたとは言え、完全に悪霊が憑依している状態のミンが家にいるのに、ニムの兄の妻と赤ちゃんを残してみんなが悪霊払いの儀式に向かったのは、明らかに違和感がありました。既に一度赤ちゃんをミンに攫われており、普通なら真っ先にこの2人を安全な別の場所に移しそうなものを、護衛1人だけの状態で家に残しているのは、いくら何でも変でしょう。結果的に当然の如く2人は殺されてしまうのだから、この辺の展開にはちょっと醒めてしまいました。
そんな訳で、中盤までのドキュメンタリー映画風の創りには大いに感心させられたものの、終盤の展開にはイマイチ納得が行かなかったので、評価は★3としました。