「インモラルが振り切ってパクチーのように爽快!土着信仰と仏教とプロテスタントが綯交ぜになった土地を舞台にした『エクソシスト』」女神の継承 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
インモラルが振り切ってパクチーのように爽快!土着信仰と仏教とプロテスタントが綯交ぜになった土地を舞台にした『エクソシスト』
タイ東北部の村で信仰されている女神バヤンを降ろす巫女ニムに密着取材をしていたドキュメンタリー映画の撮影隊は彼女の姪ミンが奇行を繰り返していることを知り、女神バヤンが彼女を新しい巫女にする決定的な瞬間が撮れると期待してミンにもカメラマンを張りつける。最初は興味津々で取材を受けるミンだったが時折彼女が見せる奇怪な仕草に少しずつ常軌を逸した狂気が滲み始める。
何となく映像が醸す不穏な空気感に既視感があったのでクレジットを見ると監督が『愛しのゴースト』のバンジョン・ピサンタナクーンだったので納得。終始モキュメンタリーの体裁で、登場人物も役者っぽく見えないので実際のドキュメンタリーを見ているような錯覚に陥りますが、ミンの奇行がレッドゾーンに入ってから『REC レック』のようなPOV目線のアクションホラー調のテンポになります。悪霊祓いの話なのでやはり『エクソシスト』へのオマージュが滲みますが、『REC レック』も『エクソシスト』もカトリックの世界観がベースになっているのに対してこちらは土着信仰と仏教とプロテスタントが綯交ぜになった土地で起こる悪霊憑きの話なので、どんなオチに着地するか判らない不穏さとじっとりと湿った空気感に圧倒されます。タイの奥地で実際に起こっていてもおかしくないような惨劇ですが、悪霊に憑かれた人々の鋭角的な身のこなしが『新感染』シリーズの感染者に似ていたところに微かに韓流の匂いを嗅ぎました。
ミンを演じるナリルヤ・グルモンコルペチの演技がとにかく壮絶で、彼女の奇行だけで十二分に18禁相当。インモラルが次から次に塗りつけられる不快感がこちらが用意した気持ちのハードルを軽々と超えていくのでどこにも救いがないのに逆にすっきり爽快で、そこは『哭悲 THE SADNESS』にも似ています。とにかく物凄い数の吐瀉物なり廃棄物なりを見せられるので食前に観るのは控えるべきだと思いますし、犬好きの方はちょっと無理かも知れません。