「「何か一つくらい夢を持っていたい」そう願う少年の想いは大勢の人に支えられ、誰一人届いたことの無い高みの場所へと獅子が挑みます。手に汗を握る少年の成長の物語です。」雄獅少年 ライオン少年 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
「何か一つくらい夢を持っていたい」そう願う少年の想いは大勢の人に支えられ、誰一人届いたことの無い高みの場所へと獅子が挑みます。手に汗を握る少年の成長の物語です。
観る直前までほぼノーマークの作品。
公開中の作品一覧を眺めていて気になり
作品紹介を読んでみたら面白そう。
そんな訳で鑑賞してきました。
中国の獅子舞が題材です。
民間の伝統芸能らしく、二千年の歴史があるとか。
歴史の重みが凄いなぁ。 …と素直に感心。
さあ鑑賞。
獅子舞の演技を見て、憧れを抱く少年。
見よう見まねで踊ってみる。
獅子頭の代わりに、半分の西瓜(の皮…)を振り回す。
獅子舞演者の若者にぶつかり、睨まれる。 きゃー
野良猫(=少年の事)が前を通ってケチがついた と
春節でもらったお年玉の袋を盗られそうになる。
その袋を、更に脇から奪い返す者がいる。
脇から現れた赤い獅子頭の演者。 速い。
その演者がお年玉の袋を蹴り上げると
演技舞台の一番上、竹の棒の先端に挟まる。(すごい)
あれを早く手にした者が勝ち…という事のようだ。
相手の進路を邪魔するのも有りらしい。
一進一退。手に汗握る攻防。勝ったのは赤い獅子頭の演者。
お年玉の袋を取り戻した少年。
赤い獅子頭の演者を荷台に乗せ、自転車で逃げる。
丘の上までやってきて、演者が赤い獅子頭を外す。
” あ… ”
獅子頭の演者は女の子だった。
” 私の名前はチュン ” あなたは? 問う少女。
” 僕の名前もチュン ” 応える少年。
なんと、漢字も同じ「 娟 」。
少女チュンは、獅子舞の全国大会の宣伝に来ていた。
今年の大会のポスターを渡される。
よく見ると、少女は前回大会の優勝メンバーだ。
すごい演技だった と伝える少年チュン。
僕にもあんな演技ができたら良いのに と口にする。
” きっと出来るわ ”
との言葉と赤い獅子頭を残して少女は去る。
ポスターに目を落とす。
大会の会場は、少年の両親の出稼ぎ先の都市だった。
” 獅子舞がやりたい ”
” 出稼ぎ中の両親に元気な姿を見せたい”
獅子舞への気持ちに駆り立てられる少年チュン。
だが…
・メンバーが足りない(一人では演技できません)
・太鼓や衣装も無い (お金も相当がかかるみたい)
・練習方法も分からない (…困った。探さなきゃ)
まずは仲間を集めよう。そこからスタートさ。
こうして少年チュンの
獅子舞全国大会出場を目指した挑戦が始まった。
とまあ
田舎で暮らす一人の少年が、
獅子舞の大会に出る仲間を探し、獅子舞の師匠を探し
獅子舞を通して成長する姿を描いた物語です。
テンポの良いストーリー展開で
最期までハラハラドキドキしました。
獅子舞の全国大会に出られるのか?
少女チュンとの再会はあるのか? etc
主人公たちを応援せずにはいられなくなる
良い作品でした。観て良かった。
満足です。
◇あれこれ
■夕焼と夕闇
田舎の夕焼けの赤。
都会の夕闇のグレー。
その二つの画面が印象的だった気がします。
そしてビルの屋上で観た朝の光。
これから起こる少年の変化への期待を
印象づける場面だった気がします。
■秘めた想い
獅子舞の師匠。昔は獅子舞の名人だった。…らしい。
今は干物を売り歩く魚屋さん。
演技に惚れて結婚した奥さんとの二人暮らし。
暮らしぶりは豊かとは言えない中に
3人もの若者が転がり込む。
最初はやっかい者扱いをしていた奥さん。
ダンナに笑顔が戻ってきた事に気がつき
稽古の時間をもっと盗らせてあげたい と
魚の配達を代わりに行くようになる。
客から奥さんが怒鳴られる場面を見たダンナ。
やはり自分が …と 予選会に出場中の弟子を置いて
奥さんの所へと戻ってしまう。 …あら
後悔を繰り返さないで と奥さん。
獅子舞をやめた事を後悔しちゃいない と師匠。
" 私が後悔してるの!"
生活のために獅子舞をやめた。
ワタシがやめさせてしまった。
もう一度弟子たちと共にこの人を舞わせて上げたい。
この奥さん、カゲの主人公です。ヒロインです。
助演女優賞を差し上げたい。
■この作品
とにかく、すごく丁寧な作りの作品 そんな印象です。
中国が舞台な訳ですが、中国色を出すだけでなく
世界中のどこでも通じるテーマをストーリーに練り込んだ
見応えのある作品でした。
この監督の、次の作品が気になります。
要チェックです。
◇よだん
獅子舞の世界大会があったら
日本から参加して欲しい人たち。
・ライオン丸 変われ獅子丸♪
・白獅子仮面 獅子ですから
・タイガーマスク … トラでした ・_・;
・ウルトラマンレオ 獅子の瞳が輝いて (サイズが合わない…)
他にも居そうな気が。
◇最後に
届かない物がある事を教えるため
1本だけ遠く話して立てられているという柱。
少年チュンが最後に挑んだのは、その柱。
後ろ足のマオの力を借り
太鼓のワン公の力を借り
少女チュンが叩く太鼓に力を得て
他チームのみんなの太鼓を一身に受けて
そして
獅子頭が柱の上。
体は…?
たぶん、大会は準優勝。 けれど…。
夢は、諦めない限り叶う。
そのことを、余韻を持って伝えて終わる
秀逸なエンディングです。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。