雄獅少年 ライオン少年のレビュー・感想・評価
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キャラデザがいい。
いまどき珍しいほどに真っすぐな少年の成長ものが成立するのが本当に羨ましい。この映画には、中国の事情は知らなくてもいろいろな点で懐かしさのようなものを覚える。落ちこぼれの少年たちが獅子舞大会に出場する夢を見て、かつての名人で今はしがない中年男に教えを乞う。貧しい田舎に暮らす主人公は、両親が都会に出稼ぎに出ており、経済成長の恩恵を受けた土地とそうでない土地がわかりやすく対比される。この映画に描かれている時代は、かつて日本が辿った道でもある。素直な上昇志向がこの映画にはあるのだ。
アニメーション的にも見どころたくさんだ。キャラクターデザインが良い。日本のアニメでもなければ、アメリカ的な3DCGとも異なるデザインを成立させているし、獅子舞のシーンの動きは躍動感たっぷりで何度でも観ていられる。題材が伝統芸能であるということも大きいが、物語にせよ、絵柄にせよ感性が借り物ではない。色使いもアメリカや日本とは異なる感性がある。ストレートなスポ根ものとしても面白いし、大きな魅力が詰まった一本。
この作品の強み
アニメーション作品には実写映画では難しいことができる強みがある(それを行使しない作品もあるが)。例えば、あり得ないカメラアングル、あり得ない風景など。つまりイマジネーションの全てを形にできるところだ。
この作品は部活頑張る系の青春映画にカテゴライズされると思うが、多くの同じカテゴリ作品の場合、主人公の目覚め、主人公のつまずき、修行、師の問題、ライバル、目指す頂き、仲間との絆、ロマンス、まわりを巻き込んでの高揚感、こういったもののいくつかが入っているものだ。しかし映画という尺の問題で全てを入れることは難しい。実写作品の場合は。
この作品は、すでに書いたアニメーションの強みを「あり得ないスピード感」として使い、本当ならば入りきれない青春映画のピースを全てぶち込むことに成功している。
つまり娯楽度マックスなのである。
全体的には「早い」のだが、近年のアクション映画かのようなスローモーションも効果的だ。
魅せるところはしっかり見せて、慌ただしさを軽減している。
もしかしたらスローモーションに見えるところがノーマルスピードなのかもしれない。それくらい全体のスピードは速い。
美しいアニメーションだったかと問われると、そうとは言えないだろうが、アニメーションの強みを存分に活かしたとても楽しい青春映画だった。
今年観たアニメ映画で一番良かったと言っている人をチラホラ見かけるが、似たような感覚になったことは間違いない。
王道
中国のCG映像の現在地が上手くなっている事を感じる
テーマとしては目新しくはないが、貧しい暮らしのチュンとその仲間たちの仲間を思いやる心が温かい。
ここまででは無いが、日本にも同じような子どもや青少年んは沢山いる事だろう
李白の言葉を語る少年チュンの思いから始まっていくドラマは一昔前のものを感じさせるがそこが良い。
今の日本ではこの類いの作品はあんまり作られない。
ただインディーズ作品やご当地映画によくある印象。
そもそもスポーツでは無いしルールもよく分からないこの獅子舞い、初めて目にしたのはジャッキーチェンやジェットリーの作品で獅子がしらで踊りながら闘う荒っぽさで、乱暴なお祭り以外の印象がない人が多いと思う。
だがそんなことはどうでも良い。
よーわからんが出場してる連中も真剣でルール上の小細工はするものの、トコトンイヤな奴等も居ない。
中々熱い奴等が揃っていてこっちも熱くなってしまう(笑)
終盤の頂上への挑戦に女性チュンの叩く太鼓を皮切りに他チームの
太鼓係がチーム関係なしにエールを贈り始めるシーンにもグッとくる。
大会後と結果はよく分からないし、女性チュンとのその後の関係(彼氏らしき人物が居た)が写真だけ写っててもどうなったの?とは思う。
お父さんの指が動いたから、奇跡は起こったのだがどうせならその奇跡を一緒に喜ぶ姿も見たかったのでラストがあっさり過ぎるのが残念。
コノ映画、スゴイぞっ!!
墨で一筆書きの獅子(ライオン)が、画面一杯に雄々しく躍動し、咆哮すると次の瞬間、獅子舞の頭(かしら)に変わる----。
中国大陸での獅子舞の本質(舞踊、音楽、そして武芸の合体)と歴史が簡潔に語られる----。
『斬新の極み』の美しいタイトルに魅了されマス。
そして、再び墨の獅子(ライオン)が画面から観客側に飛び出そうとする瞬間、画像はフルカラーのCG映像の痩せコケた野良猫と入れ替わる。路地裏を進み歩く向こうの路に、自転車を思い切り飛ばす、主人公の少年が現れる----。
コノ映画は、『痩せた野良猫である少年』が、躓き倒れナガラも立ち上がり、『雄々しい獅子(ライオン)の少年』に育つ、見事な物語です。
そして、心を打つ美しい場面は、両の手指でも足りマセン。
巻頭、自転車を飛ばす少年を映し出す『風景』は、少年が村や街に暮らす人々の間だけで無く、草や木々に包まれた『美しい世界』で息づいて居る事が数カットで明示されマス。
最後に、もう1場面。
木綿(きわた)の紅い花が、閑かに咲き誇る林の丘に、少年が立つシーン。
(無知な私は、木綿(きわた)を初めて知りました。)
桜の花の10倍は有ろう大輪の紅い花が枝一杯に咲き乱れる木綿の樹----。
運命のイタズラで出逢った『達人の少女』から、獅子舞の頭(かしら)を譲り受けた少年が問いかけマス。
「僕なんかに、獅子が舞えるノか?」
ソノ少年の頭に、木綿(きわた)の紅い花がフーッと落ちて来る----。
その様を見て、少女が答える。
「キッと出来るワッ!『英雄の樹』とも呼ばれる木綿の花が君を選んだ!」
コウして『痩せた野良猫の少年』は、『雄々しい獅子(ライオン)の少年』への険しい道を歩み始めマス。
木綿の樹は、その間の全てに於いて、少年を、蔭で見守り、蔭で支え続け、そしてコノ映画の最後のクライマックスで、ソノ姿を現すのデス!
このアニメ映画を味わう為に、何らの教養も知性も必要有りマセン。
ソレは、天地を紅く染め上げる夕焼けの美しさを味わう為に、何らの知性も教養も必要無い事と同じデス。
完全なネタばれデスが、文字で綴った予告編と思い、ご容赦下さい。
サア、珠玉の本篇の始まり始まりーッ!
少年よ、獅子となれ!
別に某芸人のネタだからではないが、日本でも“獅子舞”は知られ、晴れの場で披露もされている。
本来は中国の古典芸能。武術、技芸、演劇の要素が合わさった民間芸術。
獅子自体聖獣とされ、中国映画でも時々祭りや祝い事の場で披露されるのを見た事ある。厄払いとして、無病息災や健康長寿を込めて。
南北の流派があり、本作は南派。表現豊かで、雄々しい舞い。
獅子舞と言っても、奥深い。だからこそ映画になる。
でも、ただの獅子舞だよ…? 伝統芸能を伝える芸術映画ならまだしも、それが娯楽映画に成り得るか…?
なったのだ。
本作を構成する王道的要素や目を見張る技術が素晴らしい。
中国のアニメーションだからと言って、侮る人など今は居ないだろう。ここ数年中国アニメのレベルの高さはよく知られ、アニメ大国と言われる日本を脅かすほど。
毎年日本でも何かしら公開され注目を集めるが、本作はその真打ち。
その見事な舞い(エンタメ性とクオリティー)を見よ!
とにかく話が王道。中国舞台や獅子舞題材であろうとも、非常に見易いのだ。
中国のある田舎町。都会へ出稼ぎに行った両親を待ちながら、祖父と暮らす少年チュン。
生活は非常に貧しく、本人も内向的で何の取り柄もナシ。
ハイ、ここだけでシンパシーを感じる人も居るだろう。私も含め。
そんなある日村で、獅子舞大会。村一の強豪チーム(←チュンを見下すヤな奴らだが、ここ伏線)が圧倒する中、ある一人が華麗な舞いで強豪チームを敗北させる。
何と、女の子…! ただの女の子ではなかった。前回の全国大会の優勝者チームの一人。実力は充分なのだが、女の子だからという理由だけで周囲から獅子舞を辞めさせられ…。
名は、チュン。まさかの同名。元々“チュン”とは中国では女の子名。
同じ名前の奇妙な出会いから、少女チュンは被っていた獅子の頭を譲る。
理由はもう一つあった。この時少年チュンに、“奇跡の花”が落ち…。
ひょっとしたら少年チュンは“選ばれた”のかもしれない。
でも当の本人は、美少女に横恋慕して…。
何はともあれ、不純なものであったり不思議な縁であったにせよ、少年は獅子舞を始める事に。
サル顔のマオ。
肥満体型のワン公。
ここにチュンも加えれば、痩せ、ブサイク、デブの冴えない面子。
無論獅子舞の事など何も知らない。
目に余る下手さ、嫌味な強豪チームからバカにされ、嫌がらせも受ける。
こんなんじゃ大会どころか予選すら無理。
負け犬たちには導く者が必要。
紹介された“師匠”。ところが…
ただの塩漬け魚売りの中年男。女房の尻に敷かれ、飲んだくれ、冴えない…。
ところが…!
この中年男チアン、若い頃は獅子舞の達人だった。
が、獅子舞だけで食っていく事は出来ず。結婚を機に夢を捨て…。
冴えない人物が実は…。最初は嫌々だったが、若者たちに懇願され…。自分もかつての情熱を取り戻す…。
ベタ過ぎるって…? だから何だ! それがいいんじゃないか!
チアンの奥さんもいい。恐妻でチアンは奥さんに内緒でチュンたちに獅子舞を教えるが、やがてそれがバレる。ヤベェ!殺される!…と思いきや、許す。それどころか、夫がもっと指導に専念出来るよう、魚の配達も自分が受け持つ。チアンが獅子舞を辞めたのは奥さんに言われてだが、奥さんが夫の夢を辞めさせたのを後悔していたのだ。
夫婦愛、内助の功。子供の居ない二人にとって、チュンたちを我が子のように面倒を見る。それからこの奥さん、べっぴんさんなの。
師匠の教えもあって、上達&成長していくチュンたち。
先に述べた通り、チュンたちは揃いも揃ってのダメダメタイプ。
そんな彼らにだって、長所はある。
長所を活かし、短所をバネにして。
チュンとマオが獅子を被り舞い、ワン公が舞いの太鼓を叩く。
チームであり仲間であり親友。それも築き上げられてきた。
特訓に次ぐ特訓。少年たちの実力も精神も鍛えていく。
言わずもがな、少年漫画的。
中国映画で言ったら、武侠映画か。さらに言えば、ジャッキー・チェンの若い頃のカンフー映画みたい。
本作が胸アツなのも、この王道展開が日本や中国の漫画や映画を思い起こさせるからであろう。
歌にもあるじゃないか。♪︎獅子の瞳が輝いて
だからその後の展開も予想は出来るし、予定調和である。
予選。ビビりまくりのチュンたち。しかも仕事でチアンは遅れている。
あの強豪チーム、練習試合でコテンパにされたチーム、チーム名は“塩漬け魚チーム”で周囲の失笑…。
完全アウェイ。こんな状況で勝てるのか…? 結果は…。
チュンの両親が帰ってきた。が、父親が仕事中の事故で重体となり意識が戻らない。家族の為、チュンが働かなければならない。出稼ぎへ。
獅子舞は辞めるつもりはない。あの予選の結果は、見事勝った。大会へ進む事が出来た。
家族の為の出稼ぎも、大会出場も、その時の仲間や師匠との再会も。
当初はそれらを目指していたが…。
明くる日も明くる日も仕事。
獅子舞の練習する時間など無い。
当初は仲間や師匠と連絡を取っていたが、次第に…。
いやそれどころか、獅子を被る事すらなくなる。
仕方ないんだ。稼がなきゃいけないんだ。僕が働かなきゃ、家族は…。
獅子舞より仕事の方を重視するようになる。それまで離さなかった獅子の頭を置いて…。
ある時街で、あの少女チュンと偶然再会。獅子をやってる?…の彼女の問いに、チュンは…。
自分のやりたい事、夢を追って!…と、見る側は思うだろう。
そうも言ってられない。
底辺で暮らす者に夢を追う事など許されない。家族の為、生活の為、我が身を粉にして働かなければならない。
女の子だから…と辞めさせられた少女チュンも男尊女卑を物語る。
王道エンタメと思いきや、中国社会の現実問題や格差を突き付けられる。
それに屈し、甘んじるしかないのか…?
抗い、自らで運命を切り拓く事は出来ないのか…?
チュンが戻らぬまま、大会開催。
チュンの欠員をチアンが補い、出場。
同村からの強豪チームや強者たちが集う。中に、一際強そうな優勝候補チーム。実は、街で出前仕事してたチュンと面識あり。
そのチュンは…。大会開催は知っていたが、金を稼ぐ為参加しないでいた。
仕事仲間に強引に連れられ、大会を見る事に。
何故だろう。もうやらないと決めたのに、自分の中で迸るものは。
師匠と仲間の奮闘。その姿を見ていたら…。
本来あそこにいなくてはならないのは、自分ではないのか…?
なのに、自分は今何をやっている…? このままでいいのか…? やりたい事に蓋をし、逃げ、一生負け犬のままでいいのか…?
否!
獅子、つまりライオンだ。百獣の王だ。
獅子なら立ち向かってみせろ。猛々しく吠えてみせろ。
もうひ弱な猫なんて呼ばせない。
今こそ、自分の中の獅子が目覚める時。
少年よ、獅子となれ!
チュンが途中から飛び入り参加。
さあ、その獅子の舞いを見せてくれ!
序盤や途中途中などでも披露されていたが、やはりこのクライマックスの獅子舞バトルこそ最も盛り上がる。
華麗で力強い舞い。敷きばら蒔かれた果物を踏まずに花を加える。
決勝戦は優勝候補チームと一騎討ち。引き分け。
延長戦。高い杭の上を舞い踊りながら渡っていく。
そんな事出来るか!…と思いつつも、CGアニメーションならではのアクロバティックなアクション、スリル。
それらを素晴らしいまでに表現したCG技術のクオリティーの高さに圧巻…!
獅子の鬣のふさふさ感、美しい背景や映像、キャラの表情も感情移入してしまうくらい。獅子舞の表情すら思わず“生きてる!”と思わせる。
延長戦、すでに優勝候補チームは見事な演を見せた。
チュンたちが挑む。が、チュンは足を痛め…。棄権の声も出るが、獅子は僕は諦めない。
危ないシーンもあったが、やり遂げる。それだけならまた引き分け、互角に渡り合っただけ。前人未到に挑む。
一際高い杭の上へ。未だ達成者は居ない。
チュンの挑戦を鼓舞するかのように、太鼓が鳴る。チームだけではなく、観戦していた少女チュン、ライバルチームたち、同村の嫌味だった強豪チームも応援。(←ここ、熱い!)
我が内なる獅子よ、飛べ!
結果は…。
王道エンタメ展開、ハングリー精神、ベタではあるが笑い(『クレヨンしんちゃん』のひろしかい!)や感動、社会派テーマ…それらがまさしく獅子舞の各要素の如く合わさり、舞い踊り魅せる。これ以上何が必要か!
私の中の獅子も吠えた!
躍動感が楽しいスポコン映画!!
日本の縁起物の獅子舞ではなく、
競技としての獅子舞が中国にはあるそうで
その競技獅子舞に立ち向かうことで
自身の負け犬根性や、正直厳しい社会格差に
打ち勝とうとするお話。
かなり正統派スポ根アニメ映画なので
素直に熱くなれて、最後にちょっとホロっとしちゃう
なかなか楽しいですね。
上映は終わっちゃったから、もしも配信とかに上がったら
お子さんと一緒に観れる良作です。
で、月に8回ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては
面白かったですね。
競技獅子舞の世界が躍動感一杯に描かれて
本当にそのような競技があるそうで
実物を観てみたいと思いました。
(多分、YouTubeには画像があると思います。)
物語は経済的に楽ではないために、
町の番長的な上級生にバカにされて、
心まで萎縮してしまっている主人公に勇気を与えるのが、
競技獅子舞で全国優勝するレベルの少女。
ところがその少女は女性であるが故に
大好きな競技獅子舞を続けることができず
一般社会人として生きて行かなければならない。
都会と田舎の経済格差と男女格差と言う
どこの国でも問題になってるこ事象を巧みに織り込んで
誰が観ても楽しいスポ根ものに昇華しています。
スポ根アニメと言っても一昔前の根性モノでは無く、
勝ち方のロジックとコメディー要素も盛り込まれて
嫌にな気持ちにはならないですね。
それと特筆すべきは現在中国のアニメ技術の進歩!
私は技術的な事は疎いのですが
今作の獅子舞の被り物!
獅子なのでフワフワとした毛並みが見事に再現されていて
すごいな〜〜
日本は「クールジャパン」とか言って(例えが古い)
数多のクリエーターの成果だけを良いとこ取りしてる場合じゃねえ!!
もっと現場にお金を入れて、文化を育てるないと
すぐに抜かされるぞ!!
夏休みにお勧めです!
現在中国の最高クオリティCG
中国は国をあげてコンテンツビジネスに力を入れてる
。パクリと呼ばれた汚名を返上し、自国オリジナルコンテンツのクオリティUP、そして世界市場で通用できる物を作るためにハリウッドへの投資、人的交流など積極的にやってきた。
ハリウッドも税的優遇措置があるカナダや、人件費の安い中国、インドなんかにCGを発注しまくっていた。
中国インドへの発注は地球の裏側なんで実質24時間作業できるスケジュールメリットがある。始めた頃は使い物にならなかったらしいが今はもうそれは過去の話であることは本作を見ればわかる。
この手の3DCGでは日本を遥かにこえている。
髪の毛の表現、質感、動き、カメラワークどれも素晴らしく、さらに絵画、映画ぽくするために粒子感をかなり足してるように見えた。
話は貧しい少年達が勝ち上がっていくシンプルな話だが脚本も凄くよく出来ている。国内の貧しい人達への過剰ともいえるエール送りが(エンドテーマ)多少プロパガンダ感を感じなくもないが、、どこの国でも貧富の差はひらきまくりでサクセスストーリーは受けるのだ。
アメリカと中国の仲が最近暗転しハリウッドも中国離れが始まっているが、もはや中国CGに関してはアメリカハリウッドの懐を借りる必要がなくなった事をこの映画は証明している。
中国3DCGアニメの技術力とストーリーテリングの見事さを強く実感できる一作
中国の地方都市に住むチュンが、憧れの獅子舞の舞い手になるために仲間とともに努力するお話、という雑な要約でもあながち外れていないほどに、本作は少年の成長譚としては典型的かつ簡潔です。
中国の留守児童問題と絡めた中盤以降の展開では、彼の行く末に心が痛むものの、基本的に観客は、チュンが獅子舞の踊り手としてどのように成長するのかを見守り、楽しむことに集中できます。
本作のもう一つの主人公である獅子舞は、その面を覆う毛の描写がとても繊細かつ美しく、まるで一本一本書き込んでいったかのようです。この獅子の面を見るだけでも、劇場で鑑賞する意義は十分すぎるほどにあると思います。
日本では近年、『白蛇:縁起』(2019)が公開されたように、中国発の3DCGアニメーションを鑑賞する機会が増えていますが、それら数本を鑑賞するだけでも、中国のアーティストの技術が極めて高いレベルに達している事が実感できます(『白蛇』は本作と比べるとちょっと大人向きの内容だったけど)。また内容的には典型的な少年成長譚なのに、退屈を感じる暇を与えないシナリオの巧みさからして、物語の構築に当たって古今東西の作品を深く研究している事は明らかです。
また驚くべきは、制作にあたって当局の検閲を受けているはずなのですが、それでも中盤の展開の重要な要素として、留守児童という現代中国の抱える問題を作品に入れ込む事ができたという事です。
日本とはおよそ異なった中国の獅子舞ですが、演武とも格闘技ともつかないような動き、アスレチックのような試合会場の造作は、さすがに映像的な誇張が含まれていると思っていたのですが、現実の獅子舞も結構本作のようにアクロバティックであることを知って、それも驚きました!
中国の田舎の少年らが、初めはひ弱だったものの、獅子舞バトルで頑張り...
中華青年成長物語
中国の獅子舞。
あの獅子頭は知ったるも、それ以上でも以下でもなかった。
本編のような競技があるのかどうかは定かでないが
(おそらく劇中用のものかと思う 追記:あった! YouTubeで探せば、まったくホラでない映像がわんさか出てくる!)
少なくとも魅力を感じたし、がぜん興味は沸いた。海外に輸出する作品として、それだけでも本編、十分役目は果たせていると思えてならない。
以上に、キャラクターの造詣もさることながら、物語がとにかく良かった。
コメディー全開の前半から、シビアな人間ドラマへ移行してゆく後半。
通して本当に内面から凛々しく成長してゆく主人公はリアルで生々しい。
前半とのギャップに、少しゾッするほどだ。
またラストの見せ方が痺れるほどにカッコいい。
こうもドタバタ喜劇をはさみつつ、どうしてこれほどまで大人な締めくくりがぴたっとハマるのか。思わずにおれなかった。
それもこれもモラハラ、パワハラ、あり得ない。
格差、親ガチャ、と一蹴しておわるようでは成り立たない作品だからで、
ありきと現実を見つめた上で、ならどう立ち向かってゆくのか。
込めたメッセージがキモなのだろうと感じる。
キラキラ量産の日本からは出てこないような骨太さに感服した。
ジブリやら日本のアニメに、ディズニーアニメ、ハリウッド映画など、色々なエッセンスが中国色でマッシュアップされている所も見どころ。
赤を中心とした色の使い方も、洗練されていてよかった。
傑作です
劇場鑑賞
ずっと観たかった「雄獅少年」、やっと行く事が出来ました。
OPの水墨画から一転、CGの世界になるのが印象深い入り方。
そのCGは色使いがとても美しく、見た事のない深みのある色調でした。
動きはピクサーよりなのですが、表情がとても豊かでこちらもオリジナリティを感じましたね。
特出して獅子舞が凄い。その動き、そのテクスチャーが素晴らしいんですよ。
特に獅子頭内側からの視点、当然そんなの見た事無いので実に興味深かかったです。
物語は子猫のような少年が逞しい獅子へと駆け上る、その成長を描いたもの。
「ベストキッド」みたいで王道といえば王道なのですが、その描き方がすごい丁寧なんですね。
それと中国における獅子舞というのをちゃんと知らなかったので、それも凄い新鮮でした。
競技大会自体も知らなかったのですが、生活に根付いていてすごく大事にされているんですね。
そんな獅子舞を中心とした、努力と根性と友情と、ほんの少しの恋心。
それだけでなく、格差に貧困というシリアスな部分も入れ込んでいるから、より深みがあったのでしょう。
そんな中で何とか辿り着いた大会です。
こんなの胸が高まらない訳がありません。
クライマックスの太鼓が重るところなんて、そりゃ涙も出ますよ。
その大会の最後も、最高な締めくくりでした。
ディズニーでもジャパンアニメーションでもない、中国独自のアニメーションを目にした気がしました。
これは本当に劇場に観に行けて良かった、傑作です。
カラテ・キッドです
中国映画、恐るべし。
中国の国家に対するイメージは最悪だが、
映画に関しては最大級の評価を抱いていた。
ブルースリー、ジャッキーチェンのアクション。
チャンイーモウの芸術、チャウシンチーのエンタメ。
そして今作は3DCGアニメで中国映画の実力を世界に知らしめた。
過酷な社会の中で虫けらの様に踏みつけられる。
しかし主人公はその不条理を
社会のせいにしない。
他人のせいにしない。
何事かを成し遂げることで自分の存在意義を証明しようとする。
自己実現と言う奇跡は復讐からは生まれない。
”胸アツ”って、この作品のために生まれた言葉かもしれない
中国の伝統芸能である獅子舞の演者を夢見る少年たちの姿を描いた、中国発の長編アニメーション「ライオン少年」。広東省の田舎の貧しい家で祖父と暮らす主人公のチュンは、広州に出稼ぎに行っている両親と長い間会えないでいる。自分と同じ名前を持つ獅子舞の演者から獅子頭を譲り受けたことをきっかけに興味を持ち、そして広州で開かれる獅子舞競技大会に出れば両親と再会できると考えたチュンは、かつて村一番の演者だったという干物屋の店主を師匠として、獅子舞の演者を目指し成長していく話。いってみれば、王道カンフー映画の獅子舞バージョンだ。
新宿バルト9で吹替版、池袋グランドシネマサンシャインで字幕版の計2回鑑賞。
いや、もう、最高でした!今年一番感動しました…!
映像の美しさと躍動感、王道だけど確かな感動があるストーリー、魅力的なキャラクターと、全編を通して語りつくせない魅力が詰まりまくった作品でした。
特に印象に残ったポイントを2つあげてみるなら、
1つ目は、広州での少年チュンの屋上練習シーン。冒頭の獅子舞説明描写から惹き込まれる往年のカンフー映画を思わせる演出が散りばめられた本作で、カンフー映画のお約束である「屋上での練習」もしっかり描かれていましたが、こんなにも不憫で切なく、けれども自由で力強い屋上練習シーンは、見たことがありませんでした。仕事を幾つも掛け持ちして練習する時間もないのだろうと、チュンの仲間たちも私たち観客も思っていたところに、独りで練習を続けていたことが明らかになるこの場面の締めくくり、ビルの隙間から昇ってくる朝日が主人公を照らし、陽の光が獅子頭の装飾に当たってカー!と輝きを放つシーンは、ハッと息をのんだ直後に身体が熱くなり落涙した瞬間でした・・・。
この映画の最後の、獅子舞競技大会で擎天柱に向かって飛び、ホンモノの獅子になるシーンと並ぶ名場面だったと思います。美しかった…。
2つ目は、チェンの獅子舞の表現における動きと色合い。チュンの獅子舞の演技は、彼の身体の華奢さもありますが、どこか他のキャラクターとは違う流れるようなしなやかさを携えているように見えました。また、彼の被る獅子頭の鮮やかな赤色は、一般的な赤色が持つ強さや攻撃性というよりも、コーラルよりの朱色で、それはこの作品の主要なモチーフである「木綿(きわた)」の花の色にも重ねているのだと思うのですが、(もしかしらたら単純に伝統的な獅子頭の着色のかもしれませんが)フレッシュさや胸の内に秘める情熱を感じさせる色合いでした。これら獅子舞の表現の中に、同じ名前を持つヒロインのチュンが、女性であるという理由で大会に出場できず、その意思を託された主人公が、彼女の想いを受け取って……と言うよりも、2人のジェンダーが融合した存在感をあらわしているように見てとれ、少年たちと師匠のスポ根に留まらない、アップデートされた表現が、獅子頭のデザインや獅子舞のムーブメントに踏襲されていると感じました。中国アニメ恐るべし…
まるで実写を見ているかのような、ホンモノの質感で描く獅子舞のCGクオリティは圧巻だったし、臨場感あふれる音響効果も見事なものでした。獅子舞がまばたきするときの「バサッバサッ」ていう効果音も大好物でした…!
本当に素晴らしい作品なので、もっと多くの人に観てもらって上映館が増えると嬉しい。
胸アツって、この作品のために生まれた言葉かもしれない…。
リアルなドラマと躍動感のある獅子舞を見るにつけ、なぜCGなのかという疑問が湧いてくる
努力と師弟の絆でどん底から這い上がろうとする「スポ根」ものとして、十分に楽しめる。
ただ、それ以上に印象に残るのは、夢を追いかけるだけでは食べていけないという冷徹な現実である。
生活のために夢を諦めて生きてきた師匠や、予選を勝ち上がったものの家庭の事情で本選出場を諦める主人公の境遇には、身につまされるものがある。
それだけに、師匠の背中を押す奥さんの姿には胸が熱くなるし、仲間のために戦いに復帰する主人公の姿に心を揺さぶられるのである。
奇跡は簡単には起こらないが、それに挑んだ証は残されるという結末も秀逸で、「獅子の心」を持って挑戦し続けることの大切さを実感することができた。
その一方で、SFでもファンタジーでもなく、極めて現実的なこの物語を、なぜCGアニメで作ったのかという疑問も残る。
確かに、流麗で美しい映像や、獅子舞の場面の迫力と躍動感はCGならではだと思えるのだが、東洋人の特徴を強調したようなキャラクターは妙に生々しく、これなら実際の俳優が演じた方が良かったのではないかとさえ思える。
リアリティーに溢れたCGを見るにつけ、逆に、実写で、本物の獅子舞の妙技を見たくなってしまった。
「負け犬」は誰が決めるのか
綺麗なアニメーションだな、と思って
ちょうどレイトショーをやっていたので鑑賞。
獅子舞にも中国にも詳しくないですが、
ストーリーも社会背景も獅子舞のことも
分かりやすくてよかったです。
最後もスッキリ終わるし、王道といえば王道なのかも。
主人公のチュンは、幼い頃に両親とみた獅子舞に
きっとこっそり憧れてもいて、
でもそれはいわゆる「勝ち組」や「一軍」たちが
やる(できる)ことだと諦めていたけど、
同じ名前の女の子に助けられ、一緒に逃げて、
獅子頭をもらって、友達を誘って、
友達の友達がさらに仲間になって、師匠ができて…
それこそ獅子舞が足場の上を
くるくる移動するように、いいことも悪いことも
テンポよく進むので、飽きないし
話がスッと入ってきました。
主人公のチュンは、ひょろくて気弱だけど、
「あいつらが羨ましい」と素直に言える。
「僕はもう大人だよ、心配しないで」と
遠く離れた両親に気丈に振る舞える。
「早くじゃなくて、無事に帰ってきてと
ちゃんと願えばよかった」と
神を恨まず、自分の非を嘆く。
可愛い女の子に釣られてやり始めたマオは、
もう女の子のことなんか忘れて
ずっと友達と師匠の心配してた。
川の場面ではいつも助けられてたワン公は、
最後の足場が崩れかけたとき、すぐ水に入って
柱を支えにいってて、友達を助けようとしてた。
踏み躙られても立ち上がる。
嘘みたいな地図も一旦信じて行ってみる。
教えを乞う前にまず配達を手伝う。
獅子になりたいと願い、闘う。
あぁ、あんたらは負け犬なんかじゃないよ、と
何度も思って何度も泣いた。
妻と生活のために獅子舞を諦めたチアン師匠と
夫の身体のために諦めさせた妻アジェン。
師匠よ「後悔してないよ」はきっと本当だけど、
そんな夫に対して「私が後悔してる!」って
ずっと言いたかったんだろうな。
「子どもいないけど、
あの子達がうちの子だね」
両親が出稼ぎに行くような地域で
こんなふうに思ってくれる大人、
なかなかいないよな。あったけぇな。
両親の代わりに出稼ぎに行ったチュンが
チュンと再開するところ。
かたや床に寝かされて、毎日肉体労働で、
雨の中傘もさせずに走り回ってる。
かたやきれいな服を着て、傘をさして、
ピカピカの車を運転してる。
こういう細かい対比もあって、
映画館でもう一回観たくなりました。
もっと早く観ればよかった!
邦題で損している
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