「不死身の杉元と尾形上等兵の死闘にしびれた」ゴールデンカムイ 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)
不死身の杉元と尾形上等兵の死闘にしびれた
昨年のゴジラマイナスワンに続き、今年は正月から「ゴールデンカムイ」を公開した東宝。快進撃が止まりません。ゴールデンカムイは、世界で勝負できる作品を世に送り出していく東宝の覚悟が伝わってくる熱い作品でした。ゴジラマイナスワンとゴールデンカムイは、映画館で観ておいた方がいい!と思いました。
「ゴールデンカムイ」はまず、原作の漫画が最高に面白い。
登場人物も個性的で、アイヌ民族や日露戦争の復員兵、明治政府の軍人、網走監獄の囚人、死んだはずの土方歳三という強烈なキャラクター揃いで、ストーリーも強奪されたアイヌの伝説の埋蔵金を捜すための闘いが繰り広げられるというダイナミックなストーリーです。
日露戦争の復員兵で「不死身の杉元」(山崎賢人)さんが主役で、マンガに忠実に日露戦争の二百三高地の激闘から始まります。最初からいきなりクライマックスな戦争シーンで、二百三高地の激闘の描き方が秀逸で、圧倒されました。
日露戦争後は、復員兵となった杉元が北海道に渡り、北海道で砂金彫りを初めて、一攫千金を狙ううちに、とんでもない悪党たちとの闘いが始まってしまうという話なのですが、「金」をめぐって、明治政府や網走監獄の悪党たちとの争いに巻き込まれていく…アイヌの少女アシリバとの出会いや、杉元と尾形上等兵(真栄田郷敦さん)と不死身の杉元の格闘シーンでは、激しい格闘シーンが展開されてました。前田さんは恋愛ドラマによく登場されていて、女性ファンも多いと思いますが、やっぱり千葉真一Jr、クールで不気味なくらい強くて、本当にゴールデンカムイの世界から抜け出てきた感じがしました。
厳冬の北海道の美しい自然、雪に覆われた雪原や雪山や街や村が神話的で美しくて、アイヌの村の生活も映像化されたものを初めて見ました。少女アシリパを演じる山田杏奈さんが可愛いかったです。とはいえ狩猟民族だから弓を持って熊と闘ったり、たくましい! アイヌ民族の暮らしをかいま見ることが出来る貴重な作品で、リス汁美味しそうだったなあ。
舘ひろしさん演じる土方歳三もシブいし、玉木宏さん演じる鶴見中尉も強烈にクレイジーな明治軍人で、不気味な軍人といえば、「地獄の黙示録」のカーツ大佐が思い浮かびますが、鶴見中尉はかなりヤバい。面白い!
この映画、続編を作る前提で作られていて、自作あたりから土方歳三を中心とした反明治政府の輩が暴れていくようになるんでしょうね。
漫画に忠実で、マンガではできない映画ならではのダイナミックな映像表現が追加されて、マンガの世界を最大限にリアルに神話的に魅せていました。
昨日はこの映画を観てる時に、「セクシー田中さん」の原作者さんの自殺のニュースが入って、マンガという創作作品をリスペクトしたアニメ化、ドラマ化、映画化のむずかしさについて、この「ゴールデンカムイ」はマンガ原作で、原作をリスペクトしつつ、映像表現でマンガの世界をさらに豊かに広げてみせた、マンガ業界と映画業界のコラボとしては円満かつ、映画としての作品のグレードの高い維持にも成功した稀有な作品ではないかと思います。