劇場公開日 2024年1月19日

「杉元とアシリパの「気の置けない間柄」。」ゴールデンカムイ ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0杉元とアシリパの「気の置けない間柄」。

2024年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アイヌの埋蔵金を狙う宝探しがテーマであるが、まだ何も明らかになっていない。本当に埋蔵金はあるのか、刺青を集めると本当に隠し場所が分かるのか、何も手掛かりのない状況でフライイング気味に戦いを始めてしまったような感じである。
ただ、埋蔵金を狙う強い動機みたいのものは、なんとなく分かるように描かれていて物語のしっかりした柱になっている。それぞれの戦う目的を自分なりに解釈すると、鶴見中尉の第七師団は、日露戦争の無謀な作戦で命を失った多数の兵士に報いるために、北海道を征服して理想の国を作りたいと思っている。囚人の旗頭土方は、江戸時代のサムライの生き残りのような男で、武力で北海道を手に入れたいと思っている。そのためには、軍資金としてアイヌの埋蔵金がなくてはならないようだ。二人のリーダー鶴見中尉と土方が、あまりにも常軌を逸しているので、周囲のクセの強い連中も自然に受け入れられるようだ。
異常な集団の戦いに巻き込まれていく杉元とアシリパは、彼らとは違ってとても人間的だ。二百三高地の戦いで鬼神とも恐れられた杉元と、大自然の中で一人で生きるアイヌの少女アシリパは不思議な取り合わせではあるが、まさに「気の置けない間柄」になっている。二人とも壮絶な体験だったり、近しい者との別れを経て、孤独に耐える強い心を持っている。お互い、自分に足りないものを相手に求めているような感じがする。二人のやり取りは、時に緊迫感があり、時にユーモラスで飽きさせない。
日本が近代国家になる過程で犠牲にしてきたことを、この時代、この戦いで見事に再現しているように思われる。まだ序章に過ぎないが、どんな展開になっていくのか続きが楽しみである。

ガバチョ