「コメディ・パートを、もう少しどうにかできなかったものか?」ゴールデンカムイ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディ・パートを、もう少しどうにかできなかったものか?
「キングダム」のような、たたみ掛けるようなアクションのつるべ打ちを期待したが、どうにもモタモタとテンポが悪く、最後まで話の流れに乗り切れなかった。
最大の要因は、度々挿入される、食事にまつわる杉元とアシリパのユル〜い会話で、特に、「味噌」に関するやり取りは、最後まで引っ張る割には面白くもなんともなく、見ていてシラケてしまった。
杉元と白石が川に落ちて寒がるシーンも同様で、コメディ・パートが、物語に緩急をつけるアクセントになっていないどころか、せっかく盛り上がりかけた物語にブレーキをかける役割りしか果たしていないのは、残念としか言いようがない。
肝心のアクションは、それなりに見応えがあるのだが、例えば、杉元は2頭の熊と格闘してもほとんどダメージを受けないのに、7師団の兵士の方は、たった1頭に3人が殺されてしまうなど、ご都合主義的な描写が気になってしまう。杉元には、優れた再生能力があるのかもしれないが、そもそも傷を負わないというのはおかしいのではないか?
最大の見せ場である、馬が引くソリの上での活劇にしても、「ソリから振り落とされてはならない」という暗黙のルールが実感できないため、ハラハラドキドキのスリルが感じられないし、逃げたいのなら早くソリから降りればいいのにとさえ思ってしまう。
アシリパが科す「殺すな」という条件も、せっかくのアクションを不完全燃焼にしてしまっているし、結局、杉元が人を殺してもウヤムヤになってしまうので、何のための条件だったのかという疑問が残る。
当然のことながら、続編が作られるのだろうが、1本の映画として見るならば、見せ場の一つとして、土方歳三の一派と杉元たちとの絡みがあってもよかったのではないかとも思う。
眞栄田郷敦や大谷亮平などの登場シーンも物足りなく、次回作以降に活躍の場が用意されているのかもしれないが、それにしてもキャラクターに魅力が感じられないし、どうしても役者の「無駄遣い」に思えてしまう。
全体としては、期待外れの感は否めないのだが、それでも、アシリパを演じた山田杏奈の存在感だけは、一つの収穫と言えるだろうか・・・