劇場公開日 2024年1月19日

「原作に忠実な大傑作」ゴールデンカムイ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0原作に忠実な大傑作

2024年1月19日
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鑑賞方法:映画館

野田サトルの原作コミックスは全 31 巻で完結しているが、テレビアニメはまだシーズン4に入ったところという長編漫画の実写化である。テレビアニメをシーズン1だけ見た状態で見に行ったが、原作を全く知らない人でも十分に楽しめる作りになっていた。

まず、原作に非常に忠実な作りに驚いた。原作を改変して独自性を出そうとする脚本家や監督が却って作品を台無しにしてしまう例は数え切れず、スティーヴン・キング原作の映画はそうした無惨な討ち死に作ばかりと言って良いが、原作に忠実に作った「ショーシャンクの空に」や「グリーンマイル」などは数少ない大傑作である。本作もそれに倣っているように思える。

原作が教えてくれるアイヌの文化は非常に深いもので、反日政治家がコスプレしているようなエセアイヌとは次元が違うものである。原作者の野田が連載前に2年をかけてしっかり調査したというだけあって、アイヌ民族博物館の職員からは「文献や資料をよく調べている。文様も細かく描写されており、見応えがある」「全国の若い世代にアイヌ文化に興味を持たせるきっかけをつくったという点で貢献度は非常に大きい」と高く評価されている。

実写化にあたっての監督のこだわりはリアリティのようで、映画はまず主人公の杉本が日露戦争の 203 高地で鬼神のような活躍を見せるところから始まるのだが、これまで見てきたいかなる 203 高地の映像化作品よりリアリティは上だった。このまま日露戦争の終わりまで見せて欲しいと思うほどで、いつかそのような作品も是非作って欲しいと心から思った。

128 分が3時間にも感じられたほど内容が詰まっていて、全編飽きる暇がないほど引き込まれた。北海道の冬の厳しさや、ヒグマをはじめとする野生動物の描写にも抜かりはなく、容赦ない自然の怖さを見事に描いていたが、これでもコミックスよりはかなりおとなしめの表現だったらしい。ヒグマに限らず、熊は人間を襲うときに目が怖いらしく、顔めがけて一撃を喰らわせるというのもしっかり描かれていた。

キャスティングもまた見事で、贅沢の極みというべきである。杉本役の山崎賢人は、「キングダム」に続いてここでも当たり役を掴んだと思った。アシリパ役の山田杏奈は、23 歳とは思えないほどの童顔がこの役には見事にマッチしていた。額に異物を埋め込んだ異様な面相の勝矢役は、何と「HERO」で柔和なガードマン役だった牛山さんではないか。土方役の舘ひろしもさることながら、なんと言っても異彩を放っていたのは鶴見役の玉木宏である。井浦新がクレジットされていたのに出演シーンが思い当たらないと思っていたら、エンド・クレジットの後のおまけ映像に出て来てビックリした。

音楽担当のやまだ豊は「キングダム」シリーズでお馴染みの人で、本作でもストーリーに寄り添った見事な曲を付けていた。ヒグマや狼の CG に時折作り物めいたところがあったのが惜しまれたが、鑑賞を阻害するほど酷くはなかった。今から続編が楽しみでならない。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4=100 点。

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アラカン