「苦闘の先の、光を目指して。」希望と絶望 その涙を誰も知らない しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
苦闘の先の、光を目指して。
※宮田愛萌(まなもさん)推し(寄りの箱推し)
日向坂46ドキュメンタリー映画第2作。
"第6回 音で楽しむ!なんばパークスシネマ映画祭"
ライブ音響上映で鑑賞。
センセーショナルなタイトルが発表された時、果たしてどんな内容なのかと心臓がバクバクしました。「希望」は分かりますが、「絶望」と云うワードは私が知っている限り、日向坂46のイメージから大分かけ離れていたからです。
私たちの前で見せてくれる全力パフォーマンスや笑顔の裏には、その何倍もの量の涙が流されたであろうことは想像出来るし、彼女たちに限らず、他のアイドルさんにもあるだろうし、言ってしまえばどんな職業にも立場にも表と裏はある…
だがやはり、その「裏」の部分をまざまざと見せつけられると心はキュッと痛むし、あの時そんな心境でいたのかと云うことを知れば、どうしたって涙が出てしまうのでした。
コロナ禍で思うような活動が出来ない中、メンバーたちはそれぞれ先のことを模索しながら歩みを進めていこうとするも、悩み、傷つき、次第に消耗していく様子が生々しく捉えられていて、時折思わず目を背けたくなりました。まなもさんが休業したり、ケヤフェスのリハーサルや公演後ステージ裏でぐったり倒れているシーンはとても観ていて苦しかった…
個人的に特筆したいのは、加藤史帆(かとし)。
「君しか勝たん」のヒット祈願で行われたチアリーディングは、「日向坂で会いましょう」でのドキュメントや生配信の本番パフォーマンスを観ていました。その中で、かとしがとても辛そうにしていたのが今でも印象に残っています。
朝の情報番組にもレギュラー出演していたし、深夜のラジオや曲の宣伝のための多くのバラエティや歌番組への出演、加えて過酷なチアの練習と、「これって明らかにオーバーワークなんじゃないか?」と思うこと頻りでした。
ひらかなけやき時代を思えばこそ、仕事をいただけている現状を「ありがたい」「充実している」と捉える反面、仕事をセーブしたら次が来なくなるのではないかと云う不安から心と体の均衡が不安定になり、インタビュー中に号泣する場面も…
チアの本番を終えた後、メンバーやスタッフに抱えられてセット裏に下がり、苦悶の表情で涙を流す姿は、アイドルと云う職業の厳しさだけでなく、人が「頑張る」ことの限界を垣間見たようで、なんとも言えない複雑な感情に…
あれだけライブを大事に考えていたメンバーたちが「心から楽しめていない」と語るほど、心も体も疲弊してしまっている現実に驚愕したのも束の間、時間は容赦無く過ぎ、苦闘に苦闘を重ね、心を擦り減らしていくような日々は、約束の彼の地での3周年記念ライブへ繋がっていきました。
あれだけ疲弊していたにも関わらず、一時は理想と現実の乖離によって空中分解しかけていたメンバーたちが、ひとつの目標に向かい、様々な想いを胸に秘めながらも再びひとつになろうとする過程に思わず胸が熱くなりました。
念願の東京ドームでのライブは、2日間ともオンライン視聴しました。復帰した小坂菜緒やメンバーたちの万感の想いがこもったパフォーマンス、胸アツの演出やセットリストに感動し通しで、めちゃくちゃいいライブでした。
その裏で、卒業を決意していた渡邉美穂(公式にはライブ後に発表)の、22人全員が揃ったライブにかける想いが並外れていたからこそ、それが不可能となってしまった時の嗚咽を知り、「さぞ悔しかったろうな…」と思わず涙しました。
かつて「3年目のデビュー」のレビューを投稿した際、こんなことを書きました。「これから先、どんな試練が待ち受けていようとも、彼女たちならゼッタイに大丈夫。」と…
そう確信していたことが揺らぎそうになる場面が多くありました。出口の見えない苦闘の先に微かな希望を掴んだ彼女たちを知った今では、その揺らぎの幅は小さくなったものの、不安が全く無いと言えば嘘になるし、未だアイドルとしてのジレンマを抱えたままであることもまた事実。ハッピーエンド風でしたが、決して暗雲が晴れたわけではない…
東京ドームでのライブと云う夢を叶えた今、次は何を目標にし、どこへ向かうのか?―正念場を迎えているな、と…
我々は、彼女たちを信じることしか出来ない。
どんな暗雲の上にも必ず光がある。その光になれるのは、ファンであるおひさましかいないのではないかと思いました。
今後4期生を迎え、さらなる進化を遂げていくであろう日向坂46。その歩みをこれからも応援したいと思いました。
[余談1]
炎天下の野外ライブでも、30℃を超える気温の中全力のパフォーマンスを見せ、彼女たち自身は出せる力を全てを出し切ったと思っていても、運営からは「物足りない」とか「まだまだ行けるはず」だとか、苦言を呈されていました。
期待されているからこその言葉とは云え、なんだか配慮が足りない気がしました。殊に最近の夏の暑さは気力や体力で乗り越えられるレベルを越えているように思えるし、「かなり酷なことを言ってるよなぁ…」と思いました。
運営の求めるものと、自分たちの全力との差は、どこかで折り合いをつけて、お互いに高みを目指していくような良好さでないといつか崩壊してしまうのでは…?
エンターテインメントを提供される側としても、心から楽しんだライブを裏で「ダメだった」と言われるのは、お金を払って観ているファンの感情をも否定しているように思えたし、この場面だけは流して欲しく無かったかも…
反対にお金を取っているからこそ、いい加減なライブをつくり上げるわけにはいかないと云うのも理解出来ます。ただ、彼女たちあっての日向坂46だし、ひとりひとりの人間である以上、限界を越えたら壊れていくだけなので、しっかりとした運営体制は非常に大事なのではないかな、と思いました。
[余談2]
ライブ音響上映で鑑賞して―
ウーハーが効きまくった環境が最高でした。ライブのシーンでその効果が最大限に発揮され、配信をテレビやスマホ画面で観ていた時とは比べ物にならない迫力と臨場感を味わうことが出来、この上映で観て良かったと心の底から思いました。