「情景ごと後を引く危ういもの同士のとりあわせ」別れる決心 ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
情景ごと後を引く危ういもの同士のとりあわせ
本作はとにかく観ていてじれったくてしょうがない。
とっくのとうに取り調べの刑事と容疑者の関係から、男と女の精神状態になっているのに。
どこかで男として見られたい、女として見られたいと思うから、お互いの立場を忘れてしまう。
そこを奥手を装って、奇妙な均衡を保とうとするから、いらつくのである。
言ってしまえば、己の職務を忘れた刑事と夫殺しの容疑をのらりくらりとかわす、容疑者にすぎないのに。
でも、パク・チャヌクはそこを執拗に描くのである。
執着か愛着か、愛情か恋愛か、その微妙な揺れを描いてやまないのである。
そこに人間の本質が見えてくるかのように。
男を演じたパク・へイルは、「殺人の追憶」で演じた都会的な刑事がそのまま年取ったような危うさ。
女を演じたタン・ウェイは、「ラスト・コーション」の妖艶な女スパイさながらに、魔性の女の危うさ。
危ういもの同士のとりあわせは、いらつきとじれったさのなか、情景ごと後を引く。
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