劇場公開日 2023年2月17日

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「アイディアに貫かれた緻密な映像設計が、白昼夢のごときストーリーを奏でる」別れる決心 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アイディアに貫かれた緻密な映像設計が、白昼夢のごときストーリーを奏でる

2023年2月26日
PCから投稿

「パク・チャヌクといえばバイオレンス&ビザール」という僕のこれまでの低レベルな認識を、本作ははるか雲の上をゆく作家性と芸術性とでものの見事に覆してしまった。この映画には驚くべきアイディアで貫かれた映像設計があり、例えば取調室のカメラワークであったり、双眼鏡で覗いた先に自分の意識が入り込むくだりなど、パク・チャヌク流のギミックを感情表現の軸としながら、一つ不可思議なラブストーリーがおぼろげに形をなしていく。登場人物たちは互いの心を読み合いつつ、なかなか本心を語らないが、彼らの駆使するディバイスはいつも正直過ぎるほど正直だ。しかし一周も二周も回って、やっぱり真相というものは人間の内部にこそ刻まれているのかも。血は流れない。バイオレンスもない。だが時に暴力すぎるほど我々を波で洗い、白昼夢のように茫然とした気持ちにもさせる。ヒッチコックの『めまい』を彷彿とさせる斬新で儚いミステリーがそこにはある。

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牛津厚信