「大きな見せ場ではなく、巧みに配置した仕掛けで物語を引っ張っていく牽引力がさすがな一作」別れる決心 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
大きな見せ場ではなく、巧みに配置した仕掛けで物語を引っ張っていく牽引力がさすがな一作
日本では『オールド・ボーイ』(2004)の実写版監督としても知られているパク・チャノクですが、近作の『お嬢さん』(2016)のインパクトもすごく、先の読めないストーリーを紡ぎ出す希有な才能を持っていることを証明しました。
そんなチャノク監督の最新作なので、一見地味なタイトルや予告編映像にも、どこか「油断のならなさ」が漂っていました。全体的な物語としては予告編が示唆する方向性にある程度沿っていますし、主人公ヘジュン(パク・ヘイル)は終始、表情の冴えない地味な中年男性。さらにいくつかの場面を除いてはショッキングな映像も控えめです。
それにもかかわらず、全編にわたって意表の付く展開やとっさには意味の分からない要素が飛び込んでくるので、微妙な緊張感が常に持続します。本作はG指定なので、『お嬢さん』ほどのとんでもない展開にはさすがになりませんが、この引っ張り方は見事。
パク・ヘイルの、穏やかだがやはりどこか壊れている刑事の演技はもちろん良いけど、やはりソン・ソレ(タン・ウェイ)の表情、演技なくしては本作は半ば成立していなかったのでは、と思わせるほど役どころにみごとにはまっています。
スマートフォン越しの視線、真下に見下ろす俯瞰ショットなど、時折見せる意表を突いた視点の置き方も非常に面白く、映像的にも見所の多い作品です。
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