「逆転島で起きたこと」逆転のトライアングル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
逆転島で起きたこと
学校や会社は社会の縮図とよく揶揄される。
世の中皆平等と言っときながら、悲しいかな人間って必ずピラミッド型になる。
それを豪華クルーズ船の中に置き換えて。
ピラミッド上部はイケメンモデルやインフルエンサーの美人恋人や裕福な乗客たち。
中部は船長や客室乗務員たち。
下部は料理や清掃などのスタッフたち。
これには国籍や人種も絡む。
上部はアメリカ人やイギリス人やロシア人ら世界の大国。中部は専ら白人。下部は黒人や有色人種が多い。
結局世界ってこんな感じ。覆る事はない。
が、もし、ある状況に置かれた時、このヒエラルキーが“転覆”したら…?
皮肉や風刺をたっぷり乗せて。
イケメン&美人カップルはたかだかレストランの支払いで言い合い。
“クソ”で大金持ちになったロシア人富豪。彼の妻が死んだ時、泣きながら亡骸を抱きつつ、身に付けていた宝飾品をちゃっかり取る。
穏やかそうなイギリス人老夫婦は、武器商人! 二人がある物で爆死するシーンは何ちゅー皮肉。
船長はまともに働きもせず飲んだくれ。白人客室乗務員たちは如何にしてチップを貰うか熱心。
そんな中、料理や清掃のスタッフたちはせっせせっせと仕事。
嵐で船がゆ~らゆら。豪華ディナーがとんでもねー場に。
揺れやアルコールやなまものに当たってゴージャスセレブたちはゲロゲロ祭り。
チップを期待した客室乗務員たちは空回り。
そんな中、清掃スタッフは汚物をせっせせっせと処理。
嵐に加え、海賊の襲撃。もはや漫画だ。
船は難波して生き残った面々は無人島へ漂着…。
言うまでもなくサバイバル能力など皆無のセレブたち。
魚も取れない。火も起こせない。出来るのは少ない飲食を恵んで貰ってボケ~ッと助けを待つ事だけ。
客室乗務員はこんな場でも仕切ろうとする。
そんな中驚くべき能力を見せたのが、トイレ清掃員の中年有色人女性。
魚も取れる。火も起こせる。類い稀なサバイバル能力を見せる。
よし、船の中同様コイツを働かせて…なんてのはここじゃ通用しない。
ここじゃ私がキャプテン。食べる物を餌にわざわざそれを言わす。
食べ物を恵んで貰う為、皆彼女に媚びる。
まるで犬に餌をやるように食べ物を投げ与えるトイレ清掃員。それにがっつくセレブ。
自分や女性たちは救命ボートで寝る。男どもは火の番。
それをすっぽかして見つけたスナック菓子をこっそり食べる。その姿が何と情けな…。無論バレて翌日は食事抜き。
女王のような力握るトイレ清掃員。まあ、分からんでもない。
魚を取ったのも私。火を起こしたのも私。私は何でも出来る。じゃあ、アンタたちは何が出来るの?
何にも出来ない役立たずども。働かざる者食うべからず。
でもどんどんどんどん独裁者になっていく。救命ボートで寝るのも最初は女たちだったのに、いつしか若いイケメンをお呼びに。
シュール過ぎるラスト。あのエレベーターは何…?
ここから助かって、またヒエラルキーの下部になるよりかは、ここで女王様として君臨していたい。
人はここまで醜態堕ちるのか。
遭難や漂流やサバイバル映画数あれど、絶対にこんな状況になりたくないトップレベル。
最初は退屈だったが、船の揺れが始まってから~無人島サバイバル辺りはそれなりに。
滑稽なハリス・ディキンソン。
美しい肢体を披露しつつ、癖ある役所のチャーリビ・ディーン。経歴調べたら、事故で脾臓摘出、感染症で急死とは…。合掌。
知名度あるキャストはウディ・ハレルソンくらいだが、一際存在感放つのはドリー・デ・レオン。
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に続き2作品連続でカンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたリューベン・オストルンド監督の目の付け所は奇才ならでは。
その『ザ・スクエア』よりかは面白く見れたと思う。
でも、本当に心底面白かった/良かったかと問われたら…。
作品は人間やヒエラルキーを風刺したテーマやメッセージこそ訴えているのかもしれないが、どうしてもゲロゲロゲロゲロやトイレ逆流の汚物シーンが干からびるほど脳裏にこびりつく。見ていてかなり辟易…。セレブの醜態を失笑するには充分だけど、あんなに胸糞悪く見せる必要あったのか…? 何だかかなり趣味が悪い。
意味はあるのかもしれないけど、はっきり言って中身なんてない。これで2時間半…。
それがカンヌ受賞やアカデミーノミネート。批評家や業界人や通な人たちはこんなのが好みなのか…?
こんなのに面白味を感じて、理解してこそ、真の映画マイスターなのだろう。
きっとお偉い批評家様たちが選ぶキネ旬でもBEST10入りは間違いないだろう。
『マリオ』や『サンドランド』や『キングダム』などに興奮&感動する私なんぞ、お偉い批評家様たちから見ればそれこそ失笑ものなのだろう。
そんな低能無知アホバカな私に映画を語る資格ナシ!
私の映画を見る目って…。何かガッカリする。
今日は凹んで寝よう…。