劇場公開日 2023年2月23日

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「Triangle of Sadnessは、ボトックスで直すことができる「眉間のしわ」を指す業界用語だそうで、ファッション業界とルッキズム、人間関係のパワーバランスとヒエラルキーの崩壊が圧巻。」逆転のトライアングル jollyjokerさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0Triangle of Sadnessは、ボトックスで直すことができる「眉間のしわ」を指す業界用語だそうで、ファッション業界とルッキズム、人間関係のパワーバランスとヒエラルキーの崩壊が圧巻。

2023年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これでもか!という社会風刺と社会批判が面白くあっという間の2時間強。それぞれのキャラクターが思い当たるのでそれを考えながら見るのも良い。

アル中の船長:国の長としての責任を放棄し自説だけを声高にするどこかの国の人

武器で財を得たセレブ:人を助け国のために尽くしていると自負するどこかの国の人

ロシアの財閥:共産主義を揶揄しながらもその頂点に君臨している誰か

当人に力はないのにセレブのパートナーというだけの女たち:そこら中にいる勘違いオンナ

一見忠実だが金と権力に屈する乗組員:世の中のほとんど人

トイレ清掃員:現状は単なるトイレ清掃員だが、ある局面で隠された能力を発揮する下剋上を狙う誰か

カールのボヤっと感と現代の若者像もうんうんと頷くのだ

嵐の船中での嘔吐シーンも躊躇なく表現しながら、接客係は表情さえ変えずテキパキと業務をこなすシーンとの対比も面白い。また、気まずさ・困惑を隠そうとしても隠しきれない人間たちの演出はリューベン・オストルンド監督の得意とするところで、今回も見事だ。

前半のファッション業界批判はやや冗長とも思われるが、落ち目の男性モデル・カールの存在が後半で生きてくるので良しとしよう。そして、人間もやはり食欲が一番で、それが満たされると快楽(性欲と権力)を手にするのだということもおかしいようで悲しいようで。

病気で言葉を発することができないキャラクターも、「言葉」というコミュニケーション手段しか認めない人々への痛烈な批判なのだろう。世界で起きている様々な問題を作品に映し込み問題提起する監督を今後も注視したい。

jollyjoker