「厳しい現実を突き付けられる」ヨーロッパ新世紀 TSアラヨットさんの映画レビュー(感想・評価)
厳しい現実を突き付けられる
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観て感動や興奮できる映画ではない。面白いとも言えない。なのに画面から目が離せず、最初から最後まで緊張感を強いられて疲れた。世界中で問題となっている経済格差や移民の問題を、ルーマニアという馴染みのない国を舞台にリアルに描いた作品。ルーマニアの映画は初めて観たが、登場人物は皆どこの国にもいるキャラで、感情移入しやすかった。
他所の国から来て働く者に対し、排除しようとする人たち。彼らの身内も他国に出稼ぎに行っており、立場は似た者同士なのに。つくづく人間は勝手な生き物だと思った。
クライマックスは文化センターでの住民たちの騒然たる論戦(?)で、台本があるとは思えないほど、リアルにまくし立て、ヘイトの醜さをこれでもかと延々見せつけ、単純に誰が悪いとかで片付けられない厳しい現実を突き付けられる。ある意味こんなにパワーのある映画はそうそうないと思う。
ただ、ラストのくだりだけは理解できなかった。なぜシーラはあんなに謝るのかわからない。クマのきぐるみみたいのが何なのかもわからない。口をきけなかった息子が取って付けたように父親に「愛してる」と言うのも無理やり感あり。そこまでのシーンがずっと見応えあったのに、最後がモヤモヤだらけで終わったのが残念でならない。
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