「少年時代の悲しさ」CLOSE クロース himabu117さんの映画レビュー(感想・評価)
少年時代の悲しさ
映画『クロース』だれでも、少年時代に似たような経験が、あるはず。でも。大人になるにつれて、そんな気持ちが、あったことさえ忘れてしまう。ただ、生きてゆくことだけに貪欲なだけでいいのだろうか。こんな少年時代のピュアな心のかけらでもあれば、人生は豊かに。
古今東西、いろんな物語があります。
少年愛、BLといった部類になるのでしょうか。
古くは、四世鶴屋南北作『桜姫東文章。』
青年僧と稚児さん(少年)との恋愛物語。
映画では、『寄宿舎 悲しみの天使』でしょうか。
カトリックの男性だけの寄宿舎での少年と、青年の恋物語。
今回の作品でもそうですが、少年愛の物語は、片方の死で終わるのが、通例。
ただ、恋愛の異型だと、決めつけるのは、いかがなものでしょう。
もともと人間は、同性愛。
それが、思春期を過ぎて、異性への関心が芽生えてくるもの。
あるいは、そのまま同性愛の道に進むもの。
それって、本人の意思では、変えられるものでもなく。
まあ、医療的にその性的関心の方向を変えることは、決して不可能ではないですが。
もともと、人間の性愛などというものは、曖昧なもの。
それをいや、同性愛だ、異性愛だ、やれLGBTだと問題視するほうが、おかしい。
不可思議なものとして、そのまま受け入れるのが、自然。
ただ、社会生活では、何かと不便と偏見をうけますから、問題として取り上げているだけのこと。
日本をみてください、江戸時代は、ごくごく当たり前のことと、してたんですよ。
ガラスの少年時代のあやうさ。
ピュアであるがために、その実直さが、悲しい結末に。
この作品だって、幼い頃から、兄弟のように育った同じ年の二人。
いつもいっしょ、やがて中学生に。
その仲を、同級生にからかわれて、一人が、相手を突き放す。
よくあるパターンなんですが。
異性間だったら、失恋ということになるのかな。
ただ、異性間だと同性のように、あそこまで距離は、近くないよね。
ただの失恋なんだけど。
そこが、少年愛のピュアなところ。
すべてを失って、絶望の縁に陥ってゆく。
なんで、そこまで、ただの失恋じゃない。
ひたむきさや、純粋さを捨て去った大人
極端な言い方ですが、生きてゆくとはそういう一面もある、ということ。
大人になるには、色んな面を脱ぎ捨てていかねばならない。
でないと、生きて行けないから。
ただ、多くの大人たちが、脱ぎ捨てなくていいものまで捨てて、大人になってゆくということ。
そんな、人たちには、この映画は、わからないだろうな。
悲しい結末だけど、人間として、捨ててはいけないものがある、ということ。
たとえ、かけらであっても持っていないと。
この映画は、そのことを言っている。
ただ、残された家族の悲しみが、どこまでも深く、救いがないのが、寂しい。