クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのレビュー・感想・評価
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進化は選択か
Crimes of the Future
もしもの話を忠実に描いている。痛覚を失った人間社会は、タトゥーを超え身体に傷痕を残すようになる。新しい倫理観のもと、一方でアート以外への興味を失っている
周囲の情熱は第一人者の想いを超え、当の本人には逡巡もあり、(潜入捜査を行っているように)中盤以降は一部辟易していたことがわかるが、最後の結末は皮肉的で(現実基準での)狂気が標準装備の世界において、揺れ動く心を表している
技術変革が続く中で、「人間の政府」という言葉からはAI社会などの背景が示唆される。大きな流れに飲まれないようにする、人体の反乱。個々が選んでいるようで、選べていないのだろうと感じた。
内なる美
ホラーのサブジャンルに"ボディホラー"というカテゴリがあるそうで、正に監督はその第一人者であることは明白である 『裸のランチ』でもそうだったが、内蔵系のグロテスクさを演出させながら、その画力と強引に結びつけるストーリーテリングにまんまと心を奪われてしまう 気持ち悪さの連続はもはや快感に取って代るという、今作の多々あるテーマの一つを体感してしまっているのである
一種のSFなので、荒唐無稽な前提ではあるが、"苦痛"(作品内のそれは痛さの度合いが低くなってしまっている、もしくは他の感覚に変化している)から人々が解放された世界に於いての、二つの物語がやがて絡まる展開として作劇されている 一つは人体内に出現する新たな臓器と、それを切除するパフォーマンスをするアーティスト 又一方は、後半判明するのだが、新しい臓器で有害物質に対応する消化器系を移植し、環境問題を目指す団体の話である
まぁ、かなりストーリー自体が飲み込みにくいし、初めに説明する件もなく、やたらと官能的且つ、玩具のような生活具もしくは医療具(ベッド、椅子、手術台)を使用している様が、滑稽で痛々しく、なんだか面はゆい、居たたまれない羞恥感漂うカットであり、さすがクローネンバーグ、始めからトップギアである 女優を次々裸体に晒す脚色、子供を使ってのまるで"蔘鶏湯"のレシピのようなオチ、道徳感を逸脱した女性二人の電気ドリルによる頭骨穿孔の暗殺方法、一部の好事家が興じる刺青やインプラント等の人体改造等々、これだけの世界観を"松花堂弁当"の如く綺麗に盛付け、尚且つ未来への警鐘のような魔術に落とし込んだ今作品の胡散臭さと、尤もらしいエクスキューズに、総合芸術の悪魔の側面を垣間見てしまった希有な作品である 老監督の集大成と言ってもよいグロテスク且つ猟奇、そして皮肉な環境提言と言った、ハイコンテクスト作品であろう
クローネンバーグ節
試写会にて。
久々に(かどうか分からないくらい追いかけ切れてなかったが…)クローネンバーグ節全開の、なに言ってんだか分かんない系のビデオドローム方面のやつでした。
が、残念!ノレず!…😢
映像は刺激的なのに、設定が飛び過ぎてて一歩も地に足が着いてないためにどんどんどうでもよくなっちゃった…
もう一歩現実に踏み残して欲しかった…
あとテーマがどうであれ、レア・セドゥの顔をいじっちゃ、ダメ!ゼッタイ!
せっかく美しいフルヌードを披露してくれたのに…
未来はますます素敵に滅ぶ。
35年前に「ザ・フライ」で造形と描写のネオゴシックっぷりに打ちのめされた感覚が蘇りました。
あの遺伝子混合の、生体生理への不可逆的な改変という世界観が、進化した臓器が蔓延する世界、という「映画的進化」の結果なのだと直感しました。
それが、私の生理的好悪にどう反応を起こすかどうかは別ですが。
「ザ・フライ」では科学技術が発展した小綺麗な未来が舞台だったもののが、本作では閉塞感溢れる廃墟に蠢く、未来を失った人類へと、変化しています。クローネンバーグが描く「人類の終末」への35年を経た後の絶望感に、背筋が凍ります。
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