「メイド・イン・京都の絶品SFコメディ」リバー、流れないでよ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
メイド・イン・京都の絶品SFコメディ
どんな映画なのか全く知らない状態で観に行きました。
映画が始まると、京都の貴船神社でお参りする若い女性が出て来て、そこから参道の前にある旅館ふじやに場面が移ります。基本的にこの2か所のみが本作の舞台でした。その時点ではまだどんな映画なのか分かりませんでしたが、直ぐに旅館の仲居で主人公のミコト(藤谷理子)が、旅館の建物の裏手にある川縁にいるシーンが繰り返し登場することになり、ようやくタイムループ物のSFであることが分かりました。
タイムループ物と言えば、昨年公開された「MONDAYS また月曜日がやってくる」が非常に印象的でしたが、MONDAYSが1週間単位でループしていたのに対して、本作は2分毎という超短時間でループするというのが特徴でした。そしてもう一つの特徴が、ループしても登場人物たちの記憶は連続しているというところ。だからループを抜け出そうという努力を、ループの枠内で連続的に出来るという点が面白さであり、2分という時間が短くもあり、意外に長くも感じられた物語でした。実際映像も概ね2分毎でループするようになっていて、観客にとってもリアルタイムにタイムループを味わえた点も良かったと思います。
特に面白かったのは、それぞれの登場人物のキャラクターがはっきりとしていて、非常にメリハリが付いていたところでした。主要人物の背景にどんな物語があるのかという点が、短い時間で極めて効率的に分かる創りになっていたのは、大いに評価できるところでした。
また、MONDAYSでは広告代理店の日常を舞台にしていましたが、本作では京都の奥座敷である貴船が舞台になっていて、非日常の中でさらにタイムループという非日常が発生しており、異国というか異世界に旅行に行ったような不思議な感覚に浸れたのも良かったように思いました。
役者陣では、主役の藤谷理子はじめ、企画・制作に携わったヨーロッパ企画所属の俳優のほか、女将役の本上まなみや、作家役の近藤芳正など、いぶし銀的に光る演技があり、また物語のキーパーソンだった久保史緒里も魅惑的に綺麗で、キャスティングが優れていたように感じたところです。
そんな訳で、評価は★4とします。