フォービドゥン・プレイス 禁じられた場所

2019年製作/89分/カナダ
原題または英題:Archons

スタッフ・キャスト

監督
ニック・ゾスタキフスキー
製作
キャメロン・トレンブレイ
ニック・ゾスタキフスキー
製作総指揮
サマンサ・カーリー
ジェームズ・マクドナルド
スーザン・マクドナルド
スティーブ・カスザス
脚本
ニック・ゾスタキフスキー
撮影
キャメロン・トレンブレイ
美術
ジョン・ローソン
音楽
マーク・ドルモント
  • ジョシュ・コリンズ

  • ロブ・ラコ

  • サマンサ・カーリー

  • パーミス・セハト

  • ナサニール・ゴードン

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映画レビュー

2.5一発屋と流行の乱高下

2022年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

 バックファイアという曲で大ヒットをかまし一世を風靡したスレッド・ドッグのメンバー3人が新たなるヒット曲を生み出すべく、どこかの大自然でドラッグをキめながら聖地巡礼していたら不可思議な現象に見舞われていくお話。途中で出会ったファンの少女1人を添えて...

 トーン・シャーク →??? → スレッド・ドッグ → オーバー・オリエンダー → ??? ...と、背景に流れるラジオ番組で特集されている人物及びバンドは1つ流行の移り変わりを示唆しているのだろうか。リスナーからのリクエストを受け付けており、その選曲から歴代の流行を振り返ることを目的とした再放送ないし再編集された番組であることも伺える。

 劇中において序盤と終盤で流れるソレは同一の番組であった可能性が高く、ミッチの数日間に及ぶスピリチュアルな体験はラジオが放送されていた数十分ないし数時間内の出来事と見ていいだろう。

 スピリチュアルな体験とは、スレッド・ドッグのメンバーが乗る車と、自称ファンの少女とその友人を乗せた車が現実に起こした衝突事故を受け、ミッチ個人が見たまたはその場に居合わせた6人が共有した走馬燈。

 ざっくりとは夢オチで、類似する系統の作品を挙げるのであれば「-less[レス]」,「スライド」,「stay ステイ」辺りだろうか。

 自身らのバンドのインタビューが流れるとあっては、どのような放送になるのか確認するのは必然だろうし、熱烈なファンであればその番組のチェックも欠かしていないはず。森で居合わせた6人が同じ番組を聴いていた可能性は十二分にあるし、そういった様子も描かれている。

 要所要所でラジオの放送内容と彼らが見舞われた現象との類似点が確認できたりできなかったりでちとわかりにくい気もするが・・・

 同じラジオ番組で取り上げられていたトーンシャークなるバンドは地元贔屓でその地域では名の知れたバンドのようだが世間的には知名度は低いだとか、

 今の若者の間での知名度は無いに等しい伝説のギタリストをリスペクトして制作した曲が今の若い子に盛大にウケ大ヒットしたのに対し、一番に評価してほしかった信奉し神格化までしているその人物にはこき下ろされただとか、

 自身らのバンドの熱烈なファンを自称していながらベースとギターの区別がついていなかったりと、

 自分たちの狙い、スタイルや方向性に反し奇しくも盛大な一発を当てたバンドマンたちの苦悩と葛藤というのが大筋で、今現在人気絶頂なのではなく過去の人状態というのが肝なのだろう。

 これから再起を図ろうとしていたのかもしれないし、もうすでに崩壊していたのかもしれない。また今回の件を受けどうなるだろうかとする展望も別のバンドにより示唆されている。

 怪物とは何を象徴するモノだったのだろうか・・・

 一度目に入ると常に見えてしまうもの付き纏うもの。過去の栄光、世間の評価、評判にイメージ、賛否両論の声、アンチの存在、ネチョネチョしてくる僻み...

 現実に流れていた時間はラジオ放送が行われていた数十分ないし数時間の間であるのに対し、ミッチの不可思議な体験の体感が数日であることや、その場所が俗に時間がゆっくりと流れる大自然であったことなど諸々皮肉があったのかもしれない。

 一発屋と呼ばれるバンドマンたちを通じて、SNS隆盛の昨今におけるバズリや炎上といった良くも悪くも目まぐるしく移り変わる、いやただただ高速で消費されるだけの流行(トレンド)と、そんな時代に身を投じる現代人を憂いているのかも・・・

「-less[レス]」(2003)...「スライド」(2004)...「stay ステイ」(2005)...「レストストップ デッドアヘッド」(2006)...「トライアングル」(2009)...「LAST7」(2011)...「ビジター」(2012)...「7500」(2014)...「ミッドナイト・アフター」(2014)...「キル・オフ」(2016)...

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鰹よろし