「祝!日本初上映! チェコの巨匠監督が暴く人間存在のエゴと欺瞞と信仰と・・・ 浮世離れした幻想的映像の中で人々が醜悪にしたたかに生きる中世の一大叙事詩」マルケータ・ラザロヴァー O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
祝!日本初上映! チェコの巨匠監督が暴く人間存在のエゴと欺瞞と信仰と・・・ 浮世離れした幻想的映像の中で人々が醜悪にしたたかに生きる中世の一大叙事詩
宗教と権力闘争に明け暮れる男共に翻弄されながらも愛を貫いた少女たちの逞しさを描く物語の重厚さを描きながらも、透徹とした山間部の自然とそこに生きる人々の悲喜こもごもを切り取った構図は美しく残酷で、それを人間の根源的感情を掻き立てるような音楽が彩っており、全てに於いて浮世離れした印象を受ける作品でした。
1950年代より都合10年掛けて段階的に制作され、製作費はチェコ映画史上最高レベルということで、登場人物の人数はそれほど多くはないのでどこにその配分が?と思いましたが、”当時の衣食住や風俗を再現するために当時と同じ素材・製法を採用する”という拘りが画面に満ち満ちています。
また、本作は中世の宗教対立・部族間衝突を描き、その最大の犠牲者として強調されがちな女性たちがその実、強かな強さを見せつけています。
主人公からして父親の仇敵騎士の息子にして報復のために自分を凌辱した男を宥恕して愛を育み、兄に同衾を強要された騎士の娘はそれを乗り越えて捕虜の伯爵子息と愛を交わし、彼が正気を失った末には介錯しています。
世の動静に揉まれて傷付けられながらも庇護者の押し付けの善意は断固拒否しており、自らの愛に生きる姿は非常に誠実です。
プライドや覇権争い、果ては欲をかいて身を亡ぼす醜悪な男たちと明確にコントラストを為しています。
本作は過去、そして同国製SF『イカリエXB-1』は未来の話ですが、どちらも人間存在の内面の真実を鋭く抉った作品であり、それこそは国体が常に激しく変化して来た歴史を持つ国家ゆえに生み出せた、あるいは生まれ出るべくして生まれ出たということなのかもしれません。
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