モガディシュ 脱出までの14日間のレビュー・感想・評価
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南北の協力こそ本来あるべき姿
【”同一民族分断の壁を越えて・・。”国連加盟の為にソマリア大使館にいた韓国大使館員、北朝鮮大使館員が経験した激烈な脱出劇を描く。現況下の世界情勢の中で今作を観ると、色々と考えさせられる第一級の作品。】
ー 実際の事件の基づいた大使館人質映画と言えば、ペルー日本大使公邸占拠事件を扱った「ベル・カント とらわれのアリア」や、在イランアメリカ大使館人質事件を扱った「アルゴ」が記憶に新しいが、この映画の元となった事件は知らなかった・・。-
■1991年、ソマリアで起きたバーレ大統領の政策を独裁的である、と批判する反政府派が起こしたソマリア内戦。アイディード将軍が制圧したソマリアの首都、モガディシュの混乱を収めようとしたアメリカ軍が壊滅的被害を受け、撤退する様を描いた「ブラックホーク・ダウン」を思い出す。
◆感想
・国連加盟のために、“第3世界”であるアフリカ各国の支援を受けようと、当時の韓国と北朝鮮が、ソマリアを始めとした各国に大使館を設け、国連加入を求めようとする動きがまず、冒頭で描かれる。
ー この際の、韓国大使館のカン参事官(チョ・インソン)と、テ・ジョンギ参事官(ク・ギョファン)の険悪な会話。テ・ジョンギ参事官が言い放った、”我が国は、南よりも20年も前からアフリカ諸国と関係を築いて来た!”
だが、そんな南北朝鮮の目論見を、反政府側のゲリラの銃撃が打ち砕く。-
・首都、モガディシュは混乱の極みとなり、北朝鮮大使館が襲撃され、大使館員及び家族たちの命に危険が及ぶ。
ー ご存じの通り、大使館の土地に許可なく踏み入る事は出来ない。如何に異常事態だったかが分かるシーンである。-
・北朝鮮大使、リム(ホ・ジュノ)は、大使館に留まるのは危険と判断し、中国大使館に向かうが中国大使館も火を放たれていた・・。
ー 仕方なく、韓国大使館に身を寄せようとするリム大使。テ・ジョンギ参事官は不本意そうだが、そんなことを言ってられる状況ではなく・・。-
・韓国大使ハン(キム・ユンソク)は、リム大使の”家族の命が危険だ・・”と言う訴えに、渋々扉を開ける。そして、韓国大使館の家族たちが“北の子供たちは、素手で人を殺すそうよ‥”と呟く姿。
ー 長きに亘る、同一民族分断は、ここまで相手に対する誤った認識を育んでしまうのか・・。一緒に食事をする際にも、北朝鮮側は食事に手を付けない。それを見たハン韓国大使は、敢えてリム大使の前の飯を取って口にする。ー
・カン参事官は密かに、北朝鮮大使館員達のパスポートから”転向書”を密かに偽造するシーン。”そんなことをやっている場合ではないだろう!”と内心、激しく突っ込む。カン参事官の偽造に気付いたテ・ジョンギ参事官とで、取っ組み合いの喧嘩になるが、その間に韓国大使館を護衛していた警官達は”人数が多すぎる”と追加料金を請求。そして、却下されいなくなる。
ー 韓国大使館の護衛が居なくなった瞬間である。本来であれば、同一民族同士、助け合うべき時なのに・・・。だが、流石に事、ここに至り両国大使館員たちは、力を併せ脱出することを決意する。車の外面に大使館中の本や、衣服を弾丸除けとして取り付け、韓国大使側は、イタリア大使館へ。北朝鮮側は、エジプト大使館へ。-
■ここまで観ると、平常時の外交力の大切さが良く分かる。
イタリア大使館は韓国大使館員たちを赤十字の避難機に乗せる事を許すが、北朝鮮側は、エジプト大使館側から匿うのを拒否される。
■コーランの祈りの時間に、4台の車に分乗した南北大使館員達は、遺体がゴロゴロと転がる道を猛スピードで、イタリア大使館へ突っ走る。物凄い銃撃を受けながらも・・。
ー 観ている最中に”早く到着しろ!”と内心、叫ぶ。物凄い緊張感と、迫力である。
そして、漸く大使館に到着するも、最後に着いた北朝鮮テ・ジョンギ参事官は、運転席で事切れていた・・。-
◆沁みたシーン
・韓国、ハン大使は北朝鮮大使館員達を”南に転向した”と、イタリアに説明し、南北朝鮮大使館員達は無事、赤十字の避難機に乗れたシーン。
・そして、安全な土地に下りた際に、北朝鮮テ・ジョンギ参事官の無念の死を見たそれまで彼と対立していたカン参事官が、自分達を迎えに来た韓国の(多分、KCIAであろうと、推測。)の姿を見て、北朝鮮大使、リム達、北朝鮮の大使館員たちに言った言葉。
”俺たちの後についてくるな!外国人たちの後から下りて来い!”
- 勿論、北朝鮮の大使館員たちの身柄を気遣っての事である。-
<朝鮮の同一民族分断は、この事件をきっかけにしても一向に改善の兆しは見受けられない。更に、ソマリア内戦も一向に集結する見通しはない。
現況下の世界情勢の中で、今作を観ると、イロイロと考えさせられる作品。
だが、後半の大使館脱出のシーンの、物凄い緊張感と、迫力を醸し出す演出力や、重いテーマを一級の娯楽作品として魅せる韓国映画の力業には、改めて驚いた作品でもある。>
胸熱
色々なメッーセージが。
「トンマッコルへようこそ」を超えるかもしれない。トンマッコルがおとぎ話だとするとこちらはやはり実話ベースの話で皮肉や人間の愚かさが出ている大人向けと言える。まずシナリオが素晴らしい、嫌味のように南北の話ではなく同じ朝鮮人としてどう乗り切るかの話をしているが、その奥には人間としてどう判断するかが描かれている。多く子供のカットやシーンが多いのも人間を描こうとしているからだと思う。食事のシーンも毒見の話があり、えごまの漬物のシーンが次にきているのも良い。食の前には人間平等でなければならないし、食を得るために助け合わねばならない。内戦のシーンをかなりリアルで話に引き込まれる。ラストのカーチェイスも映画のクライマックスとしてはかなり良い。退屈になる前にど派手なカーアクションで観客を逃さない。
説教のようなシーンばかりでも飽きるし、アクションだけでも萎えるし、絶妙なシーンの羅列で傑作。
前半は国連加盟を賭けての工作合戦は、コメディー調に当時の時代背景を...
前半は国連加盟を賭けての工作合戦は、コメディー調に当時の時代背景を説明し、
後半の内戦勃発より徐々に緊張感が増すと共に、終盤の脱出パートではそのピークに達する流れ
緊張の末のラストシーンは、なんとも言えない余韻を与えてくれて、凄く良かった
実録「呉越同舟」
過去を舞台にしているとはいえ、こんなフィクションを思いつくなんてすごい、北朝鮮の外交官の行動がめちゃくちゃリアル。なんて、間抜けな感想を抱いた僕ちゃんですが、鑑賞後、実話ベースと知って更に驚いてしまった。
ソマリアといえば、内戦と海賊の悪名しか記憶にない国。そんなソマリアが内戦に突入した1990年に、韓国・北朝鮮の大使館が共に反乱軍の襲撃を受けて、窮地に陥ってしまう。通信も遮断され、国外に脱出するしか道はない。
仇敵同士が、一時休戦をして手を組むなんてマンガみたいな展開。だけれども、散発的、断続的に続く銃声の中、統制されていない反乱軍が暴れまくる様子は、当時の緊迫感をリアルに感じる。
北朝鮮の外交官は、家族の一人を平壌に人質にとられていて、簡単に亡命ができない。両国とも保安部の要員が大使館にいて、波乱含みの展開で物語は進んでいく。
この作品が上手いところは、絶妙にコミカルなシーンをぶっ込んで、緊張を和らげる点。
白旗を掲げるときに、誤って棒だけを突き出して銃弾を雨あられのように浴びるシーンがまさにそれなんだけど、絶対、脚色だよね。面白いから許しちゃうけど。
韓国と北朝鮮は体制は違えど同じ民族。究極のシチュエーションで見せる人間ドラマに感動しちゃいました。
南北朝鮮は戦争をしてたんだということを思わせる、すごい緊張感、緊迫...
南北朝鮮は戦争をしてたんだということを思わせる、すごい緊張感、緊迫感。南北問題だけでなく、自国の戦争がこのリスクの只中にある。もちろん、関わらなければ独立した問題だったから、ここにはむしろ和解の素地がある。この意味でラストの表情は険しいけど、熱い気持ちが溢れてくる。
主人公は、ソン・ガンホみたいに、ノーマルなおじさんが淡々とヒューマンでクールな解決をしていく。
そして、ソマリア。少年兵の存在が酷い。暴力。ただ、ソマリア人の描き方については他者化している。それともこういう嫌なやつがいっぱいいたのかな?
韓国の活動についてもう少し説明があってもよかったかも…(補足入れてます)。
今年192本目(合計468本目/今月(2022年7月度)4本目)。
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※ なお、以下では北朝鮮は便宜上の国家扱いとして扱います。
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韓国が国連に加盟したのは「意外」と最近の1991年ですが、その加盟に向けていろいろ活動していた中で起きた騒ぎを描く映画(この点字幕が不足している点は下記で補足いれてます)。
一応、「史実に基づく」としますが(公式サイト)、意外と「最近」とはいえ、あのような特異な状況では当時の実際の映像などはあっても数点程度で(まったくないわけでもない模様)、また、史実として北朝鮮と協力した事実はあるとしても、またそれを深く掘り下げるには当然北朝鮮の協力も必要なところ、韓国もある程度は交渉したのだとは思いますが、やはり限界もあったようで(協力がもらえないものはどうにもならない)、その関係で韓国目線になっている部分はどうしてもあります。ただこの点はもう仕方がないという点です。
当然、史実に基づく以上、あることないこと書けませんし、一方で、いわゆる「撃ち合い」のようなことは実際にはほとんどなく、「いかに安全に国外に脱出するか」というのが論点だったので、「この意味で」アクションシーンは少なめです(せいぜい、車に追いかけられて撃たれたり、という程度)。
リアル社会では、日によってミサイルが飛んできたりという北朝鮮ですが、もとはといえば朝鮮戦争という特異な事情で、さらにそこに民主主義を掲げるアメリカと、共産主義を掲げるロシア(旧ソ連)が対立していた中でのいわゆる「代理戦争」であった面は否めず、朝鮮戦争は公式には「休戦」扱いですが、やがては何らかの方法で統一ないし正式な意味での二国の「正式な」独立(国際的には、ある程度の差はあってもいわゆる民主主義が掲げられていて、途上の状態にあるなら、あまり言われないのが普通。いきなり民主主義を完全に達成することは難しいため)として、うまく解決することを願ってやまないところです。
映画の内容としては確かに史実に基づくとした以上、上記のような事情で、「北朝鮮側の言い分」も反映ができなかった(事実上、できなかった)という点は理解が可能であり、まさかあることないこと韓国が「極端に」美化して、「だから韓国はすごいんですよ」という趣旨の映画に無理やり改変しているというようにとらえるのは無理なので(その意味で、検証が難しい映画の類型)、フルスコアにしています。
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▼ (参考/韓国・北朝鮮の国連加盟)
・ 韓国・北朝鮮の国連加盟はくしくも同じ日で、1991年9月18日です。
日本が第二次世界大戦に敗戦すると、朝鮮半島はその数年後に朝鮮戦争が始まるように、国全体が混乱状態に陥りました(済州4・3事件、順天・麗水事件など。「スープとイデオロギー」参照)。
そうして始まった朝鮮戦争も数年で「事実上」終戦しましたが(歴史上正しくは「休戦」であり、終戦はしていない)、ここから韓国の国連加盟は苦難の道のりとなってしまいます。
上記に書いたように、民主主義をかかげたアメリカが支援した韓国と、ロシア(旧ソ連)が支援した北朝鮮はそれぞれ国連加盟を目指しましたが、韓国の国連加盟に否定的だったソ連は(ソ連は当時、北朝鮮に肩入れしていたため)、国連加盟の場で常任理事国の拒否権を乱発し、まったく動きが取れなくなりました。その間にも中国(ここでは、狭い意味での中国。台湾・香港などを含まない)が1971年に常任理事国になると、ますます難しくなりました(当時、やはり中国は北朝鮮との交流を優先していたため)。
ただ、韓国はやがて中国との関係を改善させ(この裏には、東ヨーロッパ(ソ連含む)の混乱も背景にあり、中国も韓国と喧嘩ばかりしている状況ではなくなった)、ソ連とも国交を結びました(1990年)。こうした事情があり、常任理事国の拒否権乱発による「無条件で拒否」はなくなったものの、ソ連(現ロシア)から多大な経済的援助を受けていたアフリカの各国から賛成票を取り付けるのは容易ではなく(このことは、今のウクライナ侵攻でも、ロシアを支持する国家が少なからずあることと、事実上同じです。経済的援助を受けている以上、ロシアを否定できない)、最終的に「票数勝負」に持ち込んで、くしくも北朝鮮と同じ日である1991年9月18日に国連加盟が実現したのです。
事実を元にした映画?
刺激慣れしているせいか、今一つ満足できず・・・悪くはないと思いますが。
後半最高‼️
スケールもサービスも満点の娯楽作品
キャラ、ストーリー、政治背景全て分かりやすい
2022年劇場鑑賞150本目。
戦地からの脱出ということで、なんか地味そうだなという印象。アルゴが評価の割にあまり刺さらなかったもので。
いやぁー、良かったですね!韓国映画で似たような顔のキャスティングされて誰が誰か分からなくなるというのが自分にはよくあったのですが、この映画韓国側も北朝鮮側もキャラクターがわかりやすく、戦地で汚れていってもまだ分かるのはとても良かったです。黒人も見分けつかなかったりするのですが歯がないという分りやすさでパンツ1枚になっても誰か分かるのは工夫されていたと思います。
ストーリーや政治背景も今何がどうなってこうなっているのか分かりやすく、最初のズッコケ韓国大使館ぶりから、これリアルパージじゃんと思うくらい無法地帯になったソマリアからどう脱出するのかというドキドキ感、南と北の関係というこの2つの国ならではの関係性など、見所満載で本当に最初から最後まで笑ってハラハラして泣ける最高のエンターテイメントでした。これが実話だっていうんだからすごいですよね(多少の脚色はあるのでしょうけど)
よく再現した。。!
内戦時の街の惨状、少年兵達の病んだ様子など、よく再現出来たな、と驚きました。
北朝鮮のメンバーには子ども達もいて、韓国の大使達のほうは大人だけなので少し違和感あるな、と思ったら、北のほうでは故郷にも家族を残していると。まるで家族を両方の土地に人質として置きながら仕事しなきゃいけない大使館員の苦労が垣間見えました。
なんとか、やっとの思いで脱出しますが、協力のためにほんの僅か絆が芽生えたところで脱出の地、ケニアの空港に到着してしまう。
そしてこの安全な土地ではもう絆なんてわずかでもバレたらいけないという切ない現実。
救難機から空港に降りた瞬間、顔見知りですらいられない。
「救難機から降りたら我々は完全に他人です、知らない相手です、別れの挨拶は今この救難機の中だけで行ってください!」、という切なさ。
頑張って協力し合ってなんとか多くのメンバーが脱出出来て良かった、だけでは済まない、予想外な展開、南北の現実を見せ付けられました。。!
衝撃の実話…手に汗握る壮絶な脱出劇!
通常スクリーンで鑑賞(字幕)。
実話なのだから恐れ入る。事実は小説よりも奇なり。映画よりも映画みたいな出来事の映画化、心底から堪能しました。
冒頭で韓国と北朝鮮が国連加盟のために行っている駆け引きの模様を映し出し、両国の関係性を示した上でソマリア内戦へと突入していく導入部が堅実で素晴らしい。
このプロローグのおかげで、常に互いの足の引っ張り合いをしている仲の悪い両者がどう云う経緯で手を組むことになるのか、とても気になってしまったからです。
反乱軍に大使館を追い出された北朝鮮大使一行が韓国大使館に助けを求めた瞬間から、物語が大きく動き始めました。
戦場と化したソマリアから如何にして脱出するか。緊迫した展開が続き、政府軍や反乱軍が溢れている市街地を疾走していくシーンは、ダイナミックなカメラワークも相まって手に汗握り、息を止めてスクリーンに見入っていました。
まるでハリウッド映画のような迫力で、韓国映画のすごさをまざまざと見せつけられた思いでした。これは映画史に残る名シーンだな、と…。日本映画も負けていられない。
韓国と北朝鮮の両大使館員が国同士のしがらみを一旦忘れ、極限状況から生還するために協力し合ったと云う事実は本当に意外過ぎたし、苦難を共にしたことで生まれていく仄かな友情に次第に胸が熱くなってしまいました。
しかし、無事脱出した後ケニアの空港で別れたシーン、両者が二度と会うことのないであろう暗示が、両国間の関係の複雑さを物語っており、なんだか切なくなりました。
[余談]
韓国映画だから仕方無いとは言え、あくまでも韓国側をいいもんに描いているのは明らかな脚色だろうなと感じて(事実なのかどうか分かりませんが、韓国側は死者ゼロに対して北朝鮮側は参事官1名が犠牲になっているのが少々違和感)、視点の偏りに両国の相克を垣間見た気分。
[以降の鑑賞記録]
2022/12/25:Amazon Prime Video(レンタル,吹替)
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