「2時間あっという間の大作」モガディシュ 脱出までの14日間 じーたらさんの映画レビュー(感想・評価)
2時間あっという間の大作
1990年、ソマリアで起こった政府軍と反乱軍の争いの最中、決死の脱出劇を繰り広げた韓国と北朝鮮の外交官を描いた映画。全編実話ではないが、限りなく事実に基づいて、そこに映画なりのエンタメ要素を加えたと言えよう。
とにかく2時間、あっという間にすぎる。
序盤、タクシー運転手とのやり取りや、ちょっと間の抜けた秘書(?)のコミカルなやり取りから、やがて争いが始まると、緊迫感といい映像の迫力といい、凄いものを見させられた。
キム・ユンソク氏とホ・ジュノ氏の外交官同士の駆け引き、チョ・インソン氏演じる韓国、ク・ギョファン氏演じる北朝鮮の両参事官のちょっと危ないバチバチの演技は南北間の微妙な関係を見事にエンタテインメント化している。あの『工作 ブラックビーナス』のような緊迫感だ。
そして何よりすごいのが、現地で採用したエキストラ出演者たちのスケール感のある演技である。あの反乱軍の若者、子供たちの完全にキマって銃を乱射するシーンは、戦場リアリティを見事に描いている。『ブラッド・ダイヤモンド』を彷彿させる。
カーアクションの技術はさすが韓国制作陣。
韓国映画らしくたっぷり魅せたシーンだった。
最後に南北の外交官同士が見せるあの眼差しや、ある北朝鮮の領事館職員がもらした一言でこの映画の奥深さを見させられた。
アクションや映像の破壊力もさることながら、こう言った事実の裏側にある南北朝鮮の壁が、あまりにも厚いことが伝わり、最後は少し重い気持ちになった。たった数十年でここまで隔てられたのだなあと。
映画全体としてクオリティが高く、基本的にマイナス要素がない。すべてにおいてレベルが高く、まったく減点しようもできない作品である。
一つ言えば、上に挙げたように色んな過去の作品でみたような光景をもう一度観た、と言う点ではあるが、そんなのは当たり前によくある事だから減点にはならない。
個人的な思い入れなどを省けば、今年日本で公開された作品の中ではナンバーワンではないか。大型配給とはなってなく、映画好きしか見てないのが、いささか残念である。いや、私は残念ではないが、配給会社や興行的には損失だろう。ちゃんと宣伝すればいくらでも集客できそうな作品なのに。ここは日本映画界の弱点である。