「内戦の凄惨さと南北朝鮮の絆」モガディシュ 脱出までの14日間 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
内戦の凄惨さと南北朝鮮の絆
アフリカで起こる内戦ってとても凄惨なものになる印象がある。映画化されたルワンダの内戦も悲惨なものだった。そこには民族対立が背景にあるので、他民族への虐殺が起こりやすいってことなのだろう。
本作の舞台となるソマリアも民族的な対立が背景の1つにあったようだ。でも本作ではそこらへんの事情はほとんど触れられない。あくまで外交官として滞在している国で内戦が起こり命の危険にさらされたという設定に徹底していた。政府と反乱軍という対立のはずなのに、誰が敵で誰が味方なのかわからない。反乱軍が各国の大使館を襲撃するという状況。ただの暴徒じゃないか。さらに大使館の通信機器も使えなくなってしまい陸の孤島と化してしまう。
そんな状況で生き延びるために韓国と北朝鮮の大使館職員たちが協力するという話。ソウルオリンピック直後、国連加盟前という状況をうまく演出した脚本だった。さらに、反乱軍の怖さがうまく表現されていた。路地で倒れている死体の数々。一般市民をどうやったらここまで殺せるのか。子どもたちがライフルや機関銃を持って笑いながら脅してくるシーンも怖い。これもアフリカの内戦っぽい。
そんな戦争状態の中、始めは対立していた人間が協力し絆を強めていくという話は個人的に大好物なので、感動しないわけがない。対立し警戒し恐怖していた双方が食事をとることで少しわかりあうのがとても韓国的。最後のカーアクションも銃撃戦もよかったが、アクション映画ではないので、やはり印象に残るのは最後の別れ。主義とか関係なくお互いを思いやる姿が地味だけど、双方の絆を感じられるとてもいいラストだった。民族対立で内戦が起きたアフリカで、生き残ることができたのは民族の絆だったってことがテーマだった気がする。
事実に基づく物語とはいえ、シリアスな内容なのにエンタメ性を高め、最後はちゃんと感度させる映画にしちゃうんだから大したもんだ。韓国映画の底力を感じる。