エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのレビュー・感想・評価
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タイトルなし
パラレルワールドものは結構引き返せないとか二度と行けないという制約のもとで時間を意識させられるのだけれど、この映画はその点を超えててとても新しかった。他の世界での能力の獲得というアイデアは、カンフーを中心とした戦闘ものの中で生きる。
全然冴えない、不満だらけの中国人の中年女性が主人公で、気に入らないゲイの娘と冴えない夫から人生を学ぶストーリーはヒューマンで美しい。全体にユーモアが溢れていて、カンフーのアイデアも楽しい。パラレルワールドの表象のアイデアも今までになく斬新で、それがベーグル(という所がポップ)の比喩で全部繋がるニヒリズムなども新しいし、哲学的でもある。偉くなったカップルが中年で出会うシーンもパロディっぽくていい。とはいえ、家族愛に回収される先は凡庸でもある。
最初の国税局のシークエンスで身を任せて
IMAX鑑賞。
画角サイズを変えてシーンの雰囲気をだすのを、ひとつの映画に何回も変える編集が斬新‼️IMAXで正解でした。音響、撮影が凝っていて面白い。
設定に身をまかせるかで、好みが別れるか?
隣の女性はラスト近くで号泣していましたが、私が男性だからか理解してないのか解りません!
ジェミリー・リー・カーティスとホイ・クァンは最高‼️
エブリンが最後に覚醒するショット、久しぶりに映像に圧倒された。
カンフーは良かったが、マジ混乱。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』鑑賞。
*主演*
ミシェル・ヨー
*感想*
コインランドリーで働く主人公が並行世界(=マルチバース)に飛ばされて、世界を救う話。
最初は良かった。コインランドリーのお母さんが突然、自分の夫が夫じゃないって言われ、「は?」ってなりますよね、そりゃ(笑)
ワケがわからないまま別の世界に飛ばされて、世界を救うという一風変わった作品でした。(^^;
マルチバースといえば思い出すのがドクターストレンジで、あれも混乱しましたが、このエブエブは、さらに混乱します。
平凡だった主人公の女性がマルチバースでカンフーアクションを覚え、さまざまな悪に立ち向かいます。国税庁の監査員が怖かった。。
ストーリーは、母親と娘。親子の物語で背景で並行するかのように描かれていましまが、途中からマジでよくわからなかった。別のエブリンがこれでもかというくらいに登場するので、本当に混乱しました。
カンフーアクションは文句なしに凄かった。夫のポーチアクションだけはもう一度だけ見たい!
でも、中盤~後半部分が本当によくわからなくて、つい眠くなってしまった。。
総じて、残念ながら申し訳ないけど、個人的には合わなかった。。自分はマルチバース系の作品とは合わないのかも。。(^^;
泣けます
アクションやマルチバースやいろいろな要素がありますが根っこは家族映画です。
あれだけめちゃくちゃな設定なのに誰にでも刺さるメッセージを届けてくる作品はなかなかありません。
A24の攻めた映画は好き嫌い別れますが自分は好き!
追記
今作を低評価で叩いている人の他のレビューを見ると邦画の青春ものとかテレビシリーズの映画版を評価してる人が多い気がする。世代も違うんだろうが本当に相容れない人が多いと感じます。1.5倍で映画みたりしてるんだろうな
ことごとく笑えないコメディ、ギャグシーンにふと気づいたこと
海外のコメディ映画なのである程度は想定の範囲内でした。だが全世代において、お笑いに対して幼少期から「世界に誇れる本物」を観てきて鍛えられた一般的な日本人の目にはお笑い要素に関しては紛い物にしか見えなかった・・・というのが本音です。
しかも私は言ってはなんだけど、ドリフや欽ちゃん、ひょうきん族あたりをリアルタイムで子供時代に観てきた猛者・・目が肥えすぎのアラフィフ日本人だからこれは評価が厳しくなるのは、申し訳ない部分も多々あります。
にしても、ちょっとひどいし腹の底から笑えない。
今作においてはギュウギュウに詰めこまれてカオスに配置された数々のコメディ、ギャグシーンがことごとくタイミングを外して不発弾になるのを呆然、唖然としながら見送る・・・という作業をひたすら高速に繰り返すってことに序盤から疲れ果ててしまいました。
じゃあ、仕方ない、お笑い部分をバッサリ捨てて今流行りのマルチバースでしたっけ、そのSF要素だけでも楽しもうかと思いましたが、SF物で一番やっちゃいけないこと「設定詳細を冒頭に口で説明しちゃう」という駄目SFアルアルな暴挙に出る。
まあ、百歩、いや千歩くらい譲って最後良けりゃでと構えていたら、とりあえず分かり易い数々の伏線回収し・・・これ、最高のシナリオでしょとふんぞりかえる。
最後の部分はあくまで私のイメージなので除外してください(笑)。
映像は確かに頑張ってるし、俳優さんも熱演ではあるのでそこだけは高く評価したいです。星3はすべてそちらに献上いたします。
が、コメディ映画として成立させたいなら、日本のお笑いの独特の間の取り方あたりから勉強したらよいかも。
これ真剣な提案です。
では。
うーん‥
前々から話題になっていたので、見に行ったのですが‥
要は平行宇宙に、人生で様々な選択肢があった中、違う選択をした自分が生きていて、その違う自分が持つ能力を、自分のものとして武器に使い、戦うという内容。
世界を救うというより、自分の家族、特に娘との関係を、戦いになぞらえて描いている、っていう時点で、想像してた内容とはちょっと違ってた。
映像の内容は、多分、監督の脳内世界を映像化したような感じで、脳内世界をあれだけの映像表現に落とし込める時点で、凄いなとは思うんですが、それが面白いかというと別問題かなと。
正直期待外れで、評価が高い理由も今一わからないというのが率直な感想です。
人生ベスト更新
年間100本以上見ている上で、間違いなく人生ベストでした。最高。本当に素晴らしい!ここまで全方面にぶちまけてる映画は今までに無い!
個人的ベストな理由とアカデミー最有力と言われる理由、あとはあれ結局何だったのポイントを備忘の意味も兼ねて記します。
①キャスト
主演女優、助演男優、助演女優をSAG賞やロサンゼルス映画批評家協会賞で取ってます。これまでの賞レースの歴史として言わずもがな白人優位の歴史がありますが、近年有色人種の受賞が徐々に目立つようになってきました。一方アジア人での受賞はほとんどなく、劇中語られていたようなアメリカ移民の成功が難しい部分がこれにリンクします。例えばミシェルヨーはハリウッドの中でアジア人で最も成功した女優といえますが、主役を張った映画での受賞はほとんどなく。キーホイクアンもグーニーズやインディで天才子役で抜擢されるも、依頼仕事はほとんどなく俳優業から退くまでになった(映画NOPEでのスティーブユアンの子役がまさにそれ)。アジア人のチャンスがアメリカにおいて限りなく少ない事、別のチャンスがあったのでは?というような葛藤が、本作の演技をする上で本人達のリアルな思いと共に伝えられる点がリアリティが増し傑作であると言えます。
②Z世代の葛藤
ステファニースー演じるジョイは大学を中退しタトゥーを入れゲイであることを母親にカミングアウトするも全ての行いを全否定され無力感に苛まれる。結果として生まれる虚無主義(ニヒリズム)が悪の権化として、本作のヴィランになります。全部どうでも良いというマインドは昨今のZ世代にも共通するものがあると思っており、コロナや不景気などの急激な時代の変化に対し、希望も期待も抱けない等身大の若者像を見事演じてました。
ちなみに虚無のブラックホールとして存在する巨大なベーグルは全てを諦める死よりも恐ろしい象徴として存在しますが、実際にエブリシングベーグルというものがアメリカには存在します。ケシの実やひまわりの種など文字通り全部載せベーグルで、いわばめちゃくちゃでよく分からん混沌の象徴として面白いすり替えだと思います。
③インターネットミーム
本作はインターネットミームが多用されます。これがご年配やアメリカ文化に精通してないと響かないところだと思います。例えばグーグリーアイ(目玉シール)に関しては
2010年代くらいにネット上でグーグリーアイをつけると全てがおもろくなるみたいなミームがあり。あとはポメラニアンが武器になるシーンなんかは、ベイビースローイングという赤ちゃんとか可愛いものが燃えたり投げられたりしてるミームが流行りました(Sims4とか)。他にもミシェルヨーが小指カンフーを極めた時、相手を打破する音が大乱闘スマッシュブラザーズのバットでホームランするSEと同じだったりとか、orange fuzzを一気飲みするのはtiktokへのディスでしょう。
④名作映画のメタファー
本作はマルチバースお約束ということもあり過去の名作映画の引用が大量にあります。映画好きなら分かるところが分かるのでとても楽しめるかと。マトリックス、2001年宇宙の旅、花様年華、レミーのおいしいレストラン、グランドマスター、パプリカ、グリーンデステニーなど。他にも私ときどきレッサーパンダにメッセージ性は似てましたし、もちろんマーベルを追ってる人からすればマルチバースという概念はおろか、ガーディアンズのロケットみたいなアライグマがツボだったんじゃないでしょうか(しかもめちゃチープ)。
⑤アクション
カンフーアクションがメインで最近のアクション映画とは一線を画します。ダニエルズ監督達がいう様に昨今VFXが簡単に使える今、我々はあの手のアクションシーン(キャプテンアメリカやデンゼルワシントンのクールな戦い)が量産され見飽きてる節があります。マーベル自体も最近はあまりフェーズ4ほどのアクションシーンを入れてませんよね。そこで往年のカンフーアクションをあえて入れたらしく、そこが変わり種として良いアクセントになってました。しかもキーホイクアンはほとんどのアクションを自身でやってのけているらしいです!すごい!
⑥家族愛
Z世代の葛藤でも述べた通り、昔と違って色んな事を諦めたり期待しない悲しい時代になってしまっていると思います。でも一方でそれは親の世代でも同じ様にあり、ジョイの気持ちは母親も経験している為唯一の理解者となる。だからこそジョイの原動力であった全部どうでも良いという虚無主義が、最後エブリンの全部どうでも良いからただあなたを愛すという無償の愛に繋がるところは号泣どころ。
またエブリンの言動は家族のためにせかせかと働く肝っ玉母ちゃん感がある一方で、ADHD気質なところがあります。だから必ずしも正しい事をしているとは言えないところもあり、そんな中で心優しく楽観的な夫ウェイモンドを全否定します。変化を受け入れず、他者のことを否定する事、それは結果的に自分自身を否定する事になります。LGBTQ+について今まで異性愛者しか受け入れなかった事からの否定、男はこうあるべき、大人はこうあるべき、という様なトキシックマスキュリニティ、受け継がれた悪しき慣習から変化を受け付けないこと、それはより良い世界は産まずに虚無だけが残る最悪の未来が待ち望んでいる。ウェイモンドの語るビーカインド(親切でいてね)は、夫婦間だけでなく全世界に対して言える言葉となります。これは我々へのメッセージでしょう。
期待しすぎず映像を楽しむタイプ
大作なのに「A24」らしさ全開。
最終的には「どうなったのか」という辻褄・理屈じゃなく、「どう感じるか」という仕上がり。
賛否両論に振れそう。
話はわりとシンプルというか理解しやすいが、とにかく並列世界それぞれのことが同時進行で、加えて『マトリックス』っぽい映像の情報量が多すぎるため、理解する脳の力を試されすぎ。
途中で処理能力の限界との戦いになり、耳から煙が上がってきそうでしたよ。
悪の存在(娘の変異体)との対話が、禅問答っぽくて眠気を誘うのも『マトリックス』っぽい。
たしかにミシェル・ヨーやキー・ホイ・クァンの演技は素晴らしいし、特殊効果など見どころは多いが、アカデミー賞10部門11ノミネートに期待しすぎると肩透かしを食らうかも。
そしてかなり下品。
リアル大人の玩具が修正なしで画面狭しと暴れるから、高尚な作品と間違えてカップルで行くと気まずくなる可能性も高い。
R15なのも納得。
その点もマイナスに働くかも。
正に”最先端のカオス”
情報過多で目まぐるしく変化するこのご時世に生まれるべくして生まれた映画なのでしょう!
物語の根本は王道で奇をてらっているワケではないが、ビジュアルのぶっ飛び具合・スピード感・見せ方が現代的カルチャー(ネット&ゲーム&アニメ)感満載で想像の斜め上を行っている中で、中年世代を主要キャラに置く事でちょいレトロなカルチャーも取り込んでいる…という、ハチャメチャに見えて中々高度な作りをしていますよね!
後半のめまぐるしい顔面フラッシュシーンはソフト化されたらスロー再生して観てみよっと。
キー・ホイ・クアン!、'80年代スピルバーグ全盛期に映画の楽しさを知った世代なので復活嬉しいですね~、ひょっとして「インディ・ジョーンズ」新作にもサプライズ出演??
ア〇ル合戦シーンはアホ過ぎて笑ったが、A24作品のア〇ルネタと言えば先に「ディック・ロングは~」が有りましたなぁ…
最初の二十分くらいはワクワクしたが、それ以降は物足りませんでした。...
最初の二十分くらいはワクワクしたが、それ以降は物足りませんでした。あと、こういう映画に人生訓とか親子愛みたいな要素は持ち込まない方が良いと思う。
あらすじと考察
Everything, Everywhere, All At Once
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
アメリカ社会に生きる中国系移民の女性が、中年の危機を迎え、自分の過去を振り返り、人生にあり得た様々な可能性を検討しながらも現実と向き合う物語。
家族の絆や、人種問題の融和といった感動的なテーマを掲げる。
・・・・
主人公はクリーニング屋を経営し、コインランドリーも兼ねている。
注)アメリカには「洗濯屋は中国人がするもの」というステレオタイプなイメージがある(あった)※1
彼女には夫と一人娘がいる。
夫は優しいが頼りなく、娘は反抗的で大学を中退し、今はガールフレンドと付き合っている。
映画が描くのは、そんな彼女が確定申告に追われながら、中国からやってきた父親の介護に追われ、新年会(旧正月?)を取り仕切る慌ただしい1日の出来事である。※2
確定申告は彼女の仕事。父親の介護も女の仕事。新年会を取り仕切るのも彼女。夫に指示を出して動かすのも彼女。
夫は離婚を切り出そうとしているけれども、彼女が忙しすぎるせいでゆっくり話し合う暇もない。
娘は新年会にガールフレンドを連れてやってきたが、主人公は、そのガールフレンドを父にどう紹介するか迷った挙句「友達」と紹介したため、娘は不機嫌に。
確定申告へ向かった国税庁では、監査官の白人女性との間に以前から確執がある。
言語や文化の違いもあってか、人種間摩擦にも似た問題を抱えている。
そんな彼女が自宅の食卓で確定申告業務をしている場面から映画は始まる。
家族との会話を交えつつ、自宅併設のコインランドリーの内部を経て、カメラはようやく屋外へ出て、国税庁へと向かう。
これは「自宅→仕事場→彼女を取り巻く社会」という順番になっている。
いずれも問題だらけで、彼女の人生の行き詰まりを「内→外」と、身近な順番で紹介していると言えるだろう。
そのあとには、夫と駆け落ちしてアメリカに来たこと、父親からは勘当同然の扱いを受けたこと、アメリカンドリームを抱いてコインランドリーを購入した当初の希望に満ちた様子が描かれる。
しかし彼女はずっとクリーニング屋=社会の底辺(成功者とは言えない)。
父の介護のためにいよいよ身動きが取れず、夫からは離婚を切り出されそうだし、娘との確執もあり、映画の中でアメリカ社会(白人社会)の代表として登場する監査官からは真っ当に扱われている感じがしない。
「クリーニング屋として社会の底辺に固定され、家庭に縛られ、アメリカ社会の中でも不自由している」ことを理解させる設定がふんだんに盛り込まれている。
★あらすじに間違いがあればコメントにてご指摘ください。
※1 ロマン・ポランスキー監督の名作『チャイナタウン』(1974)の中で、「中国人の洗濯屋はまだツバで洗濯しているのか?」というセリフがあり、ここから中国系移民に対する見下した意識が見て取れる。ちなみに『チャイナタウン』の舞台設定は1930年代。
※2 アメリカの確定申告の〆切は4月だとか
・・・・・・
人生の停滞を迎えた主人公だが、そんな彼女のために用意された救いの手が「マルチバース」だ。
確定申告のために国税庁へと向かった彼女は、監査官を前にいよいよピンチを迎えるのだが、「別の宇宙からの夫」が登場。
彼女こそが全宇宙の救世主であること、全宇宙を崩壊させようとする恐ろしい追手が彼女にせまっていることを告げる。
そこから後半にかけて、物語はカンフーアクション映画の様相を呈し、「別の宇宙の自分が持つ能力をダウンロードしながら戦う」という斬新な設定が盛り込まれている。
アクション自体は革新的なものではない。
ダラダラと進行する感も否めないが、「能力のダウンロードのためには何しらの奇行をしなければならない」との条件が伴う。
そのためアダルト描写を交えながら、ドラマ『スペック』の堤幸彦監督のセンスさながらのシュールでコミカルな笑いを誘う。
彼女に襲いかかる追手もまた、別の宇宙の自分の能力をダウンロードしながら戦いを挑んでくる。
『マトリックス』のエージェント・スミスによって乗っ取られた一般市民さながら、別宇宙の自分自身によってコントロールされている様子。
よくよく考えてみると、オフィスで無線で指示を受けながら追手から逃げ回るのもどこか『マトリックス』っぽい。
終盤には「あの有名なシーン」(どのシーンでしょう?)が再現されており、明確にオマージュを捧げている。
・・・・
【マルチバースについて】
本作におけるマルチバースは、量子力学の「多世界解釈」に影響を受けているようだ。
「私たちが何か選択をするたびに世界が分岐し、その蓄積によって無数の世界(宇宙)が同時に存在している」というものである。
加えて、別の宇宙の自分との意識の共有が可能で、別の宇宙の自分に意識を転送したり、別の宇宙の自分の意識が、現在の自分に転送されてきたりする。
主人公はその結果として、「すべての宇宙の自分の人生を、同時に1カ所で経験できるようになった」という設定だ。
・・・・
【まるで『インセプション』?】
このように、「全ての自分」を1つの肉体で経験できるようになった主人公だが、実はその主人公もまた別の宇宙の自分だった、と考えていい。
あるいは「『マルチバースにアクセスできる主人公』は主人公の妄想である」と解釈してもいい。
というのも、この映画は現実改変モノではない。
どのような選択をしようともあくまで分岐した世界が存在している、と設定しているからだ。
主人公はカンフーの能力を手に入れるが、それによって現実が改変されるのではなく、あくまで普通の人生を送る別の自分も存在している。
ということは、
解釈①「マルチバースにアクセスする主人公」は、普通の人生を送る主人公の妄想である
か、
解釈② 普通の人生を送る主人公もまた、分岐によって生じたマルチバースの1つであり、意識の共有によってカンフー能力を手に入れた世界線の主人公の意識が転送されてくることによって、現実世界をより良いものにしていく
ということになる。
クリストファー・ノーラン監督による有名な『インセプション』(2010)は、夢の世界を舞台にしている。「夢から覚めた世界もまた夢だった」という演出が印象的だ。
"Dream within a dream" (夢の中で見る夢)というセリフが記憶に焼き付くが、終盤には「夢の中で夢を見る」ことを繰り返し、夢の第1階層、第2階層、第3階層、そしてもっと深い階層でのアクションが同時進行していく。
本作も同様に、複数のマルチバースを同時に経験しながら物語は進んでいく。
マルチバースが全て「夢」、そして普通の人生を送る主人公が「現実」だという解釈も可能だ。
解釈①によれば、"エブエブ"は、普通の人生を送る主人公が、「マルチバースにアクセスできるようになった自分を夢見る」という白昼夢だということだ。
解釈②は、国税庁のあたりで主人公の世界は「カンフーマスターになった人生」("Kung-Fu Timeline")と「平凡な人生を送り続けた人生」("Reality Timeline")に分岐しており、"K"タイムライン(万能になった主人公)から"R"タイムラインに情報が転送されてくる、ということだ。
主人公は特殊能力を獲得して現実を改変できるはずなのに、物語は平凡な人生へと着地していく、という点に注目したい。
・・・・・
【物語の結末】
この映画は、マルチバースという最先端のSF設定を採用しながらも、ごく平凡な人間ドラマとして着地する。
主人公はマルチバースにアクセスし、宇宙一のカンフーマスターとなり、様々な能力を手に入れるけれども、人生の問題を解決するのは夢のような能力ではない。
あり得たかもしれない別の人生を想像し、さまざまな検討を加えた結果、彼女はただ、目の前にいる夫を愛した。
夫はただ、白人の監査官と会話し、主人公はただ監査官とタバコを吸いながら話し合った。
さまざまな葛藤を経て、娘とただ胸の内のありったけをぶつけ合った。
父親にはただ「娘のガールフレンドです」と紹介した。
その「ただ〇〇した」が、物語を平和な結末へと収束させていく。
確定申告の〆切は1週間延長され、白人とも打ち解け、事業拡大への希望もつながった。
夫とのあいだに愛も取り戻したし、娘も一緒にいてくれる....
・・・・
今ある人生からは逃れることができない。
この映画は、観客に向けて「今ある現実、その生活は変えることができないのだから、まずは目の前にいる人を愛しなさい。優しくしなさい」と無条件の愛を訴える。
カンフーマスターとなった主人公。
だが彼女は戦いの型をとるのではなく、無条件の愛を持って手を差し伸べる。
エンドロールを最後まで見れば、まるで脳死の"I love you"が連呼される...
「家庭の問題も、人種間の問題も、愛があれば、優しさで解決できるよね」と
・・・・・・・
【映画の問題点】
マルチバースを導入した斬新なカンフー映画であり、ユーモアも豊富だが、見せ場のアクションが真新しいものであったというわけではない。
マルチバースの設定もやや不明確だ。
インセプションのような入れ子構造が、明確なものだとも言えない。
「ベーグルってなんだ?」「結局全宇宙をかけた戦いはどうなったの?」「悪役ジョブ・トゥパキはどうなったの?」「夢オチってこと...?」
そういった娯楽面や表現面での批評はさておき、この物語が下した結論、物語が掲げたテーマについて考えてみる。
ジョン・レノンの「イマジン」が如く、この映画は「脳死の愛や優しさで人生をポジティブに変えよう」と訴える。
けれども主人公の家計や収入が良くなったわけではないし、父の介護によって縛られるのも変わらない。なぜ「娘のガールフレンドよ」と伝えただけで父の理解が得られるのかもわからない。
この映画は、パラレルワールドにおいて、家族や白人と主人公が繰り広げる葛藤が、あたかも現実世界に作用したかのように描いている。
けれども実際は、現実の主人公と登場人物たちの間には何も起こっていない。
パラレルワールドの登場人物たちと現実世界の登場人物たちを重ね合わせる演出が錯覚を生んでいるだけだ。
だから「パラレルワールドで色々と起こったからといって、なぜ全てがうまくいくのか」という疑問を生む。
「サリーとアン課題」という心理学の実験があるが、この映画を見て「主人公が家族や白人と和解した」と感じるのであれば、それは編集の巧みさと、サイケで時にサブリミナルな照明効果によるものではないかと思う。
現実世界の多種多様な問題に具体的な解決策を提案したわけでもない。
主人公が人生の問題や生活の問題を解決したわけでもないが、「愛の力」で人間関係だけは良好になる。
「貧しくても優しさですよ、愛ですよ」と説くが、「経済的余裕こそが精神的余裕を生むのでは?」「衣食足りてこそ礼節を知るのでは?」という疑問が生まれる。
現実のアメリカ社会で生活する貧しいアジア系移民に向けて「愛だ、優しさだ」と説いても意味がないが、支配階級に向けてアジアと白人が融和する映像を見せると満足する(態度が軟化する)ということなのだろうか?
社会問題に対して具体的な解決策を提示するわけでもないが、白人に対してアジア系への融和的な態度を促すのには効果的に思えた。
「マルチバース」というホットなテーマを導入しつつ、『マトリックス』のようなアクションと『インセプション』のような入れ子構造で描き、「性的多様性」や「アジア系と白人との融和」といったアメリカ人左派の価値観を再確認した、といったところだろうか。
自分は「夢と現実」のような映像表現が大好きなので、マルチバースという設定を整理・理解する経験が楽しくて少し高めの評価になった。
(3月4日 改筆済)
スピード感
良い意味でも悪い意味でもスピード感のある作品です。良い意味ではマルチバースとの行き来が軽快感や爽快感を作りだし、その速さが彼女の能力のレベルアップして行く感じと相対的です。ただ、そのスピードによって詰め込み過ぎに感じました。内容的に最初はもっとじっくり描いて、後半にスピード感を持った方が良いのかな?と感じました。
ペットロック姿のグッズ出してほしい。
考えるな、感じろ。を体現した作品。
とにかくはちゃめちゃなんだけど、
映画館で映画を観るってなんて幸福なんだろう
って今日もこの作品で感じさせてもらえた。
ウェイモンドの笑顔が可愛くて可愛くて。
笑顔が可愛い男性が好きなので一気にファンになった。
まさかグーニーズのあの子だったとは!
結婚は勿論好きって気持ちも大切だけど、
この人となら苦労さえもできるって思えることが
最も重要なんだろうなぁ。
愛こそ全て。
P.S.映画にプロレス技が出てくると
やたらと心が躍ってしまう。
SFカンフーカオス家族愛物語
オリジナリティ全開の内容と超絶頑張った鬼編集カット割りで描く家族愛の話! 普通に笑えて最後は感動して、低予算ながら全宇宙を舞台に戦う壮大な話を最高にフザけて楽しめる作品になっていましたねー
スローモーションの使い方が面白くてギャグマンガを見てるような感覚に落ち入りますし監督の狙った部分は全て笑ってしまいました!
とはいえ 敵と戦う為に自分に無い能力を得るために普段やらないような突拍子も無い事をやる事で平行世界に居る違う自分の能力をダウンロードして闘うんだけど 人生の選択で色々な可能性があったのに普通に旦那と結婚してコインランドリーで働いて平行世界の中で1番何もしていない普通の生活をしている自分だからこそ可能性が1番あってスターになってた自分やプロのコックになってる自分とかの可能性もあったのに最後は結局特別なモノになってない普通の自分に落ち着くってストーリーとか実は奥が深くてよく出来ているともおもいました。
あとラスト付近は泣かせ感動シーンもあって特に石のシーンと娘との和解は泣けるんだよなあ
あと予告で爆笑コメディみたいな感じになってるから そのハードルで鑑賞すると
え?
なにこれ? 案外シリアスな話やないか! ってなる可能性高いので予告はあまり見ない方が楽しめるとはおもいます、
更に言うとアカデミー賞ノミネート最多とかで勘違いして真面目な映画を真剣に見るつもりで劇場行ったら
間違い無く最低評価を付ける事になるくらい表面上はフザけた内容ではあるんだけど本質はしっかりしていて恐らくアカデミーの脚本賞はこれが受賞するだろうと思われるくらい凄いのでそこを理解してないと単なるバカ映画で なにがアカデミー賞ノミネートだよふざけんなってなる人も多いとおもいます!
あとマルチバースの理論を全く知らないで見に行くと
笑えるくらい置いていかれるのでそれは知っておいたほうがいいかもしれません 一昔前だとパラレルワールドって言われていたやつです。
好きと嫌いがハッキリわかれる作品でしょうが
ハマればめちゃくちゃ楽しいーってなるので劇場に行く価値ありますよ
最後にサブリミナル効果がありそうな激しいフラッシュとかするのでIMAXとかだと特に気をつけたほうがいいかもしれません
賞レース映画としてはなかなかに怪作
何もかもが上手くいかないエヴリンは、ある日マルチバースの危機を告げられ…。
ミシェル・ヨー主演作。ジャンルごちゃ混ぜ映画で、真面目かと思いきやコメディ要素も強いので感情が迷子になりがち。映像も内容も怪作と言える作品でした。
全705件中、621~640件目を表示