エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのレビュー・感想・評価
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愛しいモンスター
公開初日にIMAXで凸
賛否両論真っ二つな作品かと。つまらないという人の意見もよくわかる。伝えたいテーマに表現が辿り着いておらず、振り落とされてしまう感じ。
しかし個人的には身につまされる作品で泣けました。
壮大で素敵なSF家族ドラマだった。壮大なハリウッド版の渡る世間は鬼ばかり。元々あるジャンルの要素の掛け合わせでこんなにも可能性が広がるんだなと感嘆。
私は健全な家庭で特に苦労もなく生まれ育ったが、思春期は母親とソリが合わず、喧嘩はしないけれども、家には帰りたくないし、嘘はつきまくるし、黙ってピアス開けたり、タトゥー彫ったり、母親に心をまったく開いてなかったように思う。親子ではあるけれど、性格や趣味嗜好、すべてが真逆すぎて、母親のことセンスないし、ダサいとすら思ってました🤣自分が大人になって実家を出てからいろんなことにありがたみを感じていろんなものを理解するんですけどね。
思春期の頃の自分は母親から観るとモンスターだったかもなーと。作中だと愛しい娘のジョイである反面理解不能なモンスター、ジョブトゥパキでもあったんだろうな。それでも宇宙の果てまでモンスターを追いかける、なんだか泣けて泣けて仕方なかった。マルチバース、色んな世界線の自分達が現れて、わちゃわちゃ賑やかなんだけども本質の部分で泣かせにくる。
人生には色んな選択肢があって、これでよかったのかなんて悩んでるのがバカバカしく思わせてくれる最高の作品。ギャグセンスが少し自分とは合わなかったので笑いより泣ける要素の方が多かった。
キーホイクァンもすばらしかった。こどものころに何度も観たグーニーズやインディージョーンズに子役で出演してた俳優さん。しばらく裏方業務に徹されていたそうですが、今回のオーディションに合格されて久々に表舞台に。演じ分けがすごかった。堺雅人思い出したw
あとは魂だけが石になる場面とかは手塚治虫の火の鳥の復活編とか湯浅監督のマインドゲームも思い出したな。
あとはジョイの衣装もかーなりぶっ飛んでてかわいかった!どれも最高!
アカデミー賞作品賞を取る実力はある映画
アカデミー賞の作品賞なのに、非常に日本のウケは良くないこちらの作品。
ルッソ兄弟とA24と言う理由で見させて頂きましたが、なるほど〜って言う感じでしたね。
個人的例えで、「リアル鬼ごっこ」+「レミーの美味しいレストラン」+「コロコロコミック」+「ラブストーリー」+「ファミリー」を混ぜた映画です。
確かにカオス過ぎる内容でして、一体何が起こっているのか、今どんな状況なのか読めないですね。
普通に内容の把握がしやすい方でも難しいと思います。
とにかく、自分の違う世界線から能力を手に入れながら、主人公と同じ能力を持っている悪い奴をやっつけろって言う内容なのかな?
で、その悪い奴をサポートする味方が夫に乗り移ったり、悪い奴は娘に乗り移ったりみたいな。
多分完璧な答えは出ないです、きっと。
エブエブが好きな方は多分こう言うと思います。
→「考えるな感じろ」って
でも、僕からもそうしか言えなくてね...
この作品って解釈がめちゃくちゃ広がる映画だからこそ、自分が思った内容で評価して良いと思います。
なので、僕が思った解釈だとめちゃくちゃ好きです。
最後もなんとなく良い展開にしようとしてるな、
能力を手に入れて戦うのではなく、良い事に使うって言うとこや、1人1人関わってきた家族や上司などの関係も良くしていくとこ、
なんか不思議とラストは涙が出そうでしたね...
内容掴めてないのに。
アクションはまぁまぁのカンフーです、
普通に雰囲気に合わないギャグ的なコメディもあり、
下ネタもありです。(ち○ち○のおもちゃ出てきたけど普通にレイティングGなんやね...)
多分、意図的に付けただろうモザイクシーンはめちゃくちゃ笑いました。
最後に、賛否両論の作品ですが、確実に言えるのは、
めちゃくちゃ頑張って作っている事。
同じアングルで、同じポーズで、果たして何パターンのカットを作成したのだか...
ほんの0.1秒ぐらいしか出ないシーンでも、ちゃんと背景も衣装もメイクもしていて...
世界線が切り替わりまくるアクションシーンも切り替わるところのズレもなくて...
めちゃくちゃ大変で、めちゃくちゃ苦労しながら制作していたんだろうなぁって実感させられます。
全然アピールしてないけど、想像以上に製作費と製作時間ヤバそうだなぁって思いました。
日本でのウケは確かに良くないかなぁって思いながら、出来と労力を考えると、確かに作品賞は分かるなぁってなりましたね。
だからこその楽をしたかったのか、石の環境音のみの字幕会話シーンはめちゃくちゃ好きです!斬新ですね。
これぞ「映画」って言う映画でした。
カオスが好きな方、映画好きの方、物語シリーズが好きな方、ルッソ兄弟が好きな方、めちゃくちゃ頑張っている映画を見たい方はオススメします。
↑に当てはまらない方はサブスクやBDで良いかも。
ミッシェルヨーがすごい
今回のアカデミー賞はアジア勢が大活躍!
米国アカデミー賞作品賞・監督賞受賞で、ミッシェルヨーが主役で、カンフーの上手いジャッキーチェンのそっくりさんみたいな俳優さん、あれ誰だろ?と思ったら、グーニーズやインディジョーンズに出ていたベトナムの少年「キーホイクワン」さんだというではありませんか!!
カンフーアクションの役者さんになってたんだ!とびっくり。
ミッシェルヨーが「普通のおばあんがマルチバースのなかで覚醒してスーパーヒーロー化する」というのも、なんだかおもしろそうだったので、早速「グランドシネマ池袋」IMAXで観てきました。
はっきりいうと「B級映画」でした。
「アニマルハウス」や「ポーキーズ」を観たときのような、ワルガキ感満載なテイストで、今の時代、こういう作品がもとめられているのかと、へえ!とおもいました。
カメラワークも映画館の巨大なスクリーンで観てもらうためのカットではなく、WEBやネット映画にする前提で作った映画だなあという印象。
ただすごいのはマルチバースを行ったり来たりして、それぞれの世界を往来してハチャメチャになっていくという構想は、最近の映画やドラマでは珍しくないものの、2011年から構想を温めてきたんだそうで、ミシェルヨーさんの主演が決まって、ビシッとキマッたなと思いました。
ミッシェルヨーさんがくたびれた初老の女性を演じて、そこからマルチバースの中で覚醒して最強カンフーウーマンになるというのがあ最高!!
この作品、「シャンチー」を観たときに感じた残念感、
中国のカンフーのヒーローという割に、香港アクション映画の良さが反映されてない
ジャッキーチェンがいない
少林サッカーの方がコミカルで「漫画チック」で高度のカンフーシーンがたくさんあった
もっとミッシェルヨーがみたい!
本場香港のカンフーアクションをハリウッドで作りました的な作品を作ってほしい
等々、ハリウッドにも私と同じように感じた人がいたのではないでしょうか。
「中国人のカンフーの達人がマルチバースで大暴れ」という、マーベルのチャイニーズアクションに物足りなさを感じていたところに、このエブエブ。ちょっと下品な描写も多くて、あれでしたが、「マーベルシャンチー」に本場中国のアクションを、ミッシェルヨーという大看板でいどんでくれて、シャンチーに感じた不満を解消させるべく生まれた作品なのかもしれないし、とはいえ下品な描写が多い。
トム・クルーズとキャメロン監督がアカデミー賞を欠席した理由がわかる気がしました。
俳優さんの演技は素晴らしかったが、7冠も取るほどではないかと
予告を見てもあまり面白そうと思わなかったので全く見るつもりはなかったんですが、
アカデミー賞7つも取ったのなら、予告動画が響かないだけで、内容は面白いのかな?
と見に行きましたが、、
アカデミー賞審査員ってこういうのが好きなんだ…今後映画の参考にはしない方が良さそうだ
と思いながら見ました
家族愛も、親子愛も、自己愛も、現実的な殺伐としたやり取りの中で得る確かな幸せも
全部理解できるし、分かりますが…
金を払って見るほどのものでは無い
ありがちな話。ありがちな展開。下ネタ入れたいならどうぞなのですが、だから何。としか言いようがない…
音楽が凄いわけでも、映像美があるわけでも、カメラアングルが見応えがあるわけでもないので、映画館で見なくても全然いい
家のテレビ画面で十分
俳優さんたちの演技は素晴らしかったので、主演女優賞や助演男優賞は取って納得ですが
他はもっとこれよりいい作品いっぱいあるのではとしか言いようがない
予告で響かなかった自分の感性をもっと大事にしようと思います
カオス
端的に表すならカオスな作品。
映像の見せ方や、カンフーアクションは圧巻。とてもカッコイイ!ただストーリーが自分には合わんかった。
マルチバースという難しい題材の割には、説明が少なくて分かりづらい。段々と分かってくるが謎な所は多々見られる。終わり方も良くも悪くもって感じ。並行世界を飛びながら一つ一ついい感じになっていくが、少しくどく思ってしまった。悪くないけれど。
なにより、家族愛?的な話がもうちょっと感動する感じで終わるのかな?って思ってたからうーんって感じ。
何回か見たりわかる人には分かるのかも?
とりあえず、自分的にはアクションや見せ方はいいけどストーリーは可もなく不可もなくって感じ。
なかなかのコメディ映画
139分 映画.com3.3
3月3日から公開。
この映画、公開前から話題作となっていた。
コインランドリーを営む中国系のオバサンが、混乱しながらもマルチバースに飛び込みカンフーが上達する…テレビでは、なんかそんな紹介だった。
映画.comも3.3と、話題作の割には低い評価となっている。
感想は、コメディ映画にマルチバースの融合と、意欲的な作品だと思う。
あくまでもこれは、コメディ映画である。しかも下品でもある。
アカデミー賞ノミネートと言う言葉で、変に期待を持ってしまうと、肩透かしの気分になるのではないだろうか。(そういえば、前の方の席のおじいさんが途中で出て行ったきり、戻ってこなかった)
アカデミー賞の受賞も発表されたが、近年ハリウッドでは、人種差別や男女差別、またセクハラも問題となっている。
そんな事も受賞の後押しになっているのでは?
最後に、この作品編集作業が大変だったと思う。受賞で報われたのではないだろうか
マルチバースで挫けた人はかわいそう
でも結局は母娘愛とどんな人生だろうが肯定的に生きようってだけで
難しく考えて挫けて低評価
ノーランとか好きなSFマニアには内容がコメディ過ぎて低評価って感じだと思う
頭空では見れないけどそう悪くもないと思いました
全体的に平均点高いけど脚本とか演技とか全部が混沌としてるから評価しづらいってのが評価だと思う
アカデミーは政治と時勢でとった感はある
色んな人生を追体験してやっと気づく真理もあるということ
人はそれを小説なり映画なりで補完するがエブリンにとってはそれがマルチバースだったと言うことですね
おバカの好きな秀才監督が知的にこねくりまわしてできたおバカ映画は果たしておバカといえるのか。
祝・アカデミー賞主要部門ほぼ完全制覇!!
というわけで、受賞の当日に重い腰を上げてレイトショーを観に行く。
旦那役の顔をどっかで見た気がすると思ったら、『グーニーズ』でも『魔界の迷宮』でもなくて、老け込む前の町山智浩だった(笑)。
で、パンフを開けたらきっちり町山さんが見開きで解説書いてて、さすがのムーヴだなと。
まあ、面白かったは面白かった。
充分に満足したから、いちおう4つ星はつけてみたり。
でも……意外に語るのが難しい映画ではあるよね。
結局、いろいろと手をかけてミッチリつくってはあるんだが、それで本当に面白く仕上がってるのかといわれると、ちょっと疑問も残る。
頭ではたしかに面白いと思いながら観ていたけど、結局最初から最後まで、実際にはほぼ笑うことも興奮することもなく、しらーっと観ていたのも事実。
体感的に無理やり根こそぎ持っていかれる『RRR』みたいな感じは、まるでない。
少なくとも調布のその日の観客は、みんなすげえ真剣に観てる感じで、場内では笑い声ひとつあがっていなかった。
突き詰めて考えてみると、以下の思考実験にたどり着く。すなわち、
「幼い頃からバカな映画を浴びるように観て育ち、バカな映画に執着したまま大人になった頭の良い監督が、理詰めで好きなことを片端からぶち込んで組み上げたおバカ映画っていうのは、おバカ映画として果たして無心に楽しめるものなのか?」
要するに、ちょっと「小賢しい」映画ではあるんだよな。
くだらないことをやってるわりには、完成度が高すぎる。
逆に言えば、真面目な内容だけで押すんじゃなくて、そこに「頭の悪そうな下世話」を適当に混ぜれば、なんとなく「世論がゆるむ」ことをわかってやってる、みたいな。
人種問題や、LGBTQの要素についても、それは言える。
監督コンビは、間違いなくエスニシティやLGBTQ的な要素を「映画の評判を上げる」ために巧みに利用している。
ヒロインは、「ADHDで」「老齢の域にさしかかってる」「中国人」。
旦那も、戯画的なまでの「キンキン声で話す挙動不審のチャイニーズ」だ。
反抗期の娘は、「ゴス系」の「レズビアン」で、どうみても「ふとりすぎ」。しかも「ニヒリスト」で「世界を終わらせようとしてる(銃乱射犯の思考)」。
まさに、役満コースの取り揃えぶりである。
ほとんどの要素を、最近流行りのネタで埋め尽くしているといってよい。
しかも終盤は完全に女性映画の様相を呈して、「母と娘」の和解という東ちづる/青木さやか的な展開を示す。『MEN』や『ザリガニの鳴くところ』同様、「蓋を開けてみれば女性の共感性を当てにした映画にきっちり仕上げてある」ってのも、最近の映画界の傾向をしっかりつかんでいる感じで、ちょっと「いやらしい」。
で、あまりにマイノリティ礼賛一辺倒になると、アンチ勢力から叩かれやすくなるということで、バランスをとるように散りばめられるのが、LGBTQを小馬鹿にするような下ネタの数々だ。
娘の振りまわすどうみても男性●にしか見えないヌンチャクとか、延々繰り返されるゲイ風マッチョマンの肛●貫きネタ(ここだけ声を出して笑ってしまったw)とか、レズビアンの老女二人が絡める指ソーセージから吹きだす白濁液とか、やってることがとにかく、くっだらない(笑)。
中国人の描き方もそうだけど、「こういうのはよくないよ」って振りをしながら、本当はステロタイプの中国人ネタ、同性愛ネタにとことん固執してるのは、むしろ監督たちのほうなんじゃないだろうか、とまで思えてくる。
あと、散歩紐でぶんぶんモーニングスターみたいに振り回されるワンコ(これ、平山夢明の『メルキオールの惨劇』の冒頭シーンと全くおんなじだよねw)を観ながら、はっと気づかされた。
この下ネタ&動物虐待ギャグ・オンパレードの淵源って、『メリーに首ったけ』なのね。
アメリカのインテリ系シネフィルって、インタビューとか読んでると、なんでかみんな『メリーに首ったけ』が大好きだし(笑)。
こうして、マイノリティ&LGBTQサイドにはきっちりわかるように目配せをし、
反LGBTQにも、あまり気づかれない程度に目配せをし、
東洋と娯楽の融合点として「カンフーアクション」を導入し、
もっとも現代的なSF的要素として「マルチバース」を選択する。
で、古い映画のパロディをガンガンに注ぎ込んで、シネフィルの虚栄心をも充足させる。
で、ちゃっかり、時流をつかまえてアカデミー賞まで獲得してしまう。
まあ、近年のアカデミー賞はメキシカン→コリアン→チャイニーズ(女性)→オーストラリアン(女性)と、白人男性はおいそれと監督賞が獲れない仕組みになってきているし、作品賞もマイノリティか障碍者を出さないと獲りづらくなっちゃってるから、むしろ東洋系監督&俳優にとっては今がまさに「獲り時」なのだが。
やっぱり、よくいえばマーケティングが行き届いているし、
悪くいえば、小賢しい。
頭のいいシネフィルがジャンク映画への郷愁を胸に、頭でこねくりまわして「ジャンクまがい」の映画を撮るというのは、古くはクエンティン・タランティーノやティム・バートンに顕著な傾向だったし、世評の高いJ.J.エイブラムスなんかも基本はそういう類の監督だと僕は思っている。
ただ結局ジャンクというのは、そもそもは作り手もしくは製作体制が「壊れている」からジャンクなのであって、製作者がちゃんとしているジャンクなどあり得ない。
ジャンクの魅力というのは、「抑えきれない作り手の暴走」や「いいかげんさの末に生まれた奇跡のような瞬間」といった「無作為」の魅力なわけで、それを計算ずくで作為的に再構築してみせたところで、すでにそれはジャンクではない。
『エブエブ』の「面白いけど、どこか胡散臭い」感じというのは、たとえば教室で「ほんとうにバカなのでしょっちゅう笑えるバカなことをするボンクラ学生」とは友達になれるけど、「ほんとうは頭がいいのだが空気を読んで受け狙いでバカをやってみせるお調子者」はイマイチ信用できない、というのに近い。
まあ、バカのふりをしてる賢いヤツってのは、時にこっちの足元をすくってくるから警戒を怠れないと決めつけて、つい引き気味に評価してしまう僕自身の「狭量さ」がいちばんの原因なんだけど。
― ― ― ―
『エブエブ』が日本で、アメリカほどに評価されていない理由はいくつかあると思う。
まずはあけすけな話で恐縮だが、そもそも日本人はハリウッド映画の主役に同じ東洋人を望んでいないというか、ぶっちゃけアメリカ映画観るなら白人の美男美女が観たい人間のほうが大半だということ(かつて『ポカホンタス』が引き起こしたガッカリ感を思い出せ)。
それから「移民賛歌」ともいうべきマイノリティへの絶対的な共感が、日本で娯楽映画を観に来るメイン層にはさしてピンと来なさそうなこと(それが良いことかどうかはさておき、日本で同じ話を焼肉屋経営の在日韓国人を主役に作っても、残念ながらアメリカのようにはヒットしないと思う)。
なにより、気づくと日本はノベルゲー→美少女エロゲー→ラノベ→なろうというユースカルチャーの変遷のなかで、世界に名だたる「異世界転生」&「タイムリープ」創作大国になっていて、少々のマルチバースものを見せられても簡単にはひれ伏せないくらいに鍛えられてしまっているということ。
なにせ、過去20年くらいの世評の高かったアニメ&漫画のことを考えてみてほしい。
『涼宮ハルヒの憂鬱』『時をかける少女』『四畳半神話大系』『STEINS;GATE』『魔法少女まどかマギカ『Reゼロから始める異世界生活』『僕だけがいない街』『君の名は。』『東京リベンジャーズ』『サマータイムレンダ』『タコピーの原罪』……。
驚くほどに、ループものと平行世界もの「ばっかり」である。
これに加えて、星の数ほど無限増殖中の『異世界いったら○○でした』『転生したら○○の悪役令嬢でした』といったタイトル群(2023年冬クールの深夜にやってる異世界転生アニメだけで「二桁」以上もあるんだから、もはや言葉もない)。
思えば『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』やKeyゲー全盛の時代から、あるいはもっと昔の『ドラえもん』の時代から、日本では常に「別の世界に行けたら」とか「時間を巻き戻せたら」とか「もう一度やり直せたら」とか、そういう「現実逃避型フィクション」ばかりが、サブカルの中核を占め続けてきたのではないだろうか?
「失敗した人生をやり直すこと」に、ほぼすべての想像力と妄想力をフル回転させてきたといっても差し支えないであろう、日本のユースカルチャー(笑)。
そんな日本において、『エブエブ』のマルチバースというのは若干「ぬるい」印象を与えるかもしれない。
『エブエブ』のマルチバースは、「無限の選択肢で分岐した多元宇宙」というよりは、単なる「ヒロインのパワーアップアイテム」くらいの扱いに落ち着いていて、日本のラノベ・ゲームカルチャーでいえば、「ステータス付与」くらいの使い方しかされていないからだ。
たしかに「駆け落ちしなかった世界線」など、うまく「IF」が機能している世界線もあるが、総じて「選択肢」が世界線を分ける面白さは追求されていない。
というか、コインランドリー店主としての世界線をハッピーエンドに導くために、他の世界線が援用されるような構造で、意外に「マルチバース」を最大の売りにしながら、あえて深入りしないで「家族のドラマ」に集中していく感が強い。
これって、数多の作品の主人公たちとともに、世界線を乗り換えるたびに引き起こされる不都合とさんざん戦い続けてきた日本のコミック&ラノベ&アニメファンにとっては、「なんだそんな程度か」って感覚があってもおかしくないのでは。
少なくとも僕は、この手の設定でドラマを練ることに関しては、日本のサブカルに一日の長があるかも、とちょっと思ってしまった。
― ― ― ―
とはいえ。
僕個人の関心領域でいえば、なんといっても還暦のミシェル・ヨーが頑張ってヒロインとして君臨し、カンフー技を披露してくれているだけで、満足といえばもう満足なのだ。
『プロジェクトS』や『グリーン・ディスティニー』の頃の圧倒的な美貌はもはや望むべくもなく、大楠道代と香山美子を混ぜたみたいなおばあさんになってしまっているが(あと特殊効果かと思うくらい手がしわくちゃで引く)、神々しい女優オーラは健在だし、監督たちもきちんと彼女の美しさを際立たせるように撮ってくれている。
しかも、あちこちに「くすぐり」みたいな小ネタが仕掛けてあって、その辺は本当にずるい。まずは、監督自身が「『マトリックス』で始まり、『マグノリア』で終わるような映画を作りたかった」と述懐しているし、今敏の『千年女優』や『パプリカ』、湯浅正明の『マインド・ゲーム』あたりからの影響もあったと認めている。
その他、カンフーで敵の顔を踏みつけそうになるのはブルース・リー・ネタ。
襲ってくるジェイミー・リー・カーチスは『ターミネーター』ネタ。
犬のシーンは『メリーに首ったけ』に加えて『キル・ビル』の要素もありそう。
ウェイモンドが眼鏡をかけたり外したりするのは『スーパーマン』ネタだろうか。
監督がシネフィルであることを恥じず、むしろ声高に語りながら先行作の影響を積極的に認め、客にもわかるように作中に散りばめまくる。まさに「A24」っぽい監督たち&作風だと思う。
それから、物語のなかにミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァン自身の、移民としての挫折と成功の実話をオーバーラップさせることに成功しているのも、本作の評価ポイントだろう。
指がソーセージとかベーグルがどうしたとかいうのは、正直なにが面白いのかと思ったけど、終盤の「目のシール」の使い方は、ちょっと普通には考えつかない凄いアイディアだと感心した。
あと、不満があるとしたら、娘の扱いかなあ。
こいつ、別人格だとはいえ、多元宇宙のいたるところで母親殺して回ってるんだよね。
さすがに甘くないか? まあいいけどさ。
この映画を面白いと思える人でよかったーーー👀
アカデミー賞おめでとうございます!(多数)
友人と見終わった帰り
「カオスだったな〜」
「あれ好きだわ」
と盛り上がったのは久しぶり。
レビューを見ると酷評が多くてびっくり👀
寝落ちしたって意見が多かったけど、
あんなまばたきも我慢する映画ないですよ。
相当お疲れのようです。
ゆっくり寝てください。
見るか迷った、酷評が目に入って辞めようとしてる人へ
マルチバースやあの世界のしくみはちゃんと説明されますので安心してください。
頭が硬い人、頑固な人には向いてないでしょう。
「わからない」を楽しむ許容さが映画鑑賞には大事です。
難しい事は考えず、映画(アカデミー賞)はこうであるべきというつまらない考えも捨てましょう。
こんな「カオス」な映画、次いつ見れるかわかりません。
何も成功してこなかったから、なんだってできる。
とりあえずこの人生で俺ができる(やれる)事は、、、
あまりにも発展性が無い
まさに確定申告の締め切りが迫る時期で早く手を付けねば‥とは思いつつこの映画は観ないわけにはいかないとMOVIXへ行けばこれまた主人公が税務署に所得税の申告に行くお話しで公開のタイミングを狙ったのか私個人的にはスクリーンの向こうとこちらでちょっとしたパラレルワールド状態であったがそれでこのめくるめくマルチバース展開はどうなの?というかちょっとした映画の文法を覆す新時代を切り開いたかもと言っても過言ではない。フェリーニの「81/2」を想起する。あまりにもバースが多すぎるし税務署員に絞られている私と同じフロアの物置内の私とがマルチになるとかバースだけでなく時間もかなり行き来するとかやりたい放題でこれはもう手のつけようがなく映画の「非日常」という概念がもはや意味をなさなくなりもっと言えば見続けるのも嫌になってしまうくらいである。これはまともに脚本が書けないであろうしシチュエーションだけ10パタンくらい設定して撮って映像をでたらめにつないでみて…的な手法では無いかと疑わざるを得ない。もしちゃんと脚本があるのなら(完成台本ではなく)ダニエル・ブラザーズに脱帽。基本コメディーだがあまりにもアレ(岡田監督風)でちょっと疲れる。犬を鎖鎌のように振り回すシーンが大好き。動物愛護協会からたっぷりクレームが寄せられたことであろう。
ジャンクな見せかけと現代人への優しいメッセージ
参った。
ジャンルからしてどこへ振ればいいのか分からないくらい斬新。
だが間違いなく高度に抽象的で、宇宙愛規模の壮大なヒューマンドラマだろう。
でもナンセンスカンフーコメディーって、どういう位置づけか。
はちみつにマスタードとチーズが合うのを知ってしまった背徳感に似ている。
並行宇宙に存在する自分と繋がる。
こうした設定はさほど珍しくない。
だがたいていはバキバキのサイバーパンクだったり、ゴリゴリのシリアスSFだったり、いや、そうしなければ説得力がないというか、緊張感が保てないことからそうならざるを得ず、パッケージとして常套も、本作にはそのバキバキにゴリゴリがないのだ。あるとしてイヤホンひとつのみ。むしろ真逆を行くアナログナンセンスコメディーだったりする。
しかしながら成立しているのは、ひとえにクレイジー極まる編集のたまものだろう。
もう本当にこれが凄まじい。
瞬き禁止の怒涛のつなぎで、ジェットコースター以上の激しい展開に長丁場があっという間だった。コレ、タイトル通り「あらゆるところの全てを一度に」観きったような体感である。そしてそんなカオスな現代を表現したかった、というなら大成功、と手を叩いて称賛したい。
とにかく「攻殻機動隊」から始まり「インターステラー」「インセプション」もちろん「マトリックス」に近年では「シン・エヴァンゲリオン」もか、多次元を行き来するSFをなぞって来た中、ついにここまで極まったかと興奮しきりだった。
そして本編、そうしたSFに酔いしれるだけのものか、と言えば中心はヒューマニズムで貫かれているのだからニクイし号泣。
選ばなかった人生が同時に存在する。それらをすべて内包しつつ、今を生きる。
諦めるが、どこかの自分は諦めず、成功するが、どこかの自分は打ちのめされて。
その互いが互いを鼓舞し合い、包括して最後に一人の自分として今、この道を選ぶ。
そんな人々があらゆるところで様々、今一斉に生きているんだと地球を眺めてみれば、つまり誰もが自分の選ばなかった世界線という事情(マルチバース)を抱えて主人公同様、奮闘しているに違いなく、その健気というか、切なさに「優しく」の台詞もひとしおで、さらには今、目の前にしている「この瞬間」が、無限の選択が交差する無限のうちの一点だと捉えたあかつきにはもう奇跡さえ感じずにはおれず、ナンセンスなんだけれど号泣しまくりだった。
またこれを、特別な美男美女がけれんみたっぷりに演じていないところもいい。
ごく普通の、むしろ移民アジア人女性とくれば今や弱者の象徴だ。
ありふれた弱々しい人々の背景、としてマルチバースが展開されるところに「誰しもが」という感情移入の余地の大きさを見る。
(エッセンシャルワーカーやいわゆる主婦など、日々忙殺され、黙々と仕事をこなす、だからこそ実際、世界を回している重要だが無視されがちな声なき人々へスポットを当てたとも)
むしろもう、美男美女があたかも…、な展開にシラけそうなほど。
中盤、最悪を選び続けたということは、選ばなかった世界線を生きるもう一人の自分を幸せにしている。というセリフがたまらなかった。
石問答もシュールかつ、とても東洋を感じており、大好きなシーンだ。
ともかく、かっとびすぎて映画を見慣れていない人にはハードだろうな、としか思えないがこれぞ今、現在を切り取った旬の映像作品、で大満足。
そういう意味で現代アートですらあると感じており、評価が後々、どう変化してゆくかも楽しみである。
まあ、唯一、難点を挙げるならば、
これを見た後、どんな作品を見てもしばらくは圧倒されてしまうだろうことと、物語そのものがマルチバースに解体されてしまうことだろうか。
「スイスアーミーマン」をなにげに見て、コレすごいんじゃなかろうか。
と思ったことは忘れがたい。
結局ナンセンスなんだけれど。
そういう照れ隠しの向こうに、光るナイフの切っ先のような狂気を見たというか。
鑑賞後、同監督の作と知ってヒザを打ちまくって腫れた。
また同じく鑑賞後、公式ホームページの監督のメッセージを読んで、
自身の感じ取ったことが間違いではなかったことを確信している。
と同時に、あの展開でそれを受け取り手へ送り届けたこの作品の
凄味に、凄味に、ただただ圧倒されている。
(3.18. 加筆修正)
ミドル・エイジ・クライシス主婦の人生再生物語
祝アカデミー作品賞で観た映画であるが、思いのほかよかった。表層的なところだけ観れば「マルチバース」のよくわかんない映画かもしれないが、本質は、「あの時はあーすればよかった、こーすれば違う人生があったはずなのに…」という悔恨を抱えた中年の危機にある主婦が、ご主人の良さを改めて認識し、また娘との喧嘩を通じて、「私の人生、これでよかったんだ!」と自分の人生に納得する物語だと理解した。ある意味、この映画は40代以上の中年女性(及び男性)の賛歌であり、20代までの若い人には見るには少し早い映画だと思われる。若い人たちには、40代以上になって改めてみることをお勧めする。
これがアカデミー作品賞なのか…
多元宇宙を扱った話はかなり好きです。
しかし、この映画は残念過ぎました。
あらすじとしては、何の特技もない主人公が別世界の男(主人公のいる世界ではこの男は夫)に全多元宇宙を救えと言われます。混乱しているうちに敵勢力に襲われ、逃げ回ったりしているうちに、別世界の自分の職業的な技を使って戦うことを覚えます。で、ラスボスは主人公と同じ力を持った自分の娘であることがわかりますが、最後は娘と和解し、元の世界へ戻るというものです。
歌手や小説家やシェフを夢見て、中年になった今もその夢を捨てきれないまま、コインランドリー店を営む主人公。
この設定は、とてもいいと思います。
別世界の自分は夢見た職業に就いているという虚しさも理解できます。
ですが、コインランドリー店主にもかかわらず歌手になるためのカラオケセットを店の経費に入れたり、成功している自分が別世界にいることを知って、夢を叶えられなかった原因は駆け落ちを止めなかった父親であるとして激しく責めたりと、主人公はかなりガッカリな性格で、共感出来るキャラクターではありません。
また、元世界では担当税務署員が、別世界では主人公の恋人という設定はかなり面白いものなのに、手指が全てソーセージであるとかいう設定で、そのソーセージを齧るとチーズが出てそれをお互いに舐め合うというのが愛情表現という世界であることを、執拗にしかも汚らしく繰り返すのも不快でしかありませんでした。手指がグニャグニャであるため足を使って物事を行わなければならないのは納得できますが、折角の恋人設定が霞むほど、このソーセージを強調する意味はなんだったのでしょうか?
更に別世界では、主人公はシェフ(といっても、ステーキハウスのパフォーマー)になっているのですが、その主人公のライバルが「レミーのおいしいレストラン」のネズミがアライグマになっただけの相手である点もガッカリでした。主人公がライバルを肩車して、捕らえられたアライグマを追いかけるもすぐ息切れするシーンは、海外の人には面白いパロディに感じるのでしょうか?大の男を肩車ね、そりゃ疲れるよねぇ…で、それが何?私が観ていた映画館では、笑い声の一つもありませんでしたね。
更に別世界では、主人公は無生物である石になっていましたが、最後には石に目がついて動き出してしまうという、そもそもの石の設定を全否定するような変化を遂げ、これも呆れて開いた口が塞がりませんでした。
一番最悪だったのが、下品なシーンがあったこと。別世界の力を使うには「有り得ない行動をとること」という設定はわからなくもないですが、敵はお尻に銅像を挿すことでそれを成そうとし、挿して飛び回るという大騒ぎシーンがそれなりの時間続いて、かなりゲンナリしました。この場面はどっかんどっかんウケるシーンなのかと思いますが、私が観ていた映画館では、このシーンも静まり返っていました。
それと、散歩していた犬のリードをぐるぐる回して犬を振り回し、ポーラみたいに扱って主人公を攻撃するシーンも辛かったです。ただの虐待にしか思えず、早くこのシーンが終わってくれないかとばかり願っていました。
そもそも、折角、母と娘の関係性、主人公自身の元世界での自己肯定という良いテーマを扱っているのに、そういった大事な部分の心理描写や掘り下げより、つまらないパロディや下品なシーンに多く時間を割く必要性はどこにあったんでしょうか?
お笑い系がやりたいなら、そちらに全振りすればいいのに、この中途半端感が粋なのですかね???
うーんアカデミー賞なんだよな~😵
崇高なる家族愛
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