劇場公開日 2023年3月3日

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「「頭の中の自由」」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス トコマトマトさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「頭の中の自由」

2023年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

昨年末に映画館で予告がよく流れていた。
ミシェル・ヨーがカンフーアクションをしている場面がフィーチャーされていて、コインランドリーを経営するさえない中国人のおばさんの冒険ファンタジーみたいな映画…という印象で、まず見ないだろうな、と思っていた。
しかし、アカデミー賞7冠ということで、チェックしておかなきゃ、と映画館へ行った。
とはいうものの、3月中旬すぎて今年2本目(1本目は昨夏公開された『スープとイデオロギー』を遅れて鑑賞)の劇場鑑賞作である。今年封切られた新作映画では僕としては初めての作品だ。

テンポよく、主人公の脳内の映像=想像=があちこちに飛んで展開。「実」は置き去りにされ、「虚」だけが広がるが、それは映画はじめ、物語のすべてに言えること。
「実」に引きずられては物語にならないのである。
「虚実ないまぜ」――それが物語の要諦である。
それが成功した作品なのだ。
ミッシェル・ヨー以外に、知る俳優もおらず、中国人がメーンキャラクター。監督も中国系。夫婦、親子関係や貧困、人種問題など、現代のアメリカ人が抱えるリアルを通底し、その上に、別世界という虚構を載せた映画だ。
最後は、ほっとさせる「物語」になっており、それが映画としての面白み、「人生賛歌」になっているのだ。
もう一度いう。
すぐれた物語=映画もそのひとつ=は、虚実をないまぜにしながら、人間を、人生を讃えあげるのだ。
下町の、シネコンで鑑賞。前3列を除きほぼ9割の入りという感じ。上映時間2時間20分は頻尿のぼくにはきつかった。

町谷東光