「複雑なメタバース構造とシンプルな物語と感銘」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
複雑なメタバース構造とシンプルな物語と感銘
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい)
結論から言うと非常に面白く見ました。
この映画は一見複雑なメタバース構造をしていますが、内容は非常に普遍的でシンプルな物語だと思われました。
この映画は、ものすごく雑にまとめると、
<少し古い考えの母親 vs LGBTQの娘>
という2人の対立の映画だと思われます。
それだけだとイマイチだな、と正直、鑑賞途中は思われたのですが、さらに物語は進んで、それぞれ母と娘の1段深い話(母の方はもっと輝ける別の生き方あるいはそれをあきらめたからこそ古い考えに縛られている、娘の方は自分が理解されないこんな世界には”死(虚無)”(ベーグル)を)に進みます。
そしてこの映画の優れた点は、その母と娘の対立の解決策を、母の輝ける他の可能性未来にも、娘が理解されないこの世界を虚無に崩壊させることにも、≪どちらにも求めていない≫ところにあると思われました。
わたしは、この母の方でもない娘の方でもない解決策の提示に大変感銘を受けました。
もちろんこの映画の最後に描かれた解決策は混乱が伴い、一時的な安息でしかないのかもしれませんし、娘を虚無(ベーグル)の世界から取り戻すのに納得感が得られなかった人もいたかもしれません。
また、メタバースの複雑な装いの割には、映画の内容がシンプルでやや抽象に偏っているとの評価があるかもしれません。
これが様々な一般レビューでの両極端な評価につながっている理由と思われます。
ただ、私はこの映画で提示された解決策は深い人間理解から来ていると感じ、納得の質の映画と思われこの評価となりました。
非常に現在性ある優れた映画だと思われ面白く見ました。