「セカイ系2.0」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
セカイ系2.0
中盤くらいまでとても楽しく面白く見れてたけど、途中からストーリーが分からなくなって、おいてけぼりになった感じ。
普通のさえない人が突然カンフーの達人になる感じはすごく面白い(そういえば「シャン・チー」でも同じこと思った)し、斬新なマルチバースの設定もにぎやか楽しい。はちゃめちゃな世界観と、日常が激しく入れ替わって、日常視点からすると主人公がおかしくなってしまったとしか思えないカオスな状況が最高。
主人公に指示を出すアルファバースの人達はマトリックスを彷彿とさせる。
「ベーグル」が象徴するのは、「中心が空」ということか。自分の人生をより良くしようとみんながんばって苦しんでいるけど、実は世界には究極的には意味なんかない。あらゆる世界のあらゆる可能性世界を経験してしまった主人公の娘は、意味のない世界に絶望してしまったというところか。
仏教とか道教に通じそうな壮大な世界観で、そういう哲学的な奥深いことにつながりそうなところもマトリックスっぽい。
世界観がだんだん明らかになっていく過程の部分は面白いのだが、途中で「あ、結局これってセカイ系なんか」ということに気づいて、オチがなんとなくよめてしまった。
セカイ系…主人公を中心とした小さな関係性の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと。
まあ、単なるセカイ系というより、「セカイ系2.0」とでもよんだ方がよいのかもしれない。人間関係は「君とぼく」だけじゃなくて、夫、娘、父を中心に主人公の人生にからむ様々な人たちだし、救うのは「世界」だけじゃなくて、マルチバース(無数の平行世界の宇宙)なわけだから。
でも、主人公の人間関係の修復が世界の破滅の回避につながっていく、という構造はまんまセカイ系。そしてテーマは、「なんでもない日常」「特別じゃない自分」への感謝と肯定、というこれまた定番のもの。
ありきたりのテーマだとしても、ストーリーについてこれていたらそれなりに面白く観れたのかもしれないけど、結局「どうして世界の破滅が回避できたのか」というオチのロジックが僕にはよくわからなかった。
常識をぶっこわす、はちゃめちゃでカオスな世界観は大好きなので、この監督の次の作品には期待大。
共感ありがとうございます。
まぁ今作は・・「レジェバタ」と並ぶ今年の低評価なのです。でも分かる人はそれでいい、アカデミー賞受賞も一つの物差しでしかないので。
メガネの夫が「花様年華」のトニー・レオンになる(ヘアスタイルとか衣装とか)シーンだけで萌えました。映画の引用がとても好きです。引用がうまくいくと、複数の作品が時空を超えて広がって、作品同士がどこかで手を握りあって飛んでいるみたいな気持ちになります