「カオスに惹き込まれた先の人生哲学!」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
カオスに惹き込まれた先の人生哲学!
第95回アカデミー賞作品賞受賞作。
IMAXレーザーで鑑賞(字幕)。
ミシェル・ヨーの衰え知らずのカンフーに惚れ惚れとさせられ、久々のスクリーン復帰となったキー・ホイ・クァンのキレキレのカンフー・アクションに目を見張り…
こうして書いているとカンフー映画みたいだけど、決してそれだけじゃない。カンフーは重要な要素ですが、色々あり過ぎてジャンルを一言で言い表せない作品でした。
マルチバースのカオスに引き込まれる2時間20分、とにかくぶっとんでる。あっちに行ったりこっちに来たり、様々な平行世界を行き来する映像がとても独創的でした。
普通のおっさんが実は最強だった、と云う内容の映画が最近多いですが、本作もその流れを汲んでいました。平凡なおばさんに全ユニバースの命運が託されてしまう…
だけど主人公はあくまでも普通のおばさん。別バースの自分の特技をダウンロードすることで特殊能力を会得していくと云う設定が大変ユニークで面白かったです。
別バースの自分の人生を体験することで覚える後悔や人生への漠然とした不安…。あの時こうしていれば、この道を歩いていれば、全く別の人生が開けていたのではないか?
誰しもが一度や二度、夢想してしまう事柄だと思います。私も何か物事が上手くいかなかったりすると、自分の人生に対する不満や後悔が溢れ出すことがしばしばあります。
可能性は無限大とは言うけれど…。何が起こるかは未知数だし、小さな決断は1日の内に何十回、否、何百回は行っているわけですが、それが果たして正解かは分からないし…
それら全てを引っ括めて無に帰そうとする者に対し、主人公が掴んだ答えに救われた気がしました。後悔ばかりで嫌になることもあるけれど、優しく、親切であろう…
上手くいかないことだらけの人生だけど、ずっと一緒にいたいし、もし別の人生があったとしても、またあなたと出会いたい。家族愛に溢れた母と娘の抱擁に感動させられました。
こんなにぶっとんだストーリーなのに、心に響く人生哲学を伴った着地を遂げるのかと、広げた風呂敷を上手く畳んだ脚本の見事さはまさにアメイジング。異次元の驚きでした。
[余談]
様々な作品の引用がすこぶる楽しい!
特に「2001年宇宙の旅」のオマージュに爆笑しました。
※修正(2023/03/13)